【休日クラシック・ポルシェ・アーカイブ #38】1984年ポルシェ911カレラ3.2 4×4パリ・ダカール/タイプ953(前編)「AWDでパリ・ダカール・ラリーに挑む」
ポルシェとラリー
ポルシェは創業以来ミッレ・ミリアやカレラ・パナメリカーナ・メヒコなどのロードレースを始め、ル・マン24時間などのサーキットでのレース、そして様々なラリーに挑み、数え切れぬほどの勝利を勝ち取ってきた。
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この中でラリーは全戦に参戦するのではなく、スポット的にエントリーし数多くの優勝を勝ち取ってきた。1982年からラリーは、より先鋭化したグループBマシンで競われることになる。ポルシェは水平対向6気筒エンジンをツインターボで武装し、全輪駆動(AWD)化した『959』で挑む予定だった。

パリ・ダカール・ラリーで砂漠を駆け抜けるポルシェ911カレラ3.2 4×4 パリ・ダカール(タイプ953)。 ポルシェ
ところが開発に予想以上の時間を要したため、つなぎに『911SC RS』を製作して1984年に投入する。しかしラリーはターボAWDマシンが主流の時代に突入しており、2WDでNAの911SC RSでは戦闘力の限界が見えていた。そのためラリーへのワークスとしての挑戦は一時休止されるのだった。
常に戦うことによりテクノロジーを磨くことを信条としていたポルシェが、新たに選んだのがラリーレイドだった。当時世界的に名をとどろかせていたラリーレイドを代表する存在のパリ・ダカール・ラリーを新たな目標に据えたのである。
同ラリーはパリからスペインまでは単に移動するだけだったが、アフリカに入ると砂漠の道なきルートを駆け抜ける、総走行距離が1万2000kmにも及ぶラフロードの長距離耐久レースといえた。この極限の耐久力を必要とする点が、ポルシェの挑戦魂に火を点けたのである。
各要素を融合させたコンセプトカーを発表
ポルシェは1981年のフランクフルト・ショーで、カブリオレ、ターボ、そしてAWDという各要素を融合させたコンセプトカーを発表していた。その名は『ポルシェ911ターボ3.3 4×4カブリオレ』だ。
ポルシェでル・マンを4度制したジャッキー・イクスが、その試作車がテスト走行する姿を目にし、あるアイデアを思いついたという。それはAWDシステムを搭載したラリー仕様の911で、パリ・ダカール・ラリーに挑むことだった。

ポルシェは1981年のフランクフルト・ショーで、カブリオレ、ターボ、そしてAWDという各要素を融合させたコンセプトカーのポルシェ911ターボ3.3 4×4カブリオレを発表する。このモデルがタイプ953を誕生させる原点となった。 ポルシェ
世界ラリー選手権とは別のジャンルとして開催される同ラリーは、1979年の開始以来年々その名声を高めていた。イクス自身も1983年に挑み、メルセデス・ベンツ280GEで優勝を飾っていた。
イクスのこのアイデアは、ポルシェにとって先駆的かつ成功をもたらすプロジェクトとなる可能性を秘めていた。開発責任者のヘルムート・ボットが承認を与え、イクスがタバコブランドのロスマンズを参戦のスポンサーとして獲得する。
こうしてAWD化や数々のラリー用装備を施したポルシェ911カレラ3.2が、3台製作される。正式な名称は『ポルシェ911カレラ3.2 4×4パリ・ダカール』だったが、社内形式では『タイプ953』と呼ばれた。
アフリカのガソリンに合わせて低圧縮化
パリ・ダカール・ラリーに向けて製作された953は、911カレラ3.2をベースに、エンジンは1万2000kmという長距離のラリーを考慮し、絶対的なパワーより耐久性を優先したチューニングが施された。アフリカで入手可能なガソリンの品質が低いため、圧縮比を10.3:1から9.0:1へ下げたことにより、最高出力は225hpに低下していた。
ドライブトレインは911ターボ3.3 4×4カブリオレで開発されたAWDシステムを受け継ぎ、市販車と同じ5速トランスミッションとリアディファレンシャルの前方にセンターデフを追加。強固な太いトルクチューブによりリア/センターデフとフロントデフが結合され、プロペラシャフトはFRモデルの944から流用された。

1983年9月に911SCをベースとしたプロトタイプを用いて、北アフリカのアルジェリア南部でテストが開始された。ドライブは911SCがサファリ参戦時にプロジェクトでチーフエンジニアを務めたローランド・クスマウルが担当した。 ポルシェ
センターディファレンシャルは、前後トルク配分を31:69とし、手動でロックが可能だった。
カスタマー・スポーツ部門によって施された変更点
カスタマー・スポーツ部門によって施された変更点としては、小型オイルクーラー(リアスポイラー下部に配置)の追加、シフトレバー位置の変更(コクピット内で後方へ移動)、焼結金属コーティングを施したレーシングクラッチ、そしてケブラー複合材製のトランスミッション・シャフトの採用などが挙げられる。
953のサスペンションは、砂漠の走行に備え、911カレラのマクファーソン・ストラットに代わり、953では左右それぞれに2本のビルシュタイン製ダンパーを配した新しいダブルウィッシュボーン式を採用。

本来は水平対向6気筒エンジンをツインターボで武装し、全輪駆動(AWD)化した『959』で挑む予定だった(写真は市販モデル)。 ポルシェ
リアには、セミトレーリングアームと片側1本のコイルオーバー・ショックアブソーバーを組み合わせた強化アクスルが採用され、最低地上高は270mmに引き上げられている。
ホイールは標準のフックス製15インチ径鍛造アルミホイールが採用され、リム幅はフロントが7インチ、リアが8インチとされた。タイヤは、ダンロップ製の専用オールテレインタイヤ(サイズ:205/70R15)が組まれた。
(当連載は、基本的に日曜日の午前9時11分に公開しています。後編は9月27日公開予定です)

