「クッシング症候群」は何の数値を見て「診断」されるの?症状についても解説!

クッシング症候群は、コルチゾールというホルモンの作用が過剰になることで起こる病気です。顔が丸くなる、体幹に脂肪がつきやすい、血圧や血糖が上がる、筋力が落ちるなど、さまざまな症状がみられます。

ただし、症状だけで診断できるわけではありません。検査では、コルチゾールが過剰になっているか、ACTHというホルモンが関係しているか、原因がどこにあるかを段階的に確認します。この記事では、クッシング症候群の診断基準や判定の考え方を解説します。

監修医師:
上田 莉子(医師)

関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医

クッシング症候群を疑う特徴的な症状

クッシング症候群はどのような症状から疑いますか?

クッシング症候群は、特徴的な体型の変化や、血圧や血糖の異常などから疑われます。

代表的な症状には、顔が丸くなる満月様顔貌、腹部を中心とした体幹や首の後ろに脂肪沈着が目立つ中心性肥満、背中の上部に脂肪がつく野牛肩、手足の筋肉が落ちる近位筋力低下などがあります。見た目の変化だけでなく、疲れやすい、階段を上りにくい、あざができやすい、傷が治りにくいといった症状が出ることもあります。

また、高血圧、糖尿病、脂質異常症、骨粗しょう症、月経異常、気分の落ち込み、不眠などをきっかけにみつかることもあります。これらの複数の症状が重なれば、内分泌疾患などを疑って検査を行います。

満月様顔貌や中心性肥満とはどのようなものか教えてください

満月様顔貌とは、顔全体が丸くふっくらしてみえる状態です。クッシング症候群は、身体の脂肪のつき方が変わり、顔や体幹に脂肪が目立ちやすくなります。

中心性肥満とは、腕や脚よりも、お腹、胸、首まわり、背中など身体の中心部に脂肪がつきやすい状態です。一方で、腕や脚の筋肉は落ちやすく、見た目としては体幹は太く、手足は細い印象になることがあります。

ただし、満月様顔貌や中心性肥満は、体重増加や生活習慣の影響だけでも起こりえます。クッシング症候群を疑ううえでは、皮膚の変化、筋力低下、高血圧、糖尿病などが一緒にみられるかが重要です。

皮膚や血圧、血糖にはどのような変化が出ますか?

クッシング症候群は、皮膚が薄くなり、あざができやすくなることがあります。腹部や太ももに赤紫色の皮膚線条が出ることもあります。にきびが増える、傷が治りにくい、感染しやすいといった変化もみられます。

血圧や血糖にも影響が出ます。コルチゾールが過剰になると、血圧が上がりやすくなり、糖尿病や耐糖能異常が起こることがあります。もともと高血圧や糖尿病がある方は、治療しているのに悪化する、急にコントロールしにくくなるといった形で気付かれることもあります。

骨粗しょう症や筋力低下が進むと、転倒や骨折のリスクにもつながります。単なる体重増加では説明しにくい変化が重なる場合は、詳しい検査が検討されます。

クッシング症候群の診断の進め方と分類

診断はどのような考え方で進めますか?

診断では、まずクッシング症候群を疑う症状や合併症があるかを確認します。次に、ステロイド薬の使用がないかを確認します。飲み薬だけでなく、注射薬、吸入薬、塗り薬、点眼薬なども含めて確認することが大切です。これはステロイド薬が原因で同じような症状が出ることがあるためです。

そのうえで、コルチゾールが本当に過剰になっているかを調べます。検査には、血中コルチゾールの日内変動、ACTH、尿中遊離コルチゾール、深夜の唾液中コルチゾール、デキサメタゾン抑制試験などがあります。

コルチゾールは時間帯によって変動するホルモンです。通常は朝に高く、夜に低くなります。クッシング症候群は、このリズムが崩れ、夜間もコルチゾールが下がりにくくなることがあります。1回の採血だけで判断せず、複数の検査を組み合わせて評価します。

コルチゾールとACTHの値はどう判断しますか?

コルチゾールが過剰かどうかを確認した後、ACTHの値をみることで原因を考えます。

ACTHは、脳の下垂体から分泌され、副腎にコルチゾールを作るよう指令を出すホルモンです。コルチゾール過剰の状態でACTHが性状から高値の場合は、ACTH依存性のクッシング症候群を考えます。代表的には、下垂体腺腫からACTHが過剰に分泌されるクッシング病があります。まれに、肺など下垂体以外の腫瘍がACTHを作る異所性ACTH症候群もあります。

一方、ACTHが低いにもかかわらずコルチゾールが高い場合は、副腎そのものからコルチゾールが過剰に分泌されている可能性を考えます。副腎腺腫、副腎がん、副腎過形成などが原因になることがあります。

このように、コルチゾールとACTHは、診断名を決めるだけでなく、次にどの画像検査や詳しい検査へ進むかを決めるうえでも重要です。

原因による分類にはどのようなものがありますか?

クッシング症候群は、原因によって大きく分類されます。

一つは、ACTH依存性クッシング症候群です。これは、ACTHが過剰に分泌され、その刺激で副腎からコルチゾールが多く作られる状態です。下垂体腺腫が原因のものはクッシング病と呼ばれます。下垂体以外の腫瘍がACTHを分泌する場合は、異所性ACTH症候群と呼ばれます。

もう一つは、ACTH非依存性クッシング症候群です。これは、副腎の腫瘍や過形成などにより、副腎からコルチゾールが自律的に過剰分泌される状態です。この場合、ACTHは低くなりやすいです。

また、ステロイド薬の使用によってクッシング症候群に似た状態になることもあります。これを医原性または薬剤性クッシング症候群といいます。治療方針が大きく変わるため、薬の確認は診断の初期段階で重要です。

クッシング症候群の診断についてよくある質問

健康診断で疑われることはありますか?

健康診断だけでクッシング症候群と診断されることは多くありません。ただし、高血圧、血糖値の上昇、脂質異常、骨密度低下、低カリウム血症などをきっかけに、詳しい検査へ進むことがあります。
特に、体重増加と同時に、顔が丸くなった、手足の筋力が落ちた、あざが増えた、血圧や血糖が急に悪化した場合は注意が必要です。健康診断の異常が複数重なる場合は、内分泌の病気が隠れていないか相談するとよいでしょう。

診断はどの診療科で受けますか?

診断は、主に内分泌内科で行われます。最初は、健康診断の異常や高血圧、糖尿病、骨粗しょう症などで一般内科を受診し、そこから専門科へ紹介されることもあります。

原因が下垂体にある場合は脳神経外科、副腎にある場合は泌尿器科や内分泌外科が関わることがあります。診断から治療まで、複数の診療科で連携して進める病気です。

診断が確定するまでどのくらいかかりますか?

診断にかかる期間は、症状の程度や検査内容によって異なります。血液検査や尿検査だけでなく、デキサメタゾン抑制試験、画像検査、場合によっては専門的な負荷試験やカテーテル検査が必要になることがあります。

検査は外来で段階的に行うこともあれば、入院してまとめて行うこともあります。そのため、数週間から数ヶ月かけて診断する場合もあります。

似た症状のほかの病気と間違われることはありますか?

間違われることはあります。クッシング症候群の症状は、肥満、糖尿病、高血圧、更年期障害、うつ病、多嚢胞性卵巣症候群、薬の影響などと似ているところがあります。

また、飲酒、強いストレス、重いうつ状態などで、コルチゾール関連の検査に影響が出ることもあります。そのため、見た目や1回の検査だけで診断するのではなく、症状の経過、薬の使用歴、複数の検査結果を併せて判断します。

「太っただけ」「年齢のせい」と思われやすい病気ですが、特徴的な変化が重なる場合は、病気の有無を確認することが大切です。

編集部まとめ

クッシング症候群は、コルチゾールの作用が過剰になることで、満月様顔貌、中心性肥満、筋力低下、皮膚の菲薄化、高血圧、糖尿病などを起こす病気です。

診断では、まず特徴的な症状や合併症、ステロイド薬の使用歴を確認します。その後、コルチゾール過剰の有無を調べ、ACTHの値からACTH依存性かACTH非依存性かを判断します。原因に応じて、下垂体や副腎などの画像検査へ進みます。

健康診断で血圧や血糖の異常を指摘された場合でも、すぐにクッシング症候群と決まるわけではありません。ただし、体型の変化、筋力低下、皮膚の変化などが重なる場合は、内分泌内科などで相談しましょう。

参考文献

『クッシング病(下垂体性ACTH分泌亢進症)(指定難病75)』(難病情報センター)

『クッシング症候群』(日本内分泌学会)