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2023年(令和5年)10月に実施された総務省統計局の『住宅・土地統計調査』によると、日本の全国平均の持ち家率は約61%だそうです。65歳以上ともなると、81%にものぼります。そんな中、現役のFPであり、ご自身も実家じまいの経験を持つ坂本綾子さんは「いずれどのように手放すか、避けては通れない問題です。大げさだと思われるかもしれませんが、あなたの実家じまいは日本の風景と経済につながっています」と語ります。そこで今回は坂本さんの著書『お金のプロが実体験をもとに導く 実家じまいの最適解』より一部を抜粋してお届けします。

【図】熊本の不動産会社の見積もり

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2023年10月~11月 実家じまいに強い業者に打診して査定を依頼

「実家を売ることにしたのだけど、いい業者さんを知らない?」

ファイナンシャルプランナーが数人集まっての食事会で聞いたところ、紹介されたのが「終活専門不動産」の末藤康宏さんです。

末藤さんの事務所は東京ですが、打ち合わせは当初、オンラインで行いました。当時、母は杖をつけば歩けましたが、ひとりでの外出は難しく、週に4日デイサービスに通う以外は自宅で過ごしていました。娘と孫が一緒とはいえ、誰も知り合いがいない東京に来て、近所の地理もわからず、なじみの商店もありません。そのため、私も外出は重要な仕事のみに制限して、なるべく家で過ごすようにしていたのです。

末藤さんに実家の状況を説明すると、まずは「机上査定」をすることになりました。机上査定とは、現地訪問をせずに住所や近隣の取引事例などから、売値の目安を出すこと。その結果は次の通りでした。

実家のデータ

・名義:母(父が亡くなった際に父から母に変更)
・土地:347.93平方メートル(約105.25坪)、所有権
・建物:木造平屋建て80.95平方メートル(約24.48坪)、1965年3月築
・立地:JR駅より徒歩12分、第一種低層住居専用地域
・接道:公道(一方)

机上査定の結果(AI査定)

AI査定価格帯:513万~1004万円(土地価格。建物は古いため0円)
成約想定価格:760万円

できればもっと高く売りたい

末藤さんから受け取った机上査定の結果を見た感想は、「あわよくばもっと高く売れないか」でした。なぜなら、その年の実家の土地の固定資産税評価額は692万円だったからです。最低でもそれくらい、できればもっと高く売りたい気持ちがありました。

固定資産税評価額とは、固定資産税を計算するときの基準となる価格のこと。不動産ごとに付いていて、教科書的には公示価格(国土交通省が発表する取引の指標となる価格)の約7割と言われています。つまり、固定資産税評価額を0.7で割り戻すと価格の目安が出ます。


『お金のプロが実体験をもとに導く 実家じまいの最適解』(著:坂本綾子/幻冬舎)

となると実家は……692万円÷0.7=989万円? しかしながら、実際の売買の値段はそう単純には決まりません。都市部の人気エリアのマンションは、固定資産税評価額から逆算した価格よりはるかに高い値段で売買されています。一方で、地方の中古戸建ての中には固定資産税評価額より安くしても売れないものもあります。

評価替えが3年に一度しか行われないため、固定資産税評価額の変動はスローペース。これに対して、実際の取引価格である不動産の時価は常に変動していて、数か月で一気に値上がりすることもあります。

机上査定はあくまで目安として、実際にどれくらいで買ってもらえそうか、熊本の不動産会社に問い合わせることになりました。

2023年12月~2024年1月 熊本の不動産会社から見積もりをもらう

売り手であるこちら側の不動産会社は末藤さんにお願いしました。末藤さんに買い手を探してもらうわけですが、その際、消費者への仲介ではなく業者買取にしました。

不動産を売る場合、不動産会社に仲介してもらい消費者に売るのが一般的ですが、古い家の場合は、不動産会社(プロ)に買い取ってもらう方法もあります。

消費者が購入する場合、うちの実家は建物が築59年と古いので、そのまま住むよりもリフォームするか、取り壊して新しい家を建てるかすることになるでしょう。そうすると、実際に住めるまでには時間がかかります。一方、不動産会社は、買い取った不動産をリフォームしたり、建物を取り壊して更地にしたり、新しい家を建てたりして消費者が買いやすい状態にして売り出します。手を加える費用がかかるので、その分、売却金額は安くなりますが、値段が折り合えばスピーディに売買が成立します。

仲介でも、買い手が現れなければ値段を下げることになるし、買い手が見つかるまでには時間がかかることが多いのです。近隣の売り出し物件を調べてもらうと、59年前に一緒に建てた家の一軒がずいぶん前に売り出され、まだ成約していないことがわかりました。東京と熊本を何度も往復するのは時間的にも費用面でも難しく、母の年齢を考えるとなるべく早く売りたかったので業者買取を選択しました。

現実は厳しい

末藤さんが熊本の不動産会社に見積もりを依頼すると……、現実は厳しいと思い知らされました。

高いところが500万円、安いところは50万円、買取不可が29社もありました。建物はそのままの「現況有姿」、家具などの荷物もそのままという「残置物あり」の条件だったので、取り壊しや処分の費用が差し引かれる分、安くなるのはわかっていましたが、複数社から買取不可と回答されたのはショックでした。

中古の家を買い取ってリフォームして販売する買取再販業者が増えているので、そういった業者にも問い合わせてもらったのですが、築年数が古くて土台に不安があるので買取は不可とのこと。

東京の母の部屋は、六畳の和室一間です。東京の家に母のものを全部置くスペースはありません。使わないものも多いので、荷物はほとんど熊本の実家にそのまま残していました。それらを自分で処分するとなると、交通費などを含めて数十万円の費用がかかり、時間もかかります。そのままでいいならこちらも助かるので、気を取り直して値段をつけてくれた業者と交渉することにしました。

※本稿は、『お金のプロが実体験をもとに導く 実家じまいの最適解』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。