「地下設備」がマンションの弱点に、トイレ用水にバケツ10杯運ぶ毎日…復旧に2000万円かかることも
[都市型水害 検証 千葉豪雨]<中>
「水道と電気が使える生活が当たり前でないことがよくわかった」
千葉市美浜区の8階建てマンションに住む女性(75)は千葉豪雨の後、洗濯物を入れた重さ約10キロのバッグを抱えてコインランドリー通いを続けている。
マンション地下の給水ポンプが浸水で故障し、断水が続いているためだ。トイレ用水は、唯一使える1階共用部の水道から毎日バケツ10杯分をくんでいる。入浴は近くの銭湯頼みだ。
自宅マンションでは地下の分電盤も被災し、停電を余儀なくされた。仮設機器で2週間後に解消されたが、水道は復旧の見通しが立っていない。マンション管理会社によると、修理業者が不足し、部品取り寄せにも時間がかかっているという。
女性は「熊本地震の被災者の方が大変だから」と気丈に振る舞いながらも、「一日も早く復旧してほしい。元の生活に戻りたい」と疲れた表情で語る。
マンション43棟被害
千葉豪雨による千葉県内の住宅被害は、浸水による半壊や床上・床下浸水など7042棟(11日現在)。地下に電気設備や給水ポンプがあったマンションやアパートでは停電や断水が発生し、読売新聞の調べでは一時43棟に上った。このうち千葉市などの13棟では、現在も電気や水道など一部の設備が復旧していない。
地下設備が故障した千葉市内のマンションを管理する会社2社によると、復旧費用は、数百万から2000万円くらいかかる見通しだ。住民が積み立ててきた修繕費などでカバーできる見通しだが、将来に備えた資金が目減りしてしまう。
公的支援の対象外
災害救助法に基づき、自治体は被災者の住宅の最低限の修繕費用を負担しているが、今回のようなケースは支援対象から漏れる。「建物全体に占める被害の割合が10%以上」という要件があるためだ。地下設備は建物全体から見れば10%未満という計算になる。同市中央区のマンションで停電被害に遭った住人の女性(72)は「マンションの復旧にも行政の援助が必要だ」と訴える。
電気設備を2階に
マンションの地下設備が浸水したケースは過去にもある。2019年10月の台風19号では、川崎市中原区の武蔵小杉駅周辺のタワーマンション1棟が被災し、停電や断水が1週間以上続いた。
この被害を受け、不動産大手「東京建物」(東京都)は同年、着工直前だった東京都多摩市にある多摩川沿いのタワーマンションで、電気設備の設置場所を地下から2階に変更した。完成は半年遅れたが、「河川氾濫や顧客の不安の強さを考慮し、『最上級』の対策を取った」という。
国土交通省は川崎市での被害を受け、20年6月に「電気設備の上階への設置」などを盛り込んだ浸水対策の指針を策定したものの浸透していない。東京建物によると、居室や共用部のスペース確保、建設コスト縮減のため地下に電気設備などを設置することは業界では今も一般的だという。
東京大の清家剛教授(建築構法学)は「電気設備などを2階以上に設置するのが最も安全で、既存施設では止水板や防水扉の設置で対応するしかない。管理組合で水害に対応した保険の加入を検討することも必要だ」と話している。
