水谷隼氏に400万円超の恩恵 技術承継機構が「株価10倍」を達成できた理由
元卓球選手で、オリンピックのメダリストでもある水谷隼氏が7日、自身のX(旧Twitter)に「夢のテンバガー このまま永遠にあがってくれ」と投稿したことが話題になった。添付された画像には、2000円で取得した株が2万2140円になったことが示されている。400万円以上の含み益を出したようだ。
株式投資を行う人々は、購入時の価格から10倍の価値になった保有株のことを「テンバガー」と呼ぶ。水谷氏は、2025年に上場した「技術承継機構」の株を購入し、テンバガーを達成したようだ。
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2018年に設立された技術承継機構は、2025年2月に東京証券取引所のグロース市場に上場。当初予定していた上場時の価格(公開価格)は2000円に設定されていたが、上場後初めての取引では1株2700円を記録。水谷氏がXで冒頭のポストを行った7日の終値は2万1850円になった。
技術承継機構の事業内容は、製造業の中小企業をM&Aで譲り受ける、というもの。M&Aの仲介会社やIPO・転売を目的とする投資ファンドのようにも見えるが、同社は譲受した企業を継続的に支援し、企業価値向上を図るという事業モデルだ。
買収した企業の価値を向上させ、そこから生まれた現金などを活用してM&Aを行い、「非連続的な成長」をするというロールアップモデルである。
製造業の中小企業は、後継者不足、人手不足が深刻化している。業務が属人化しているだけでなく、IT投資が不十分なせいで業務が非効率的になっていることも少なくない。技術承継機構は買収後に事業計画を策定して実行、モニタリングする仕組みを整え、収益改善に努めている。
株価10倍達成後のリスクとは
事業の成果は業績に表れている。2025年12月期の売上高は前期比35%増の149億円で、当初の計画から29%上振れ。純利益は3.4倍の約31億円になっている。
今期の業績も絶好調である。2026年1月~6月の純利益は15億円を超え、前年同期比の5.4倍にまで急増している。この期間、技術承継機構は3社を取得。引き続き非連続な成長に期待できるというわけだ。
一方で、危うさも見え隠れする。技術承継機構のPBRが17~18倍で推移しているのだ。
PBRとは、現在の1株あたりの株価が、純資産の何倍かを示す指標だ。この数値から、株価がどの程度評価されているかを確認できる。一般的にPBRが1倍を下回ると「価値が低い企業」という評価を受けるが、PBRが10倍以上になると「株主の期待が先行しすぎた企業」として扱われるようになり、株価が上昇しにくくなる。
グロース市場は企業の成長への期待感からPBRが高まりやすい。ただ、技術承継機構の場合、傘下に入った企業の多くは製造業であり、そこに非連続の成長という付加価値が上乗せされているようだ。
このM&Aは不確実性が高いという側面も持つ。M&Aによる非連続な成長で株価が好調だったのが、GiGOなどのゲームセンターを運営するGENDAだ。セガのゲームセンター事業を譲受した会社で、2023年7月にグロース市場へ上場した。カラオケ店運営をはじめ、エンタメ分野を手掛ける企業などのM&Aを、一時は毎月のように実施。高成長への期待から株価が大きく上昇したものの、その後は共同創業者の離脱などもあり、株価は低迷した。
M&Aは売上規模を短期間で拡大できる一方、企業価値を高めるには買収後の収益改善、シナジー創出が欠かせない。それが不十分だと金融機関の借入などが重荷になり、収益が圧迫されることもある。
ただし、技術承継機構がM&Aに伴う「負ののれん発生益」を計上している点も見逃せない。負ののれん発生益とは、買収した企業の純資産価値が、取得価格を上回った場合などに生じる利益だ。かつてRIZAPグループが積極的なM&Aを展開していた時にも、多額の負ののれん発生益が発生し、利益を押し上げていたことで注目された。
水谷氏が「このまま永遠にあがってくれ」と願うように、技術承継機構が非連続な成長を続けられるか。テンバガー銘柄の行く末が注目されている。
文/不破聡 内外タイムス

