“糖尿病”も心不全の「原因」に?心臓を弱らせる“3つの全身疾患”【医師】

慢性心不全の原因は、心臓の病気だけにとどまりません。心臓の筋肉自体に異常が起きる「心筋症」のほか、糖尿病・腎臓病・貧血などの全身疾患が心臓の機能低下に関わる場合もあります。とくに心臓と腎臓は互いに影響し合う「心腎連関」の関係にあり、複数の病気を総合的に管理することが大切である理由について解説します。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)

群馬大学医学部卒業。その後、伊勢崎市民病院、群馬県立心臓血管センター、済生会横浜市東部病院で循環器内科医として経験を積む。現在は「Myクリニック本多内科医院」院長。日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医。

心不全(慢性心不全)の原因:心臓の構造的な問題と全身疾患

慢性心不全の原因は、心臓そのものの構造的な異常にとどまらず、全身の病気が心臓に影響を与えるケースも知られています。このセクションでは、心筋症や全身疾患との関係について解説します。

心筋症(拡張型・肥大型)

「心筋症(しんきんしょう)」は、心臓の筋肉自体に異常が生じる病気の総称です。慢性心不全の原因となる心筋症として、とくに「拡張型心筋症(かくちょうがたしんきんしょう)」と「肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)」がよく知られています。

拡張型心筋症では、心臓の筋肉が薄く広がり、心臓全体が大きく膨らんだ状態になります。心臓の壁が薄くなることで収縮力が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなります。原因はさまざまで、ウイルス感染後や、アルコールの過剰摂取、自己免疫疾患(じこめんえきしっかん)などが関与することがあるとされています。遺伝的な要因が背景にあるケースも報告されています。

肥大型心筋症では、心臓の筋肉が異常に厚くなり、心臓の内腔(ないくう)が狭くなります。心臓が収縮することはできても、拡張して血液を十分に取り込む能力が低下するため、結果として全身への血流が不足します。肥大型心筋症は遺伝的な要因が関与することが多く、若い方にも発症することがあります。

いずれの心筋症も、進行すると慢性心不全の状態へと移行します。早期発見のためには、定期的な心臓超音波検査(心エコー検査)が有効とされています。

糖尿病・腎臓病・貧血との関連

慢性心不全は、心臓以外の全身疾患とも深く関わっています。なかでも糖尿病は、慢性心不全のリスクを高める重要な要因のひとつです。糖尿病では、血糖値の高い状態が続くことで血管や神経が傷つき、心臓に供給される血管(冠動脈)にも動脈硬化が起こりやすくなります。また、糖尿病による心筋への直接的なダメージ(糖尿病性心筋症:とうにょうびょうせいしんきんしょう)も、慢性心不全の原因として知られています。

腎臓病と慢性心不全は、互いに悪影響を与え合う関係にあります。心臓のポンプ機能が低下すると腎臓への血流が減り、腎臓の機能が低下します。一方、腎臓の機能が低下すると、体内に余分な水分やナトリウムが蓄積しやすくなり、心臓への負担が増します。このような相互作用は「心腎連関(しんじんれんかん)」と呼ばれ、治療においても両方の臓器を考慮することが重要です。

貧血(ひんけつ)も慢性心不全を悪化させる要因となります。貧血では、血液中の赤血球やヘモグロビンが減少し、身体への酸素供給が不足します。心臓はその不足を補おうと、より多くの血液を送り出そうとするため、心臓への負担が増加します。慢性心不全の方に貧血が合併している場合は、貧血の治療も並行して行うことが推奨されます。

このように、慢性心不全の原因や悪化因子は複数にわたることが多く、基礎疾患の総合的な管理が病気の進行を緩やかにするうえで大切です。

まとめ

慢性心不全は完全に治癒させることが難しい病気ですが、適切な薬物治療と日常管理を継続することで、症状を安定させ、生活の質(QOL)を保ちながら生活することが期待できます。一人ひとりの状態に合った治療計画を医師と相談しながら進めていくことが、長期的な管理のうえで大切です。

慢性心不全の症状や治療について気になることがあれば、まずはかかりつけの内科や循環器内科に相談することをおすすめします。早期からの適切な対応が、日々の生活を守るうえで大きな力となります。ご自身の身体の変化に敏感になり、専門の医療機関で相談することを検討してみてください。

参考文献

国立循環器病研究センター「心不全」

日本心臓財団「心不全とは」