「お祝いは気持ちだけにしたんです」〈年金月14万円・73歳女性〉長女一家とのやり取りが途絶えた理由
孫の誕生日や入学、進学など、祖父母がお祝いをする機会は何度もあります。喜ぶ顔を見たくて始めたことでも、自分が年金生活に入れば、同じ金額を出し続けることが負担になる場合もあるでしょう。一方、孫が成長するにつれて家族の生活も変わり、以前と同じ付き合い方が続くとは限りません。
「今年から、お祝いは気持ちだけにするね」73歳で決めたこと
一人暮らしの典子さん(仮名・73歳)は、月約14万円の年金で生活しています。預貯金は約1,300万円。住宅ローンを完済したマンションに暮らしているため家賃はありませんが、管理費や修繕積立金、固定資産税などの負担は続いています。
典子さんには45歳の長女・恵さんと、大学1年生、高校2年生の2人の孫がいます。孫が小さかったころは、月に1~2回ほど長女一家が遊びに来ていました。
「来るときはお菓子を買って待っていました。帰るときに孫へ2,000円、3,000円と渡すのも楽しみだったんです」
誕生日には1万円、クリスマスにはプレゼント、入学時には数万円。家族で外食すれば、典子さんが「今日は私が出すよ」と会計を引き受けることもありました。
当時はパート収入もあったため、それほど負担には感じていませんでした。しかし、70歳で仕事を辞めると収入は年金だけになりました。
月14万円の中から食費や光熱費、マンションの管理費などを支払い、旅行や家電の買い替えといったまとまった支出があれば、預貯金から補います。
総務省『家計調査報告〔家計収支編〕2025年平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯では、1ヵ月の実収入は平均13万1,456円、可処分所得は11万8,465円。一方、消費支出は14万8,445円となっています。
典子さんも、仕事を辞めてからは「今ある貯金を、この先何年使うのか」を考えることが増えました。
そんななか、大学生になった孫の誕生日が近づきました。前年までは現金1万円を渡していましたが、典子さんは長女にこう伝えます。
「今年から、お祝いは気持ちだけにするね。もうおばあちゃんも年金暮らしだから」
恵さんは「もちろん。今まで十分してもらったから、気にしないで」と答えました。
誕生日当日、典子さんは孫に「お誕生日おめでとう。大学生活楽しんでね」とメッセージを送りました。
孫からは「ありがとう!」と返信があり、それでその日のやり取りは終わりました。
内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査』では、60歳以上の25.2%が子や孫の生活費を「ほとんど」または「一部」負担しています。70~74歳では22.9%でした。また、今後「子や孫のための支出(学費、こづかい等)」を優先したいと答えた人も25.8%います。
典子さんも、孫のためにお金を使うこと自体が嫌になったわけではありません。ただ、これまでと同じことを続けるのではなく、自分の生活とのバランスを考えようと思ったのです。
「そういえば、最近会ってないね」半年後に気づいた変化
それから半年ほどたったころ、典子さんはスマートフォンのメッセージ履歴を見返していました。
長女との最後のやり取りは、2ヵ月ほど前。「元気?」と送った典子さんに、恵さんが「元気だよ。また落ち着いたら行くね」と返したところで止まっていました。
以前なら、孫の誕生日や季節のイベントが近づくたびに、「今度の日曜日に行ってもいい?」「みんなでご飯食べようか」と予定を決めていました。
しかし、孫たちが高校生、大学生になるにつれ、休日はアルバイトや友人との予定などで埋まるようになりました。長女夫婦だけで典子さんの家を訪れることもほとんどありませんでした。
「お祝いをやめた途端、来なくなったのかな」
そんな考えが浮かび、典子さんは少し寂しくなったといいます。ただ、しばらくして恵さんから電話がかかってきました。
話の途中で典子さんが「最近、みんなに全然会ってないね」と言うと、恵さんは「本当だね。上の子はバイトで、下の子も部活があるから、4人そろう日がほとんどないんだよ」と答えました。
典子さんが「私がお祝いをやめたから、来づらくなったのかと思ってた」と話すと、恵さんは驚いたそうです。
「そんなこと考えてたの? お祝いとは関係ないよ。私も、みんなで行ける日にって思っているうちに、連絡しなくなっちゃってた」
典子さん自身も振り返れば、長女一家からの連絡を待つことが増え、自分から「今度いつ来る?」と聞くことは少なくなっていました。
その週末、長女夫婦だけが久しぶりに典子さんの家を訪れました。3人で近所の店へ昼食を食べに行き、会計はそれぞれ自分の分を支払いました。
「前は娘たちが来るとなると、何を食べさせよう、お小遣いはいくらにしようって考えていました。でも、何も用意しなくても会えば普通です」
それ以降も、孫を含めた家族全員が頻繁に集まる生活に戻ったわけではありません。孫たちにはそれぞれの予定があり、典子さんにも自分の生活があります。
誕生日には今もメッセージを送りますが、毎回現金を渡すことはやめました。その代わり、会える日があれば一緒に食事をしたり、ときどき孫から大学生活の写真が送られてきたりするようになったそうです。
家族との付き合い方は、子どもや孫の成長、自分自身の年齢や家計によって変わっていきます。これまで続けてきた金銭的な援助を見直すことと、家族との関係を遠ざけることは同じではありません。一方で、以前はお祝いや行事が連絡を取るきっかけになっていた場合、それがなくなったあとには、意識して連絡を取らなければ交流が減っていくこともあります。
無理をして以前と同じ付き合い方を続けるのではなく、その時々の生活に合った形へ変えていくことも、長く家族との関係を続けるうえでは必要なのかもしれません。

