そして、これは台風だけの話ではありません。「この病気になる確率は7割です」「この学校に受かる確率は2割です」「この会社を辞めたら5年後の年収が下がる確率が6割です」。そんな数字が、決める前に目の前に並ぶようになったとき、皆さんはどう振る舞うでしょうか。たぶん、たいていは数字に従います。従ったほうが安全だし、誰にも責められないからです。

 AIは、僕たちの安全性を高めてくれます。その代わりに、「間違える権利」を少しずつ取り上げていきます。台風で家をやられた人が「3日前に数字が出ていたのに、なぜ対処しなかったのか」と問われるように、絶対に当たる予測は、被害を不運ではなく落ち度に変えてしまいます。

 この連載で追いかけたいのは、「AIがすごい」という話ではありません。AIが僕たちの社会の“当たり前”をどう書き換えていくのか、です。「被害に遭った人を責めない」という当たり前が静かに終わろうとしているように。

<文/福原たまねぎ 写真/Adobe Stock>

-[アメリカ発・AIが先に見せる未来レポート~未来はすでにβ(ベータ)版]-

【福原たまねぎ】
シアトル在住。外資系IT米国本社のシニアPM。ワシントン大学MBAメンター(キャリア・アドバイザー)。大学卒業後にベンチャー企業を経て2016年に外資系IT企業の日本支社に入社。2022年にアメリカ本社に転籍し現職。noteでは仕事術やキャリア論など記事を多数発表。初著書『世界の一流が休むためにやっていること』(朝日新聞出版)が発売中。X:@fukutamanegi