「わたしはいつも商品に近い所で、お客様に近い所で仕事をしてきました」と氏は日産入社以来の自分の経歴を振り返る。 

 タイ日産時代は、ASEAN地域のディーラーや顧客と対話を重ね、中南米や欧州でも同様に現地のディーラーや顧客と密接にコミュニケーションを取った。「お客様が日産車について、どんなイメージを持ち、また、どんな理由で車選びをするかを知りました」と言う。 

 商品企画がいかに重要かを身をもって学んだということ。 

「充実した経験を積ませてもらいました。本当に恩を感じています。日産自動車はいろいろなチャンスを与えてくれたし、わたしは多くの事を学びました」 

 氏が続ける。 

「社長になってほしいと言われた時には名誉を感じました。驚きましたけれども、謙虚な姿勢で責任を持って受け入れることにしました。わたしは恩返しをする機会だなと思ったんです」とその時の心情を打ち明ける。 

 1年前(2025年前半)は業績も悪く、ホンダとの経営統合協議も破談となり、いわばどん底の状況。先々の困難も予想されていた。それでも、「わたしにとっては正しいことだと思って、(社長就任を)受け入れました」と氏は語る。 

 そして、氏は社長に就任するや、経営再建計画『Re:Nissan(リ・ニッサン)』を作成。2026年度(2027年3月期)までに営業損益とフリーキャッシュフローの黒字化を掲げ、内外の7工場閉鎖やコスト削減などの構造改革に着手。 

『Re:Nissan』には〝攻め〟と〝守り〟両方の要素がある。追浜工場(神奈川県)など内外7工場閉鎖や約2万人にも及ぶ従業員削減という厳しい改革を実行しながら、新車の開発を同時に進める。 

 筆者が横浜市の日産グローバル本社を訪ね、インタビューを行ったのは7月13日。氏は新車のラインアップについて、「日産史上初めて、日本で7車種を1年間で投入します」と力を込めて語り始めた。 

「1カ月前には、軽自動車の『ルークス』を出しました。新しい軽自動車です。その後、電気自動車の『リーフ』を出しました。今はちょうど、『キックス』(日産独自のHV=ハイブリッド技術を搭載したSUV=多目的スポーツ車)を出しているところです。この新型『キックス』も好評で7000台以上の受注を2、3週間でいただきました」 

 また、大型ミニバンの『エルグランド』を16年ぶりに全面刷新。人気スポーツセダンの『スカイライン』も今冬、公開の予定だ。