風呂上がりに冷たい「炭酸水」⇒余計に“滝汗”が出るって本当? 体がポカポカ温まる“逆転現象”の真相【医師解説】
暑い時期はお風呂上がりに冷たい飲み物が飲みたくなります。近年、健康志向が高い人を中心に「炭酸水」が流行しており、リラックスしたいときに飲まれるケースが多いようです。
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ところで、SNS上では「炭酸水を飲むと代謝がよくなりすぎて滝汗」といった体が温まるという内容の情報がありますが、本当なのでしょうか。天王寺やすえ消化器内科・内視鏡クリニック(大阪市天王寺区)院長で総合内科専門医、消化器病専門医、内視鏡専門医の安江千尋さんに聞きました。
炭酸水を飲んでも深部温度は下がらない
Q.お風呂上がりにキンキンに冷えた炭酸水を飲むと、その瞬間は非常に涼しく爽快に感じますが、医学的・生理学的にはその後の「体温」にどのような影響を与えているのでしょうか。
安江さん「お風呂上がりに冷たい炭酸水を飲むと、『体の熱が一気に引いた』と感じる人は多いでしょう。しかし、医学的には、『涼しく感じること』と『体の中心部の温度が大きく下がること』は分けて考える必要があります。
人の体温には、皮膚など体の表面の温度と、脳や内臓などの『深部体温』があります。冷たい炭酸水を飲むと、まず口や喉、食道、胃に冷刺激が伝わります。さらに、炭酸ガスによるピリピリとした刺激が加わるため、同じ温度の水よりも強い爽快感を覚えることがあります。冷たい飲み物は温熱感覚や快適さを改善し、飲みやすさを高める可能性も報告されています。
一方、コップ1杯程度の冷たい炭酸水を飲んでも、入浴によって上昇した深部体温が急激に下がるわけではありません。飲み物は体内で温められるため、深部体温への影響は通常、限定的かつ一時的です。
ただし、暑い環境での運動時などには、冷たい飲み物が深部体温の上昇を抑える可能性も報告されています。従って、『全く体温に影響しない』とまでは言えませんが、一般的なお風呂上がりに少量飲むだけで体全体が大きく冷えるとは考えにくいでしょう。
冷たい炭酸水を飲んだ後も汗が続くことがありますが、これは不自然な反応ではありません。入浴後の体は、皮膚の血管を広げ、発汗によって熱を外へ逃がそうとしています。この働きは、冷たい飲み物を飲んだからといって直ちに止まるものではありません。
お風呂上がりに水分を補うことは大切です。脱水状態になると、発汗や皮膚血流による体温調節が十分に働きにくくなります。つまり、炭酸水の主な利点は、体温を劇的に下げることではなく、爽快感を得ながら失われた水分を補えることにあります。
ただし、冷た過ぎる炭酸水を一気に大量に飲むと、人によっては腹部の張り、げっぷ、胃の不快感などが生じます。胃腸が弱い人や、冷たい飲み物で腹痛を起こしやすい人は、無理にキンキンに冷やさず、少量ずつ飲むのがよいでしょう。
冷たい炭酸水は『深部体温を一気に下げる飲み物』というより、『強い清涼感を得ながら水分を補給できる飲み物』と理解するのが適切です」
Q.炭酸(二酸化炭素)には血管を広げて血行を良くする効果があると思いますが、冷たい炭酸水を飲むことで「体を冷やしたいのに、逆に内側からポカポカ温まって汗が止まらなくなる」という逆転現象は起こり得るのでしょうか。
安江さん「炭酸水を飲んだことで全身の血管が広がり、体の内側から温まって汗が止まらなくなる、という現象は通常は考えにくいでしょう。
『炭酸には血管を広げる作用がある』という説明は、主に炭酸ガスを含むお湯に入る『炭酸泉』についてのものです。炭酸泉では、皮膚から吸収された二酸化炭素が局所の血管に作用し、皮膚血流を増やすと考えられています。
一方、炭酸水を飲んだ場合、二酸化炭素の多くは胃の中でガスとなり、げっぷとして排出されます。一部は消化管から吸収されますが、飲用した炭酸水が炭酸泉と同じように全身の血管を広げ、体温を上げることを示す十分な医学的根拠はありません。
お風呂上がりに炭酸水を飲んでも汗が止まらない場合、その主な理由は炭酸ではなく、入浴後の熱放散が続いているためです。入浴で深部体温が上がると、体は皮膚の血管を広げ、汗を蒸発させることで熱を逃がします。炭酸水を飲んだタイミングと発汗が重なったために、『炭酸水のせいで汗が出た』と感じることはありますが、実際には入浴後の正常な体温調節であることがほとんどです。
非常に冷たい飲み物を一気に飲んだ際、体が一時的に刺激を感じたり、胃の不快感や冷えを覚えたりする人はいます。ただし、その反応を『自律神経の作用で体温が上昇する』『反動で体が温まる』と一般化できるだけの根拠はありません。
むしろ注意したいのは、炭酸によって胃が膨らみ、少量で満腹感を覚えることです。炭酸水でお腹がいっぱいになると、必要な水分量を十分に取れないことがあります。特に大量に汗をかいた後は、炭酸水だけにこだわらず、普通の水や麦茶なども利用するとよいでしょう。
結論として、炭酸水は『体を内側から温める飲み物』でも、『特別に体温を下げる飲み物』でもありません。お風呂上がりの汗が続くのは、体が熱を外へ逃がしているためであり、通常は心配する必要はありません」

