島田麻央、シニア国際大会デビュー戦「木下グループ杯2026」で逆転優勝! ジュニアから続く確かな力

シニア国際大会デビュー戦で逆転優勝を飾った島田麻央 photo by Kiyoshi Sakamoto
9月4日~6日に行なわれたフィギュアスケートチャレンジャーシリーズ「木下グループ杯2026」最終日の女子フリー。ショートプログラム(SP)で4位だった2022年北京五輪銀メダリストのアレクサンドラ・イグナトワ(AIN2/個人の中立選手、旧姓トルソワ)が4回転ルッツをきれいに決め、余裕のある演技で合計221.06点をマークした。その直後に登場したのが、島田麻央(木下グループ)だった。
「イグナトワ選手が4回転ルッツを決めてすばらしい演技をしていることは知らなかったので、あまり何も考えずにリンクに上がった。それが逆によかったかなと思います」
そう振り返った島田は、冒頭のトリプルアクセルと次の4回転トーループをきれいに決め、自己最高となる合計231.32点をマークし、シニア国際大会のデビュー戦を制した。
「アクセルは降りた瞬間に『もうこれで大丈夫』という確信を持てるジャンプだったし、4回転トーループも会場に入ってからすごく調子がよかったので、自信を持って跳んで降りられたのですごくうれしかった」
こう話す島田は、2日前のSPでは1番滑走だった。その緊張もあってか、最初のトリプルアクセルはしっかり着氷したが、4分の1回転不足を示すq判定でGOE(出来栄え点)加点は0点。さらに最後のコンビネーションスピンではレベルを取りこぼしたが、自己最高の78.84点を獲得し、80.27点の中井亜美(TOKIOインカラミ)に次ぐ2位発進となった。
「ショートの1番滑走はすごく緊張したが、そのなかでも楽しんで滑れていい演技ができたのはよかった。最後のスピンは得意だと思って自信を持って練習してきたので、取りこぼしてしまったのはすごく悔しい。それでも78点は高い得点だと思うし、q判定ではあったけどトリプルアクセルに挑戦したことが得点につながったと思うので、挑戦してよかった」と納得の表情を見せていた。
だがフリーでは、練習の段階からトリプルアクセルの入りを少し修正し、4回転トーループを降りたあとは、躍動感を感じさせる滑りを披露した。連続ジャンプの3回転ルッツはq判定で、3回転フリップは回転不足を取られたが、流れのある演技を続け、終盤のステップシークエンスでは満ち足りた思いを伝えるように氷上を舞った。
最後のコンビネーションスピンにも、本人が「フリーでは絶対に取りこぼさないように、しっかり回ってレベルを取ることを意識した」と話す島田の成果が表れた。ジャッジからGOEで+4、+5の評価が並ぶ出来となり、演技後は珍しく両手を突き上げて喜びをあらわにした。
「これまでの大会では、トリプルアクセルと4回転トーループの両方を決めることができなかったので、シーズン初戦から成功することができたのは、次への自信につながったかなと思います」
島田は、39戦無敗だったジュニア時代の4シーズンでも、4回転トーループへの迷いがあったと明かした。
「ジュニアの時はコンディションが100%じゃないと決まらなくて、逆に減点されるからほかのジャンプを跳んだほうがまだ点数が高いということも多かったので。このまま続けていたらミスをして負けてしまうこともあるのではないかなと考えて、やめようかなと思った時もありました。でも、4回転トーループは小学6年生の時に初めて飛べて、中学1年生からこだわり続けてがんばってきていたので、そこはあきらめたくないなって思って......。跳ばなきゃいけないと思って練習をしてきたので、苦しいこともあったけど、やってきてよかったなと思います」
勝ち続けることを周囲から求められ、自分自身もプレッシャーを感じていたジュニア時代とは違い、今季は再び挑戦者として臨める解放感もある。国際大会から4シーズン遠ざかっていたロシア勢が、今季、個人の中立選手とし戻ってきたことも、彼女にとっては大きな刺激になった。
「ロシア選手が出てくるようになる前は4回転をやっている選手がいないので、4回転はおまけみたいな感じでやっていたけど、やっぱりロシアの選手が来るとおまけではなくて『絶対に跳ばなきゃいけない』という思いが強くなってきました。それで自分の調子も上がったので、すごいプラスになったと思います」
今回出場したイグナトワの本番での4回転ルッツは見られなかったが、一緒に滑った公式練習では間近で見ることができた。
「やっぱりジャンプの高さが私とはぜんぜん違うなと感じた。ショートの次の日の朝の公式練習で、疲れがあっても4回転をしっかり跳んでいたので、どんな状態でも跳べるのはすごいなと思いました」と、イグナトワの4回転ルッツを目に焼きつけた島田。自身も以前から練習している4回転ルッツを「跳びたい」という思いが、さらに強くなったと笑顔を見せた。
今季のルール改正により、SPはスピンとステップの基礎点が上がり、合計では2点弱高くなった。一方、フリーはジャンプ要素が7本から6本に減り、コンビネーションジャンプも3本から2本になった。フリーでもスピンとステップの基礎点は上がったが、コンビネーション内のジャンプまで数えると、ジャンプの総数は従来より2本減っている。
だが、ルールが異なるため単純比較はできないものの、昨季のシーズンベストに当てはめれば、坂本花織の238.28点に次ぐ2位相当の高得点だ。しかもSP、フリーともにわずかなミスがあっての得点だけに、今季への期待は膨らむ。
出産後の競技復帰について、「女の子はみんな、お母さんになった時はもっとモチベーションが湧いてくると思います」と笑顔で話したイグナトワ。大技を封印したSPは4位発進だった。
フリーでは3回転サルコウがq判定で減点されたものの、余裕のあるジャンプを披露。スピンやステップでは最高のレベル4を揃え、つなぎの丁寧さも見せるなど、さすがの滑りをしていた。ただ、「今日はけっこう疲れました。フリーというのがどういうものか思い出しました」と話したように、すべてのジャンプを跳んだあとのステップシークエンスではスピードが落ち、体力面に課題を残した。それでも、演技の土台となる技術の確かさは示した。
そして今後へ向けては「時々冗談で北京五輪の時のように4回転を5本跳ぶと言いますけど、昔の姿に戻ることはやはり難しいと思います。今の状況は当時の状況ではなく、そしてそれを取り戻すということは大変なことなんです。今はこの状態でやっていくが、改善点としては、すべてを直していく必要があります。まずはステップもそうですし、スピンもそうですし、ジャンプも当然です。すべてのエレメントを取り戻していきたい。それは遠くないと思います」と自信を見せた。今回、各エレメントに対するジャッジのGOE評価は最高でも+3だっただけに、完成度を高めれば、221.06点からさらに得点を伸ばす可能性は高い。
また、中井はSPでトリプルアクセルをきっちり決め、自己最高の80.27点で1位に立った。だがフリーでは、「先週くらいまでけっこういろんな予定が詰まっていて、あんまり練習できない期間が続いていた。木曜日ぐらいから本格的に練習も積めるようになった」という調整不足の影響も出た。冒頭のトリプルアクセルで転倒し、さらに2本のジャンプで回転不足を取られて4位に順位を落としたが、今後は完成度を高めてくるだろう。
これから登場するロシア勢が、どのような結果を出すかはまだわからない。だが、自己最高得点で優勝を飾った島田は、まだ得点を伸ばす余地を残しているだけに、シニアデビューシーズンから世界のトップ争いをリードする存在になり得ることを、この大会で示した。
折山淑美●取材・文 text by Toshimi Oriyama
