AIが天気を「絶対に外さない」時代へ…予測に従わない人は“愚か者”に?「間違える権利」が奪われる未来
はじめまして、福原たまねぎと申します。普段は米国シアトルのテック企業で働いていますが、個人ではAIや働き方に関する発信をして、本を書いたりしています。この連載では、僕がアメリカで触れた「AIが世の中をどう変えるのか」という未来予測をお伝えしていきます。
◆AI気象予報の進化で、’30年代の天気予報は“絶対外れない情報”になる
1日というのは、地味に聞こえてかなり大きい数字です。昨年ジャマイカを襲ったハリケーン・メリッサでは、このAIが5日前の時点で、最強のカテゴリー5のまま上陸する確率を8割と示しました。3日前にはその確率がほぼ100%まで上がり、アメリカの国立ハリケーンセンターは史上初めて、まだ勢力の弱い段階の嵐がカテゴリー5に達すると予報したのです。天気予報の世界では、この1日の差は、過去およそ10年分の進歩に相当します。
これまで天気予報は、ときには外れるものでした。だから僕たちは、予報を見ながら最後は自分で行動を決めていました。傘を持つかどうかも、旅行に行くかどうかも、決めたのは自分です。台風の被害に遭った人がいたとき、僕たちはその人を、運が悪かった人として見ていました。
しかし、予測が確実に当たるようになればどうなるか。3日前に自分の家が暴風域に入る確率が8割だと表示されていたのに、対処しなかった人は、もう運が悪かった人ではありません。言われたのに動かなかった人になります。
たとえば会社が、台風の日に出社させたとします。これまでなら「予報が外れることもあるのだから仕方がない」でしたが、これからは「3日前に数字が出ていたのになぜ休みにしなかったのか」と問われます。学校の休校も、イベントの決行も、保険の支払いも同じです。数字が先にある以上、その数字に反する決定をした人には、必ず説明が求められます。
◆予測の精度が上がるほど、選べる範囲は狭くなっていく
’30年代には、台風が来る何日も前から、自分の住む町がどうなるかを数字で知らされているでしょう。たしかに安全性は高まります。ただ同時に、これは「判断の余地がなくなる」ことにもなります。正解が先に表示されている世界では、そこから外れて動く人は勇気のある人ではありません。“ただの愚か者”として扱われます。予測の精度が上がるほど、僕らが選べる範囲は狭くなっていきます。
