今年1月、プルデンシャル生命で100人を超える社員・元社員が、顧客およそ500人から架空の投資話などを持ちかけ、不正に金銭を受け取っていたことが発覚した。その総額はおよそ31億円に上る。さらに4月にはソニー生命でも、投資話や保険の解約を促して顧客を騙すなど、およそ1億2000万円に上る不適切な金銭のやり取りがあったと公表された。SNS上では「もう不信しかない」「解約を考える」といった声も上がっている。

【映像】すでに金額は7兆円超…解約の返戻金“衝撃グラフ”

 こうした不祥事が相次ぐ一方、生命保険の解約も増えている。生命保険協会の調査では、生命保険会社が解約した人に支払う解約返戻金が今年上半期で過去最高となる見通しとなり、7兆円を超えた。物価高や円安による節約意識の高まり、NISAなど投資への関心の高まりも重なって、積み立て型保険を解約して運用に回す動きが加速している。

 不要な保険は不要、必要なものには入る--この当たり前に見えるシンプルな原則を、多くの人はきちんと実践できているのか。『ABEMA Prime』では、保険の必要性と不要性、そして自分に合った保険の選び方について考えた。

■解約急増の背景--「保険という幻想が少しずつ剥がれてきた」

 ファイナンシャルプランナーの黒田尚子氏は、解約急増の背景について「物価高や円安で節約意識がこれまで以上に切実になっている。保険料は固定費なので、そこにメスが入った。また若い人を中心にNISAへの関心が高まり、保険で積み立てていた部分を解約して運用に回す人が増えているのではないか」と分析する。

 一方、経済ジャーナリストの荻原博子氏は「保険という幻想が少しずつ剥がれてきて、皆さん合理的になってきた。特に若い方はそうだ」と語る。荻原氏によれば、民間保険の本質は「健康保険でまかなえないところをまかなえばいいだけ」であり、貯蓄型保険の予定利率も近年は0.3~0.5%程度で「何の貯金にもなっていない」という。さらに「保険は数字の世界で、死亡保険の保証内容はどの会社も同じ統計に基づいている。会社によって保険料が違うのは経費の差だ。担当者に頼むと高くなるが、ネットで自分で選べば安くできる。株の売買でもネット取引が主流になったように、保険も合理的に選ぶ人が増えている」とカラクリを明かす。

 番組では生命保険の主なカテゴリーも整理された。黒田氏は「死亡保障(終身保険・定期保険)、老後資金のための個人年金、子どもの教育資金のための学資保険、死亡時も満期時も保険金が受け取れる養老保険。そして近年増加している医療保険・がん保険・介護保険」と説明する。ただし各社の商品名はさまざまで、出演者からは、自分がどのカテゴリーの保険に入っているのか分からないという声も上がった。 

■「がん保険に入っていなかった」--FPが自らの乳がん体験から語る

 黒田氏は40歳の時に乳がんを経験した。「FPとして20代から仕事してきたが、医療保険には入っていたもののがん保険には入っていなかった。まさか自分が40代でがんになるとは思っていなかった」と明かす。乳房全摘後、シリコンインプラントによる再建手術を行ったが、当時は自由診療扱いで170万円が全額自己負担だった(現在は保険適用)。複数年にわたって治療に伴いかかった費用は413万円に上り、公的保険でカバーできた分は約30万円、医療保険でカバーされた分は122万円、実質的に自己負担した分は261万円にのぼった。もしがん保険に入っていれば、診断一時金100万円と入院給付金約17万円、合計117万円がカバーできた可能性があると試算する。

 なぜ高額療養費制度の恩恵が限定的だったのか。黒田氏は「高額療養費は月額の医療費が高額になった場合に歯止めがかかる制度だが、乳がんのホルモン治療は月々の費用がそれほど高くないため、上限額に達しないケースも多い。少しずつ長期にわたって費用がかかると、制度の恩恵を受けにくい」と説明する。

 この体験を踏まえ、黒田氏は「患者支援の現場では、所得や家族構成、住宅ローンの状況によっては月5万円でも大変なケースがある。高額療養費があるから大丈夫と思いがちだが、医療費が自己負担限度額に達しなければ3割負担が続く。実際にがんになってみないと気づきにくいポイントだ」と語る。

 荻原氏はこの体験を聞いて「黒田さんのケースでいえば、医療保険という基本的なものに入っていたことがよかった。がん保険を別途入れていればよりカバーできたが、人間はがんだけで死ぬわけではなく、脳卒中やうつ病にかかることもある。だから広くカバーする医療保険をベースに持ち、足りない分は貯金から出すという考え方が大切だ」と述べる。そして「公的保険でも、例えばサラリーマンが病気で自宅療養する場合、最長1年半、給料の3分の2が傷病手当金として支給される。民間保険では入院しないと給付が出ないことが多いが、公的保険はより広くカバーしている。こうした制度を正しく理解すれば、そんなにたくさん保険に入らなくてもよいと感じるはずだ」と補足した。

■「入るところからスタートがもうやばい」必要なものだけを選ぶ発想へ

 議論を通じて浮かび上がったのは、「保険は入って当たり前」という前提そのものを見直すべきという視点だ。ライターのヨッピー氏は「保険は生活が破綻したり人生がめちゃくちゃになったりするのを防ぐためのものだ。がんになって月5万円生活が苦しいというレベルなら入らなくてもいいのではないか。自分が死んだ後に家族が路頭に迷わないために生命保険には入っているが、それ以外の余剰資金は保険よりNISAに入れた方がいいと思っている」と語った。またギャルタレントのあおちゃんぺは「入院して保険が下りるはずだったのに、申請がだるくてそのままにしてしまった。保険に関心がなく入っているだけの人は、結局申請しないから意味がないのかもしれない」と自らの経験を打ち明けた。

 こうした議論を踏まえ、黒田氏は「保険不要派と保険あり派の二択になっているのはナンセンスだ。私も不要な保険は不要だと思っている。問題は何が不要かを見極められないことと、保険不要論で保険商品そのものが不要だと勘違いする人が増えること」「投資は価格変動があるリスク商品で、いつ病気になるかわからない。リスクのあるものにリスクをぶつけることがリスクであり、NISAをやるなということではなく、保険も投資も貯蓄もバランスが大事だ」と強調する。

 荻原氏も「世界では必要な額だけ、必要なものだけに入る習慣がついており、日本のように毎月2万・3万円払うというケースは少ない。日本が保険好きになった背景には、戦後、未亡人の女性たちが生命保険の販売で生計を立てたという歴史的経緯もある。と説明。その上で、「自分に何が必要なのかをきちんと見極め、必要なら入る、必要でなければ入らないという判断をした方がよい」と述べた。

 黒田氏は「まず公的保障でどこまでカバーされるかを確認することが第一歩だ。高額療養費制度で自分の1ヶ月の自己負担上限額がいくらなのかを把握することが大事だ」と提言。保険・投資・貯蓄をバランスよく組み合わせる必要性も強調した。公的保障や貯蓄、家族構成などを踏まえ、自分に必要な保障を見極めることの重要性が、議論を通じて浮かび上がった。 

(『ABEMA Prime』より)