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穏やかで控えめなスタンダード・スチール・サルーン

HJマリナー社のボディをまとう、シルバーのベントレーMkVIは、生産後期と多くの点で異なる事実が興味深い。初期の姿を理解する指標となり、試作車だったグリーンのシャシー番号3-B-50と並べれば、改良点も観察できる。

【画像】過小評価されてきた傑作 ベントレーMkVI サルーン 戦前と最新のモデルも 全147枚

ショールームへの展示を前提に、装備は極めて充実している。荷室には、荷物の汚れを防ぐためのダストカバー。クロームメッキが飾るボンネットの先端には、象徴的なマスコット、フライングBがあしらわれている。


ベントレーMkVI HJマリナー・4ドア・スポーツサルーン(1946年式/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ブラックのMkVIは、1947年式のスタンダード・スチール・サルーン。シャシー番号はB119BGで、華やかなシルバーのHJマリナー社製ボディと比べると、穏やかで控えめ。内装はベージュのレザーで、インテリアも落ち着いている。

フロントシートにはツインアームレストが備わり、背もたれはプリーツ加工がない、シンプルな処理。初期の標準仕様の特徴をしっかり残す。

ヘッドライトが埋め込まれた美しい処理

スタンダード・スチール・サルーンのボディは、10インチ(約254mm)長いシャシーを持つ、3-B-50の進化形。だが構造は異なり、木製フレームにアルミ製パネルを貼るのではなく、プレスド・スチール社によるプレス加工のスチール製となる。

タイリングは、ロールス・ロイス会長だったアーサー・シドグリーブス氏が、実物大のモックアップ・モデルを確認して承認。ヘッドライトがフロントフェンダーに埋め込まれた、現代的で美しい処理が大きな特徴といえる。


ベントレーMkVI スタンダード・スチール・サルーン(1946~1952年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

実は、プレスド・スチール社のプレス用金型を作るには、25万ポンドが必要だった。それでも、1台あたりの製造コストは、パークウォード社が製作する特注ボディの半額で収まった。プレス加工での量産化を実現するため、徹夜作業も続いたそうだが。

ドアを閉めると、生産による違いを実感できる。木製フレームを持つコーチビルド・ボディは、ズシンという重厚な音を発するのに対し、プレス成形されたB119BGでは、カシンと軽い金属的な音が鳴る。

運転席へ座れば血縁の深さを感じ取れる

走りの違いを知るなら、1939年のプロトタイプと、1947年のプレスボディとの比較が望ましいだろう。それでも運転席へ座ると、血縁の深さを真っ先に感じる。直列6気筒のB60エンジンは低域からトルクが太く、市街地でも高速道路でも、至って扱いやすい。

2台とも、トップギアに入れたまま、25km/h程度からの加速は滑らか。100km/h以上での巡航も余裕。この能力を引き出すべく、メカに詳しいオーナーは自らオーバードライブを組み込み、大陸横断へ一層適したMkVIへ改造することもあった。


ベントレーMkVI スタンダード・スチール・サルーン(1946~1952年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

乗降時には、シフトレバーがズボンの裾へ引っ掛かりそうになるが、運転中の変速は極めて快適。2速からトップの4速まで、ギアの回転数を調整するシンクロが備わり、慌ててレバーを倒さなければ問題なし。減速時は、軽くアクセルペダルをあおると良い。

だが、乗り心地と操縦性に違いは現れる。どちらもステアリングにパワーアシストはなく、速度の上昇とともに軽く転じ、負荷が高まると手応えが増す特性は、一致するが。

ホイールベースの差が生む走り味の違い

その理由は、ホイールベースの差。グリーンの3-B-50は約3300mmで、リムジンと呼ぶのに相応しい、威厳ある落ち着いた走り味にある。ブラックのB119BGは250mmほど短く、身のこなしが軽い。カーブでは、ドライバーを中心に旋回するよう。

モンテカルロ・ラリーへMkVIで参戦したマイク・クーパー氏は、「ステアリングやブレーキは秀抜。凍結路でクルマが滑っても、リアが流れるだけです。フロントが外へ逃げることは、決してありませんでした」と、後のレポートに記している。


ベントレーMkVI スタンダード・スチール・サルーン(1946~1952年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

相性の良い運転スタイルは、トラッドなもの。手前でしっかり減速し、変速も終えてカーブへ侵入。ボディを落ち着かせながら、アクセルペダルの操作でラインを整え、一気に加速するという手順が望ましい。相当なペースで、ワインディングを駆け回れる。

現代の交通にも、充分適応できる。だが、フロントにサーボ付きの油圧ドラムが採用されていても、ブレーキの弱さは念頭に置く必要がある。

違いのわかる人は強く共感できるMkVI

ベントレーの長い歴史において、マイルストーンとなったMkVI。合理的な理由から着想され、傑出の設計が施されているが、過小評価されてきた1台でもある。

戦前のモデルのような勇ましさはなく、1950年代後半のRタイプ・コンチネンタルに並ぶ主張もないからだろう。それでも、違いのわかる人は強く共感できるらしい。


ベントレーMkVI 1939年のプロトタイプから1947年の量産仕様まで    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)

ロールス・ロイスとベントレーの専門ディーラー、P&Aウッド社を率いるアンドリュー・ウッド氏は、所有するシルバー・ゴーストとMkVIに対し、2003年のインタビューでこう答えている。「同社が製造した中で、最高の2台といえましたね」

協力:スティーブン・カッツ氏、ベントレー・モーターズ社、H・ホースフィールド&サン社、ザ・リアル・カー社
執筆:アンドリュー・フィーバー(Andrew Feaver)

ベントレーMkVI スタンダード・スチール・サルーン(1946~1952年/英国仕様)のスペック

英国価格:2997ポンド(新車時)/4万ポンド(約860万円)以下(現在)
生産数:5201台
全長:4864mm
全幅:1753mm
全高:1638mm
最高速度:160km/h
0-97km/h加速:15.2秒
燃費:6.0km/L
CO2排出量:-g/km
車両重量:1793kg
パワートレイン:直列6気筒4257・4566ccc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:148ps/4000rpm-158ps/4000rpm
最大トルク:-kg-m
ギアボックス:4速マニュアル・4速オートマティック/後輪駆動


ベントレーMkVI スタンダード・スチール・サルーン(1946~1952年/英国仕様)    ジャック・ハリソン(Jack Harrison)