【Mr.tsubaking】政令指定都市で唯一、夜に「ごみ収集」を行う福岡市に聞いた意外なメリット…「騒音苦情」はあるが
出勤前の時間、ただでさえ忙しいのに、ごみ出しまでしなければならない。そんな「朝のごみ出し」に、わずらわしさを感じている人は多いはずだが、実は夜にごみを出せる地域がある。福岡市だ。
福岡市は政令指定都市で唯一、全市域(離島を除く)で夜間にごみの収集があるため、ごみ出しは日没後なのだ。福岡で生まれ育った筆者は、通勤カバンとごみ袋を抱えて出勤するサラリーマンの姿は、テレビドラマの中だけのものだと思っていたが、実際に上京してみると、それが日常的な風景であることに驚いた。
朝の忙しさが軽減されるのは助かるが、その他にメリットはあるのだろうか。また、夜のごみ出しは他の自治体でも可能なことなのだろうか。福岡市の担当者に聞いた。
「朝のごみ出し」がない福岡市、夜間収集には意外なメリット
「燃えるごみ」を例にとると、福岡市も多くの自治体と同様に週に2回の収集となっている。その上で、市のホームページには時間帯について次のように記載されている。
「夜間に収集しますので、決められた日の日没から(暗くなってから)夜12時までに出してください」
福岡市は粗大ごみを除く家庭ごみの収集を夜間に実施している。このおかげで、市民は朝のごみ出しから解放されるわけだが、他にもメリットがあると福岡市環境局の収集管理課・課長の千綿啓介氏は言う。
「通勤ラッシュの時間帯にごみ収集車が走らないことで、渋滞の緩和にもつながります。また、カラスによるごみの散乱被害も抑制できています」(福岡市環境局・千綿氏。以下同じ)
さらに、夜間にごみ収集作業員が市内を回ることで、街頭犯罪の抑止や火災の早期発見などにもつながっているとのこと。また、福岡市の夜間のごみ収集車には、今年度から全ての車両(軽トラックを除く)にAEDも搭載されたという。
「夜のごみ収集」は騒音が問題? 福岡市が行う対策とは
こうして聞くと、メリットばかりのようにも感じられるが、SNSを見てみると「夜中のごみ収集車の音で、いつも目が覚めて迷惑」という旨のコメントもあった。
福岡市在住の筆者も、ごみ収集車の音で目を覚ましたことがあり、千綿氏も次のように話す。
「他の都市からの転入者が多い春先や、窓を開けて過ごすことの多い季節に、ごみ収集の騒音に関するご意見は増える傾向にありますね」
具体的には、ごみ収集車がごみを巻き込む際の機械音や後退時の警報音、作業員の声などがそれに当たる。これに対し、必要以上の大声を出さないような指導や、原則として後退を伴う切り返しを行わないようにするなど、ソフト面での対策を実行。ハード面でも次のような騒音低減の対策を行っているという。
「収集車には集音マイクやバックモニターを設置し、安全確認の声の大きさが抑えられるようにしています。さらにエンジン音がないFC(水素燃料電池)ごみ収集車も現在3台導入し、導入効果や運用上の課題を検証しているところです」
夜間収集の課題は「暗さ」と「深夜割増」…それでも効率化できる理由
ここまで、ごみ収集サービスを受ける市民側にとってのメリット・デメリットだったが、運営する上ではどうだろう。
「デメリットとしては、夜間のため周囲が暗いことです。ごみ袋の有無や周辺の状況を確認しにくく、先の尖った物や発火性のあるものなど、危険物の混入に気づきにくい場合があります」
このリスクに対しては、ごみ収集車の側面にライトなどを設置し視認性を上げるよう努めているとのこと。しかし、明るい時間帯と同等にするのはなかなか難しいようだ。
他にも、夜間の時間帯の勤務になるため人件費の高さもデメリットになりそうだが。
「その点は、逆に夜間であることが奏功しています。夜間は交通量が少なく、昼間に比べて効率的に収集できます。そのため、必要な車両数や作業時間を抑えられる面があるのです」
なぜ他の自治体では広がらない? 最大の壁は「夜間の人材確保」
とはいえ、市民にとってのメリットはかなり大きいように見える福岡市のごみ夜間収集。他の都市も、同様の取り組みがなされてもいいのではと思ってしまうが、福岡市でしかできない理由があるのだろうか。
「他の都市でも、地域やごみの種類を限定しての実施はあります。そのため、他地域で実施できないということはないと思います」
実際、福岡市の夜間収集は全国からも関心が高く、他の自治体からの視察もあるそうだ。しかし、ほとんどの自治体が、昼から夜間に変更するには、多くの課題があると感じているのが現状だという。
「最大の課題は、夜間収集を安定的に担う人材の確保です。どの業界でも人材確保が難しくなっている中、夜間勤務に加え、屋外での労働を伴う業務であることも障壁になります」
また、昼間に収集している地域で、これから夜間収集に変更しようとすれば、住民の生活リズムも変わる。そこについて、周知と理解を広める部分にも多くの自治体はハードルを感じているようだ。
忙しい朝の時間のタスク削減や日中の渋滞緩和など、福岡市の夜間ごみ収集は住民には多くのメリットをもたらしている。それでも、他の地域が新たに導入するに当たっては、多くの課題があるのが現状。
ではなぜ、福岡市は夜間収集を実施できるようになったのか。
後編記事『「朝のごみ出し」がない街…福岡市が全国で唯一行う「夜間収集」が他都市で導入できない理由』で、その歴史に迫る。
