夏休みが終わり、いよいよ受験シーズンがスタート。学習塾の志學舎副塾長・松澤保成さんは「これまで生徒だけでなく保護者にも家庭学習について助言をしてきたが、子どもが勉強していないとき、つい親が言ってしまうNGワードがある」という--。

※本稿は、松澤保成『「自ら勉強する子」の親がしているたった1つのこと』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Tran Van Quyet
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tran Van Quyet

■親がつい言ってしまうフレーズ

「なんで勉強しないの?」

多くの親御さんが、一度は口にしたことのある言葉ではないでしょうか。

この言葉が出るときというのは、心配だからなんですよね。

「やる気がなくなっているのでは……」「遅れていないか……」という不安から、つい口をついて出てしまう。

ただ、この「なんで?」には、子どもにとって責められる響きがあります。

「理由を説明して」と原因を追及されているように感じてしまうのです。

一方で、「最近、勉強はかどってる?」と聞かれたとき、子どもの心は少しだけ「考えるモード」になります。

「うまくいってる?」「何かつまずいてる?」という、その問いの裏には信頼があるからです。

■高校1年の男子に母親が声がけすると…

ある高校1年生の男の子の話です。

春から塾に通いはじめたものの、部活との両立でなかなか学習が進みませんでした。

お母さんはあせっていました。

「なんでやらないの?」「もうテスト前だよ!」と口にするたび、その子は「わかってるって!」と部屋にこもってしまう日々。

ある面談のあと、私はお母さんにこうお願いしました。

「『なんで』を『どんな』や『何』に変えてみてください」

その夜、お母さんはその子にこう声かけをしました。

「最近、勉強は何やってるの?」
「どんな教科が進みやすい?」

その子は少し考えてから答えました。

「英語はけっこう続いてるけど、数学は止まってるかも」

お母さんは「そうなんだね。止まってる理由、思いあたる?」と聞くだけに留めました。

数日後、その子は自分から塾の先生に「数学の復習のスケジュールを立てたい」と相談に来ました。

親が「原因を追う質問」から「状況を知る質問」に変えるだけで、子どもは「話してもいい」と感じるようになります。

勉強が動き出すのは、叱られたときではなく、わかってもらえたときです。

■「なんで?」と「最近どう?」の違い

「なんで勉強しないの?」は、原因を追及する質問です。

「最近、勉強は何やってるの?」は、状態を共有する質問です。

ちょっとした違いのように見えて、意味はまったく違います。

私は、前者を「コントロールする質問」、後者を「サポートする質問」と呼んでいます。

コントロールする質問は、相手を動かそうとするため、抵抗が起きやすい。

サポートする質問は、相手の主導権を尊重するため、自発的な行動が生まれやすい。

■「追及」を「共有」にシフト

たとえば、こんなふうに言い換えてみましょう。

NG:なんで勉強しないの?
OK:最近、どの教科が進みやすい?

NG:テスト勉強やってるの?
OK:今日は何からはじめる予定?

NG:ちゃんとやったの?
OK:どこでつまずいたと思う?

どれも「追及」から「共有」に変えるだけです。

そのとき、子どものなかで疑心が解け、話す力が生まれます。

質問の目的は、理由を聞き出すことではなく、気持ちを引き出すことです。

「なんで?」の前に、「最近どう?」と関心を寄せるだけで、空気が変わります。

子どもが話したくなるのは、答えを求められたときではなく、「あなたの今を知りたい」と思われたときです。

写真=iStock.com/itakayuki
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■子どもは「勉強する意味」を知りたい

「どうして勉強しないの?」
「宿題、なんでやって行かないの?」

子どもができていないとき、大人はつい理由を問い詰めたくなります。

でも、じつは勉強しない理由を責めても、子どもが前に進むことはほとんどありません。

必要なのは、「やらない理由」を正すことではなく、「やる意味」を一緒に見つけることです。

■塾講師としての失敗談

これは、私自身の指導者としての失敗談です。

私は授業の冒頭でよく叱っていました。

「今日までの宿題、なんでやってこないんだ!」
「これじゃ成績上がらないぞ!」

生徒の成績を上げたい一心でした。

やらせなければ、伸びない。

そう思っていました。

でも、続けていくうちに、明らかに変なことが起きました。

宿題をやらない生徒が、増えていったのです。

空気は重くなり、質問は減り、学力も下がっていく。

写真=iStock.com/b-bee
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■生徒の学力が上がったきっかけ

「おかしいな……」と思いました。

成績を上げるために言っているはずなのに、結果は真逆だったのです。
そこで私は、叱るのをやめて、あることをしてみました。

それは、宿題を出すときに意味を伝えることでした。

たとえば、「この問題、定期テストによく出るから」という説明だけで終わらせない。「この連立方程式の考え方は、じつは自動販売機の仕組みに使われているんだよ。世の中の仕組みを、数学で読み解ける力になるんだ」

生徒の学年や理解度に合わせて、「今のあなたにとって、この勉強はどんな力につながるのか」を言葉にするようにしました。

すると、生徒の反応が変わりました。

「へえ、そうなんだ」
「それ、ちょっと面白いかも」

宿題をやらされるものではなく、意味のある挑戦として受け取りはじめたのです。

結果、生徒たちの成績は目に見えて上がっていきました。

写真=iStock.com/paylessimages
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■勉強と人生がつながると、やる気が出る

子どもが勉強しないとき、多くの場合、怠けているのではありません。

松澤保成『「自ら勉強する子」の親がしているたった1つのこと』(日本実業出版社)

「なぜやるのか」が、自分のなかでつながっていないだけです。

意味がわからないことを、人は続けられません。

一方で、「これをやると、こんな世界が見えるよ」「今はピンとこなくても、将来こんなふうに役に立つよ」というように、勉強と人生がつながると、子どもの目は前を向きます。

勉強しない理由を責める前に、こう問いかけてみてください。

「勉強の意味を、私はちゃんと伝えているだろうか」

子どもは意味を見出せると、「やらされる勉強」から「自分のための勉強」へと変わっていきます。

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松澤 保成(まつざわ・やすなり)
志學舎副塾長
東京都日野市生まれ。志學舎副塾長、志學舎グループ東進衛星予備校統括。また、学習指導と家庭支援の両面から親子の教育に携わる。指導歴は15年を超え、これまでに1000名以上の生徒を指導。開成、筑駒、早慶などの難関高校合格者を多数輩出。大学受験ではMARCH早慶国立以上1000件合格、東大現役合格20名以上。「親が変わることで、子どもが変わる」の信念のもとに、毎日100人の保護者や生徒に寄り添う。
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(志學舎副塾長 松澤 保成)