「ブラックホール」も元は最も明るく輝く星だった…「色」だけで寿命までわかる宇宙の法則
もし未知の異星人から「あなたはどこから来ましたか?」と問われたら、どう答えますか?
「地球から」という回答は、宇宙規模の社交場では失笑を買ってしまうかもしれません。実は私たち地球人は、ある決定的な理由により、宇宙の平均レベルよりも科学の発達が遅れている可能性があるのです。
ファーストコンタクトの日に恥をかかないために必要なのは、地球の狭い常識ではなく、宇宙のどこへ行っても通用する「普遍的な教養」と「宇宙的思考法」です。
多種多様な異星人が行き交う宇宙ステーションで繰り広げられる、知的で刺激的な問いの数々。宇宙で真に求められる「本当の科学知識」とは一体どのようなものなのか、その知的な冒険の一端をぜひ覗いてみてください。
※本記事は、講談社『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう』(高水 裕一)の内容を抜粋・再編集したものです。
「あなたの太陽は何色ですか?」
"カタログに頼りながらも宇宙で最初の質問をなんとかクリアして、あなたには宇宙人と交流していく自信が少し芽生えてきました。しかし、彼の次の質問に、またしても虚をつかれます。
「では、あなたの太陽は何色ですか?」
太陽の、色? そんなこと、いままで考えたこともありません。地球人のほとんどはそうでしょう。しかし、これもまた宇宙人としては知っておくべき必須の教養なのです。
さきほど述べたように、天の川銀河にはおよそ1000億個の恒星が存在すると考えられています。さらに宇宙全体を渡すと、銀河はおよそ2兆個あるともいわれています。つまり、これらをかけた1000億×2兆の答え(2×10の23乗)が、宇宙のすべての恒星の数ということになります。まさに無数とも思えますが、じつは、すべての恒星は「色」によって7つの種類に大別することができるのです。
少し説明しますと、恒星、つまり星にも一生涯というものがあり、「誕生」から「死」までの、いわゆる「寿命」があります。星の寿命はその質量によって決まり、おおざっぱに言ってしまえば、だいたい100億年前後です。仮に星の寿命を「人生100歳」にあてはめると、星は生まれてから「90歳」まで、現役の青春時代が続きます。ちょっとうらやましいですね。しかし、最後の「10年」ほどで急激に老けます。そして最後は、その質量によって、爆発するなどいくつかのパターンに分かれる「死」を迎え、残骸が「骨」のように残ります。生物の骨は、時がたっても地中で化石として残りつづけますが、星の「骨」も、白色矮星、中性子星、ブラックホールなどの天体となって、宇宙空間に長く残ります。
そして青春真っただ中の「90年間」、元気に輝いている状態の星のことを「主系列星」といいます。この主系列星が7つのタイプに分類できるということです。
タイプがわかれば「明るさ」「質量」「寿命」がわかる!
天文学では、このタイプ分けのことを「スペクトル分類」と呼びます。スペクトルとは、星から発生する光の波長です。難しいことを抜きにすれば、星の「色」で分類されていると考えてさしつかえありません。それは、次のように7つの色に分かれています。
青……OB型 青白……A型 クリーム……F型 黄(緑)色……G型
オレンジ……K型 赤……M型 褐色……LYT型
分類法は厳密にはいろいろありますが、これは最も一般的な「MK分類」にもとづいています。また、横軸にスペクトル型、縦軸に明るさをプロットしたHR(ヘルツシュプルング-ラッセル)図が、天文学ではよく見る星の一生を分類する方法です。
アルファベットの「型」の名前も実際に天文学で使われているものです。なにやら意味ありげですが、単純に、該当する星が発見された順にAからつけていったところ、そのあとに新たな分類が増えたりした結果、こうなっただけです。規則性がなく覚えにくいので、天文学を学びはじめた学生も「Oh, Beautiful And Fine Girl, Kiss Me 」と語呂合わせで覚えます。
OB型とは、O型とB型という2つのクラスをまとめたものです。同様にLYT型も、L型、Y型、T型の3つがまとめられています。ただしLYT型には、注釈が必要です。普通の星よりきわめて軽量(太陽質量の1%程度)で、しかも普通の星の内部で起こっている水素の燃焼とは違うタイプの燃焼をしているのです(重水素の燃焼)。いわば、正式な星の基準にぎりぎり達していない「星候補生」であり、「矮星」とも呼ばれています。語呂合わせには入っていません。
7色の分類と聞くと、なんとなく虹の7色が思い浮かぶでしょう。実際、光の波長の長さごとに分類しているという点では、まったく同じです。虹の色の分け方は国によって異なり、日本では波長が短いほうから紫、藍、青、緑、黄、橙、赤に分けられています。この7色は、かのアイザック・ニュートンが決めたものといわれています。日光が空気中の水滴などに当たって散乱するときに、波長の違いによって分離して見えるのが、虹の正体です。これもスペクトル分類ということができます。
では、星の色のスペクトル分類は虹とどこが違うのでしょう。
虹は太陽の光が大気中で散乱したときの色でしたが、星の色は、基本的に大気などを通して星を見たときの色です。そのために虹とは異なり、紫や藍はなく、最も波長が短いのは青(OB型)です。そのあと順に波長が長くなるのは虹と同じですが、大気を通すとどうしても白みがかった色になってしまうので、青のあとは青白、クリーム色と続きます。黄(緑)色(G型)が、虹の黄色と緑色に対応している感じです。
星の色による分類はまた、星の「明るさ」にも対応しています。青いOB型の星がいちばん明るい星で、青白のA型、クリーム色のF型……の順に明るさは落ちていきます。
また、星の「重さ」、つまり質量も基本的にこの順番です。星が明るいのは星の内部で水素やヘリウムなどの元素が燃焼しているからです。最重量クラスのOB型は、この水素とヘリウムのガスの量が多いので、重いのです。材料が多いなら、そのぶん長く燃えていられそうですが、星は重いと、重力で一気にその材料を使い果たしてしまうので、短時間で燃え尽きてしまいます。材料が少なくても暗く長く燃える線香花火と、一瞬で明るく燃える打ち上げ花火の関係に似ています。つまり、重い星ほど、明るく燃え、短命となるわけです。たとえば1等星のスピカはB型で、非常に明るく、質量も巨大で太陽のおよそ10倍です。
なおOB型の星では、質量が太陽の8倍以上のものは超新星爆発と呼ばれる壮絶な死を迎え、太陽の30倍以上のものは超新星爆発のあと、ブラックホールに変わります。なんでも吸い込む暗黒魔王のようなブラックホールも、もとは超絶明るく輝く美人だったとは、ディズニーの映画にありそうな設定です。
星の「寿命」も、このタイプによって決まります。上で述べたように、燃料となる水素やヘリウムの量が多いほど、星は自分の重さで急激につぶれるので、重い星ほど急速に明るく燃えて、短命となります。
星の寿命は、次の式によって決まります。Mは太陽質量の何倍かを示す値です。
星の寿命=約100億×Mのマイナス3乗(年)
これをあてはめると、各タイプの星の寿命は以下のようになります(単位は年)。
OB型…1000万~1億 A型……4億~12億 F型……30億
G型……100億~150億 K型……200億~1000億
M型……1000億~10兆 LYT型……10兆~ほぼ死なないほどの長寿
タイプによってずいぶん違うものです。このように星の色は、それがわかるだけで星の明るさ、質量から寿命までわかってしまう、非常に重要な情報なのです。そして恒星のこれらの性質は当然、その周囲をまわる惑星にも大きく影響します。おそらくすべての宇宙人が、この分類を重視しています。友人があなたに太陽の「位置」の次に「色」を尋ねてきたのは、そう考えると至極あたりまえのことだったのです。
【こちらの記事もオススメ!】<答えられたらスゴイ…「アナタは何でできていますか?」宇宙人からの奇想天外な問い、答えは「炭素」では不十分>
