「小規模宅地等の減額特例」の適用で相続税が最大80%減額!…「対象親族」の条件とは?【『居住に使用した宅地等』について税理士が解説】
土地の評価額を最大80%減額し、相続税の負担を減らすことができる「小規模宅地等の減額特例」制度(以下「減額特例」:租税特別措置法69条の4)。しかし、相続税を大幅に削減できる「減額特例」の適用要件は非常に複雑かつ難解です。そのなかでも、本記事は対象宅地の一つである「居住に使用した宅地等」について、その概要と適応条件を詳しく解説します。
〈登場人物〉
吉田課長:A社で働く課長。3人きょうだい(吉田さん、弟、妹)の長男で、2人の子を持つ。税理士とは業務上のやり取りがある。
減額特例の適用対象…「居住に使用した宅地等」とは?
吉田課長「どのような宅地が対象ですか?」
小規模宅地等の減額特例の「減額特例」の対象宅地には、次の4つのタイプがあります。今回は、特定居住用宅地等(以下「居住に使用した宅地等」)を取り上げます。
① 居住に使用した宅地等
② 特定事業用宅地等(個人事業に使用した宅地等)
③ 特定同族会社事業用宅地等(個人が経営する特定同族会社の事業に使用した宅地等)
④ 貸付事業用宅地等(不動産貸付事業に使用した宅地等)
吉田課長「『居住に使用した宅地等』は、どれくらい減額されますか?」
330㎡まで80% 減額されます(2割評価)。
吉田課長「『居住に使用した宅地等』とは、具体的にどんな宅地ですか?」
相続開始の直前まで、被相続人等が居住用に使用していた宅地等(土地、借地権など)のことを指します。
該当する宅地等と家屋が2以上ある場合、そのうち主として居住用に使用されていた家屋の宅地等が対象となります。
したがって、原則としては「住民票がある場所」ということになります。しかし、他に主たる生活する場所(家屋、宅地等)がある場合、その場所が対象となります。この判断は、「生活実態」に基づき判断されます。
吉田課長「被相続が入所先の老人ホームで死亡した場合はどうなりますか?」
「減額特例」は、生活基盤を維持するために必要不可欠な宅地等を対象とした税制優遇措置です。
したがって、原則としては、死亡する直前まで被相続人が自宅に住んでいることが条件となります。しかし、入居していた有料老人ホームや特別養護老人ホーム等で死亡した場合には、入居直前に住んでいた自宅の敷地は「居住に使用した宅地等」と判断され、特例が適用されます。
吉田課長「被相続人等とは、誰のことですか?」
次の①、②の親族のことです。
① 被相続人
② 被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族
したがって、生計を一にしていた親族が被相続人と同居している場合、その宅地等は減額特例の対象になります。
減額特例が適用される相続人①…『同居親族』の条件
吉田課長「『居住に使用した宅地等』について、減額特例が受けられる人は?」
次の親族です。
① 被相続人の配偶者
② 被相続人の配偶者以外の親族
①について、たとえば、妻である配偶者は、夫(被相続人)との同居の有無に関わらず、無条件で減額特例が受けられます。
吉田課長「②の『被相続人の配偶者以外の親族』とは、子どものことを指しますか?」
実務ではほとんどが子どもになると思います。子どもがいない場合、例えば被相続人の兄弟姉妹も該当親族と判断されます。
そして、被相続人の相続人である親族のうち、次の①~③のいずれかに該当することが必要です。
① 同居親族
② 自宅を所有したことがない親族
③ 被相続人と生計を一にする親族
吉田課長「①の『同居親族』とは?」
大きく3つの適用要件を満たす親族をいいます。まず、2つ示します。
(1) 相続開始直前において、被相続人が住んでいた一棟の建物に居住していた親族であること。
(2) 相続開始時から申告期限まで宅地等を相続または遺贈で取得した親族に、次の①、②の事実があること。
① その建物に居住していること
② その宅地等を所有していること
吉田課長「(1)について、マンションに居住していた場合はどうなりますか?」
マンションには、2つのタイプがあります。1つは分譲マンション(以下「分譲マンション(区分所有建物)」)。もう1つは、たとえば被相続人が単独で所有するマンションです。これには、マンションでない一軒家である建物も含まれます(2つを合わせて、以下「単独所有マンション・一軒家(区分所有建物以外の建物)」)。
これら2つのタイプのマンションと、「一棟の建物に居住していた親族」との関係については、それぞれ次の(1)、(2)のように取り扱います。
(1) 分譲マンション(区分所有建物)
被相続人と同じ部屋に住んでいること。
(2) 単独所有マンション・一軒家(区分所有建物以外の建物)
被相続人が住んでいた同じマンション、一軒家のなかの部屋に住んでいること。
吉田課長「被相続人のマンション等への住み方によって、減額特例の対象となる宅地等の範囲が違うのですか?」
そのとおりです。減額特例の対象となるのは、被相続人およびその親族が居住していた部屋に対応する宅地等に限ります。
つまり、分譲マンション(区分所有建物)の場合、被相続人と親族が一緒に住んでいた部屋のみが、減額特例の対象になります。
これに対し、単独所有マンション・一軒家(区分所有建物以外の建物)の場合は、被相続人が住んでいた部屋のほか、親族が住んでいた別の部屋に対応する宅地等も減額特例の対象となります。
減額特例が適用される相続人②…『自宅を所有したことがない親族』の条件
吉田課長「②の『自宅を所有したことがない親族』とは?」
次の(1)~(4)の要件のすべてを満たす親族をいいます。
(1) 親族等所有家屋での非居住要件
相続開始前3年以内に、相続人やその配偶者などの親族が所有する日本国内の家屋に住んだことがない親族であること。ただし、相続開始の直前に、被相続人が住んでいた家屋を除くこと。
(2) 家屋過去不所持要件
相続開始前に、自身が居住している家屋を一度も所有したことがないこと。
(3) 宅地等所有要件
相続開始時から申告期限まで、その宅地等を所有していること。
(4) 日本国籍所有者要件
日本国籍を有すること。
この(1)と(2)の要件にちなんで、「家なき子」とも言われています。
吉田課長「減額特例の適用を受けるために、父(被相続人)の自宅を『家なき子』が相続すると、母と同居することになりますね」
この点については、5番目の適用要件が設けられています。それが(5)「配偶者不存在、他の相続人の非居住要件」です。具体的には、次の①、②の親族がいない、という要件です。
① 被相続人の配偶者。
② 相続開始直前に、被相続人が住んでいた家屋に住んでいた相続人。ただし、相続人は相続を放棄しなかったと仮定。
吉田課長「『自宅を所有したことがない親族』が該当する想定事例は?」
被相続人が自宅で1人暮らしをしていて死亡し、相続人である子どもは自宅を所有したことがない、というケースが該当します。
なお、このケースには、「相続税の申告期限までに居住の用に使っている」という要件は設けられていません。
減額特例が適用される相続人③…『被相続人と生計を一にする親族』の条件
吉田課長「③の『被相続人と生計を一にする親族』とは?」
次の(1)~(3)の要件のすべてを満たす親族をいいます。
(1) 生計一要件
被相続人と生計を一にしていること。
(2) 宅地等所有要件
相続開始時から申告期限まで、引き続きその宅地等を有していること。
(3) 相続開始後の居住要件
相続開始前から申告期限まで、引き続きその宅地等を居住用として使用していること。
吉田課長「居住の用に使っていた宅地等を共有で取得した場合はどうですか?」
相続または遺贈により取得した持ち分の割合に応ずる部分が、居住に使用した宅地等になります。
多田 雄司
税理士

