「ある日突然、車の運転ができなくなる」仮放免の外国人13人が提訴 行政が“事実上の免許剥奪”できる「法的根拠」ないと主張
在留資格がないことを理由に運転免許証の更新を拒まれたのは違法だとして、埼玉県内に住む外国籍の男女13人が11日、埼玉県を被告とし、同県に対し、更新に必要な適性検査と講習の実施などを求める訴訟をさいたま地裁に提起した。
2025年10月1日に施行された改正道路交通法施行規則により、外国人が免許を更新する際に在留カード等の提示が義務付けられた。これにより、在留資格を持たない人々は事実上、免許更新の道が閉ざされた。
原告代理人らは提訴後の記者会見で、この改正規則が、道路交通法が同規則に委任した範囲を逸脱しており、同法に違反し無効であると主張。「ある日突然、車の運転ができなくなる。子どもの学校の送り迎えもできない、あるいは病院にも行けない。そうした深刻な訴えを聞いている」と、当事者が直面する窮状を訴えた。
在留カード提示義務化で免許更新が不可能に訴状によると、原告らは国から退去強制令書を発付された後、一時的に施設外での生活が許可される「仮放免」の状態にある。
道路交通法施行規則が2025年9月11日付で改正され、同年10月1日に施行されたことにより、外国人が運転免許を更新する際には、在留カードなどの提示が求められるようになった。取得時は、国籍にかかわらず住民票の写しの添付が原則となっている。
それまでは在留資格の有無にかかわらず、有効な運転免許証を提示すれば更新手続きが可能であった。
しかし、改正後の規則の下では、更新時に「在留カード等」の提示を求められる。「在留カード等」には特別永住者証明書や特定事項が記載された住民票の写しなどが含まれる。いずれも、中長期の在留資格が与えられている者や、日米地位協定上の米軍構成員などに限って所持しうる書類である。
仮放免中の原告らは在留カードを持っておらず、規則が定める代替書類も用意できない。
このため、原告13人のうち9人は、改正規則の施行後に埼玉県警の運転免許センターで更新を申請したものの、在留カードがないことを理由に申請の受け付けが行われず、適性検査や講習を受けられなかった。残る4人は、これから更新期間を迎える。
今回の訴訟で原告側が中心的な争点として掲げるのは、在留カード等の提示を義務付けた道路交通法施行規則の規定が、上位法である道路交通法による「委任」の範囲を逸脱しており無効だという主張である。
すなわち、憲法41条は国会を「国の唯一の立法機関」と定めており、国民の権利を制限するルールは、国会で審議・議決を経て制定される法律によらなければならないのが原則である(国会中心立法の原則、侵害留保原則)。なお、ここでいう「国民」には基本的に日本国籍をもたない外国人も含まれる(最高裁昭和53年(1978年)10月4日判決等参照)。
しかし、全てを法律で定めることは現実的でない面もあるため、国会が法律で行政機関に委任することにより、行政機関が国民の権利を制限するルール(委任命令)を定めることも認められる。
ただし、その場合、行政機関の恣意を排除するため、法律による委任は個別的・具体的なものでなければならず、かつ、行政機関は法律により委任された範囲を超えて委任命令を定めることは許されない。
今回の規則改正の根拠とされる道路交通法第101条8項は、「免許証等の更新の申請及び適性検査について必要な事項は、内閣府令で定める」と規定している。
原告代理人の河西拓哉弁護士は、この条文はあくまで免許更新の申請手続きや適性検査の具体的な内容・方法について委任したに過ぎないと指摘。在留資格の有無によって実質的に免許更新を禁止するような重大な効果を持つルールを定めることまで委任したとは到底読み取れないと主張する。
河西弁護士:「道路交通法全体を見ても、『在留資格』を基準として免許証の交付を決定するような規定は一切ない。在留カードなどの提示を求める規則の規定は、法律の委任の範囲を逸脱して無効だと考えている」
また、訴状では、道路交通法の目的が「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図」ること(同法1条)にあると指摘し、運転免許の更新申請者の在留資格と、この法の趣旨・目的とは何の関係もないと論じている。
日常生活への影響免許を更新できなくなったことで、当事者の生活には深刻な影響が出ている。
弁護団には「障害のあるお子さんの送り迎えに車が不可欠だが、それが難しくなった。特に雨の日は学校を休ませるしかない」といった切実な声が寄せられているという。車の運転ができないことで医療機関への通院等に支障をきたすケースもある。
原告代理人の児玉晃一弁護士は、この状況が別の問題を生む可能性を懸念する。
児玉弁護士:「日常生活に車が必要な人たちが、免許の更新ができないことによって車を運転できなくなり、無免許運転を誘発してしまうことにもなりかねない。
生計を営む上で、どうしても車が必要となれば、免許がなくても運転しなくてはならなくなるという状況へ、(規則が当事者らを)追い詰めていっている」
また、原告代理人の高橋ひろみ弁護士は、日本で自動車学校に通って免許を取得し、長年安全運転を続けてきた「ゴールド免許」の当事者でさえ更新できなくなる状況に陥ると指摘した。
代理人弁護士ら「排外政策の一環」「行政官の気まぐれ」と批判児玉弁護士は、「昨年あたりから始まっている排外政策の一環だろうと考えている」と述べ、2009年の入管法改正時の経緯に言及した。
2012年7月に在留カード制度が導入される以前は、外国人登録法に基づき、在留資格のないオーバーステイ状態の人でも市区町村で外国人登録を行う義務があり、「外国人登録証明書」を取得できた。この証明書が身分証明書として機能していた。
この外国人登録制度を廃止し、在留カード制度に一本化する2009年の法改正の時、国会の審議では「行政サービスは低下させない」という点が政府側から繰り返し明言されていた。
しかし、今回の規則改正は、在留カードを持たない人々に免許更新の道を事実上閉ざすものとなっている。児玉弁護士は「行政サービスが明らかに低下している。当時の約束を完全に無視するものだ」と厳しく批判した。
原告代理人の神原元弁護士は、国会での十分な議論を経ずに、省令という形で実質的な権利制限が行われた点を強く批判した。
神原弁護士:「排外主義という社会の風潮に乗っかった行政官たちの気まぐれによって、多くの人々の生活が破壊されている

