何より困るのは、セルフレジの操作方法が統一されていないことだという。

「機械が違えば、お金を入れるタイミングも場所も違うし、スキャン方法や操作方法も違う。セルフレジに遭遇すると、毎回ビクビクしながら買い物していますね……」

◆「AIを使えば仕事が早くなる」と言われても…

ビジネスの世界でも、ChatGPTが当たり前に使われるようになったいま、不動産の法務関連業務にかかわる山内大介さん(仮名・35歳)の職場でも、職場の上司が『AIを使って仕事を効率化しよう』と導入を勧めるようになった。山内さん自身、ChatGPTやGemini、Claudeを使い始めたものの、使いこなせず悪戦苦闘しているののだという。

「こっちの指示の出し方が下手なのか、毎回トンチンカンな回答が返ってくるんです。AIの回答に『違うよ』と説明して、また返事が来て……というラリーを何回も繰り返す。使いこなせれば便利なんでしょうけど、今のところ余計な仕事が増えています」

生成AIでは、AIに与える指示や質問文を「プロンプト」と呼ぶ。欲しい答えを得るためには、目的や条件、出力形式などを具体的に伝える必要があり、その組み立て方によって回答の質も大きく変わってしまうのだ。

そんな山内さんの苦労は、上司自身にも理解されていないそうだ。

「上司からすれば『AIを使えば仕事が早くなる』くらいの認識なんですよ。それなのに仕事のスピードが上がっていないものだから、『なんで仕事が遅いんだ』と思われるのが、一番しゃくですね」

◆ユーザーの側だけが悪いわけではない

券売機、セルフレジ生成AI……。こうした新しい技術を使いこなせない人たちを、はたして“IT弱者”と呼んでいいのか。元コンピューター誌記者の速水健朗氏は、「どちらかといえば、問題はユーザーが製品やサービスを操作する際の接点となる『ユーザーインターフェース』の使いづらさの方にある」と指摘する。

「2020年の新型コロナ禍以降、対面接客を避けるためにタッチパネル注文やセルフレジなどが急ピッチで導入されだしました。急遽導入したためにシステムが詰められず、使いづらいまま利用が始まったものも多いんですよね。アメリカの大手スーパー・ウォルマートは万引き件数の増加を理由にセルフレジを撤廃し、有人レジへの回帰を進めています。使いやすく改善を進めるなど、今後は、店側にとって不利益を生むテクノロジーについて方針が変わるケースも出てくるでしょう」

「強い」「弱い」のように、ITへの習熟度は最初から決まっているもののように語られやすい。しかし、年齢に限らず「わからないことを調べる習慣」があるかどうかという面も大きく関わっていると速水氏は指摘する。前出の山内さんが苦戦していた生成AIについても、それは同じだ。