宝塚「永遠の男役」と聞いて思い浮かぶのは…2位・大地真央にダブルスコアをつけた、もともとは女優志望の「ゆりちゃん」とは誰か
今年で創立112周年を迎えた宝塚歌劇団。その長い歴史の中で、観客の憧れを一身に集めてきたのが男役トップスターだ。現実の男性をそのまま模倣するのではなく、立ち居振る舞いや声、視線まで磨き上げ、少女漫画に登場する“王子さま”のような、宝塚ならではの理想の男性像を舞台上に具現化してきた。
男役も女性が演じるという世界でも類を見ない劇団だけに、退団後もどこかに男役の面影を残しながら、俳優やタレントとして新たな境地を切り開くスターは多い。そこで今回、全国の25歳以上の女性300人を対象に、「“永遠の男役”だと思う元宝塚トップスター」をアンケート。1980年代以降にトップを務めたOG49人の中から選んでもらい、ランキングを作成した。ベスト10に入ったスターたちの魅力を、長年、宝塚の取材を担当してきた芸能記者・蒔田稔氏の解説とともに振り返る。

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10位は3人が並ぶ
まず、2票を獲得して10位に並んだのは、杜けあき(67)、紫吹淳(57)、真風涼帆(40)の3人。
杜は'79年に第65期生として入団し、'88年に雪組トップスターに就任した。
「“男役10年”といわれるほど、男役を極めるには時間がかかります。杜さんはまさに入団10年目でトップになったスターでした」(蒔田氏、以下同)
紫吹は'86年、第72期生として入団。'01年に月組トップスターに就任した。
「ダンサーとして高く評価され、悪役やキザな男など、ひと癖ある役を得意としていました。退団後はバラエティー番組にも進出し、在団中から身の回りの世話をしてきたという“ばあや”とのやりとりが記憶に残っている人も多いでしょう」
真風涼帆は'06年に第92期生として入団。星組で経験を積み、'15年に宙組へ組替え、'17年に宙組トップスターに就任した。
「175センチの長身とスケールの大きな男役像で人気を集め、約5年7カ月にわたってトップを務めました。'23年の退団後は、舞台やコンサートを中心に活動しています」
7位も3人が同票
そして、7位も一路真輝(61)、轟悠(62)、柚香光の3人が3票で並んだ。
一路は'82年に第68期生で入団し、'93年に雪組トップスターに。
「代表作としては、『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラ、『ベルサイユのばら』のオスカル、そして日本初演となった『エリザベート』のトート。なかでもトート役は、退団公演を飾った象徴的な役でした」
第71期生で'85年に入団した轟。'97年には雪組トップスターに就任したが、'02年に特定の組に属さず、各組の公演に出演するスペシャリスト集団「専科」に異動。春日野八千代、鳳蘭、榛名由梨ら、限られた大スターにしか見られない極めて異例の人事だった。
「舞台に出演する傍ら、劇団の理事にも就任。各組の公演ではトップスターに並ぶほど重要な役を担い、ファンからは“トップ・オブ・トップ”とも呼ばれていました。'21年に退団してからは芸能活動から完全引退し、美術家として藏人(クロード)の名前で活動しています」
7位に並んだ中で、いちばんの若手が'09年入団の第95期生、柚香。花組一筋で研鑽を積み、'19年に花組トップに就任した。
「12年ぶりとなる花組生え抜きのトップスター。研11(入団11年目)での就任からも、劇団の期待の大きさがうかがえました」
麻実と「剣心」涼風
4票で6位にランクインしたのは、麻実れい(76)。
'70年に第56期生で入団した麻実。入団6年目で『ベルばら』のアンドレ役に抜擢され、長身のスターとして注目を集めた。その後、'78年に『風と共に去りぬ-スカーレット編-』で演じたレッド・バトラーでその人気を揺るぎないものに。'80年には雪組トップスターに就任、星組から異動してきた娘役・遥くららとのトップコンビは、2人の美貌と華やかさで“ゴールデンコンビ”と称された。
「'85年に退団してからは舞台を中心に活動し、'14年に宝塚歌劇団が創立100周年を記念して作った『宝塚歌劇の殿堂』に“最初の100人のうちの1人”として殿堂入りしています」
折り返しの5位に、5票でランクインしたのは、涼風真世(65)。
'81年、第67期生として入団し、'90年に月組トップスターに。
「男役の中でも、中性的な魅力を持ったジェンヌで、彼女の当たり役といえば、ほとんどの人が『ベルばら』のオスカルを上げるのではないでしょうか。ご本人は妖精めいた風貌を逆手に取って、“むかし妖精、いま妖怪”と自虐的に自己紹介をしています(笑)」
退団後は俳優だけでなく声優としても活動。なかでも広く知られているのが、アニメ『るろうに剣心』の主人公・緋村剣心役だ。アンケートでは、
「『るろうに剣心』の剣心役の声で知って好きになった」(石川県・50歳)
声優としての出演作は決して多くないが、剣心役をきっかけに涼風を知った層も少なくないようだ。
真琴の“暗黒時代”
4位は9票を集めた真琴つばさ(61)。アンケートには、
「舞台で見ていた時と、少しも変わっていないところがいい」(神奈川県・84歳)
「男も女もホレるカッコよさ」(岐阜県・63歳)
といった声が届いた。
'85年に第71期生として入団した真琴。同期には愛華みれ、1期下には香寿たつきや紫吹など、人気・実力ともにあるスターがいた。
「日の目を見ない日々が続いていた、と本人もインタビューで語っています。男役の憧れともいえる燕尾服を着て群舞で踊るシーンでは、後輩が選ばれているのに自分は選ばれず、舞台袖でそのシーンを見た時は、涙が出るほど落ち込んだそうです」
当時のことを“暗黒時代”と語っているそう。
「その後も重要な役に起用されながら、男役ではなく女性役を演じることもあり、本人にとっては模索の時期が続きましたが、'97年に月組トップスターに就任します。'99年には娘役トップスターの風花舞の退団に伴い、新たな相手役に檀れいを迎え、TAKARAZUKA1000days劇場と、新・東京宝塚劇場のこけら落としの公演も務めました。'01年に退団してからは、舞台はもちろん、多くのドラマやバラエティーにも出演していますので、ジェンヌOGの中でも知名度は高いと思います」
“革命児”真矢みき
トップスリーの一角、17票で3位にランクインしたのは、
「いつまでも綺麗な顔立ちだから」(東京都・58歳)
「大階段でのボレロと坂本龍馬の役や、ダンスの上手さなどは永遠の男役だと思います」(三重県・35歳)
といった声に推された真矢みき(現・真矢ミキ、62)だ。大階段とは、宝塚大劇場と東京宝塚劇場の舞台奥に設置される、26段の大きな階段。主にレビューのフィナーレで使用され、エトワールの歌唱に続いて出演者が順番に階段を下り、最後にトップスターが登場するもの。
「'81年に第67期生として入団した真矢ですが、初舞台の時からその容姿も含めてファンの注目を集め、劇団からも期待を寄せられていました。'92年から'95年にかけては、2番手ながらもトップの安寿ミラと並ぶ立ち位置で、男役同士のコンビとして人気はうなぎ上り。安寿が'95年に退団すると、純名里沙を相手役にトップ就任。在団当時は、他のスターが短髪でリーゼントといった髪型の中、1人だけ長髪にしたり、舞台化粧も“いかにも宝塚”なものとは違い、ナチュラルメークにしたりと、賛否を巻き起こしながらも“ヅカの革命児”なんて呼ばれました(笑)」
タカラジェンヌは舞台化粧も自ら施すため、メイクにはスターそれぞれの美意識や男役像が表れる。真矢の場合、そのセンスが抜群だったようだ。
「'98年の退団後は芸能界へ進みましたが、思うように仕事が広がらず、所属事務所から“戦力外通告”を受けます。移籍後、'03年公開の映画『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』のオーディションで沖田仁美役をつかみ、再び脚光を浴びました」
変わらぬ大地の美貌
そして2位には、53票を集めた大地真央(70)がランクイン。
「70歳とは思えない美貌と若さで、永遠の憧れ。演じている時の迫力もすごい」(東京都・49歳)
「今でも“キリッ”としていてカッコいいと思います」(京都府・62歳)
舞台はもちろん、ドラマ、CMなどでも活躍中の大地。アンケートではCMの“そこに愛はあるんか”の言葉に惚れたなどのコメントも。
'73年、第59期生として入団し、若手男役スターとして注目をされていた大地。その2年後、1年半という期間限定で、サンミュージックのマネジメント協力でアイドルとしてレコードをリリース。テレビやCMにも出演したが、大きなセールスには結び付かず、アイドルとしての活動は約1年半で終了した。
「'82年には『あしびきの山の雫に』で相手役に入団1年目の黒木瞳が抜擢されコンビに。同年、そろって月組トップコンビに就任しました。その3年後、退団してミュージカルを中心に女優の道を歩き出しますが、女優としての当たり役としては『風と共に去りぬ』のスカーレット役、そして何より『マイ・フェア・レディ』のイライザ役でしょう」
大地に憧れて宝塚を目指した人も多く、3位にランクインした真矢も大ファン。
「“宝塚で自分が歌った歌は思い出せないけど、大地さんの歌はトップでない頃から全部知っている”と、豪語するくらい(笑)。それくらい影響力のあるジェンヌOGですね」
圧倒的1位は…
2位とほぼダブルスコアの104票でダントツ1位に輝いたのは、天海祐希(59)だ。
「今でも宝塚出身の中でいちばん活躍していると思うし、存在感もある」(東京都・61歳)
「江戸っ子気質でさっぱりしているところが、元男役ぽくていい」(茨城県・53歳)
「史上最速でスターになったゆりちゃんは1人でも輝けるスター。それが本当のスターだって」(神奈川県・51歳)
このような声に支えられていた天海は、'87年に第73期生として入団した。東京の台東区・上野出身。本名が「祐里」であることから、ファンからは「ゆりちゃん」の愛称で呼ばれた。
「長身で舞台に立てば、どこにいてもすぐに目を引く。生まれながらに持っている“タレント”ですね。トップスターには、理由がわからないけれど、どうしても目が離せない魅力を出す人がいます。音楽学校受験時には、試験官の先生が“お母さん、よくぞ産んでくださった”と言ったというエピソードは有名」
天性の華と実力を兼ね備えていた天海だが、極めて珍しかったのは、幼少期から「女優志望」であったこと。
「その過程として宝塚を受験し、受かってトップにまでなったのは、劇団史上でもほぼいません。宝塚の舞台に立つことが夢、と受験するのがほとんどですが、彼女の場合は“夢の途中”だったレアケースでしょう」
'93年、初舞台からわずか6年半という、当時史上最速のスピードで月組トップスターに就任。だが、その2年後にあっさりと退団、念願だった俳優の道へ。
「以降、宝塚時代を前面に押し出すことなく、数々のドラマや映画で主演を務めてきました。それでも今回、“永遠の男役”として圧倒的な支持を集めた。それだけ、天海さんの男役像が多くの人の記憶に焼き付いているということでしょう」
天海は「女優になりたい」という願いを叶え、今も第一線で活躍できている。
「過去を振り返るより、常に次の作品に向かってきたということなのかもしれません。それでも“永遠の男役”でトップになれるのだから、それだけ魅力があるということでしょうね」
宝塚を退団して30年以上。それでも天海の中に刻まれた男役の美学は、第一線で活躍する現在の姿にも、確かに息づいているようだ。
デイリー新潮編集部
