パーキンソン病は手の震えや歩行困難といった運動障害を示す神経変性疾患であり、近年は患者数が急増していることが指摘されています。そんなパーキンソン病を、「図形の描き方」から高精度で識別できるAIツールが開発されました。

SNAKE optimised deep neural networks for Parkinson’s disease detection using multimodal handwriting as a digital biomarker | Discover Computing | Springer Nature Link

https://link.springer.com/article/10.1007/s10791-026-10507-0

The Way You Draw Can Reveal Parkinson's Disease With Up to 99% Accuracy, Study Reveals : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/the-way-you-draw-can-reveal-parkinsons-disease-with-up-to-99-accuracy-study-reveals

パーキンソン病の兆候はさまざまなところに存在しており、これまでの研究では血液や毛髪、耳あかなどからパーキンソン病のリスクを特定できることがわかっています。また、話し方や精神状態、住居の近くにある店などがパーキンソン病と関連していることも報告されています。

それにもかかわらず、依然としてパーキンソン病の診断は臨床評価に大きく依存しています。容易に入手可能なバイオマーカーが不足していることも、パーキンソン病の早期診断を難しくしている要因のひとつだとのこと。



今回、インドの研究チームは簡単な「図形を描くテスト」の結果を基にして、パーキンソン病を驚くほど高い精度で識別するAIツールを開発しました。筆跡や描画のAIツールに基づいた分析は、神経変性疾患の兆候を検出するための非侵襲的なスクリーニングツールとして注目されています。実際にパーキンソン病患者では、手の震えや指先の制御困難により文字が汚くなったり、徐々に字が小さくなる小字症という症状が出たりします。

今回の研究では、ブラジルのボツカツ医科大学で収集されたパーキンソン病のデータセットであるNewHandPDのデータが用いられました。NewHandPDには31人のパーキンソン病患者と35人の健康な対照群が含まれており、被験者はセンサー付きの生体認証スマートペンを用いて、らせん型の渦巻きや、角張った線で構成された蛇行型の図形などを描きました。

データには被験者が描いた図形に加えて、スマートペンが記録した被験者の手の動きのデータも含まれていました。これにより、描かれた図形の空間的な特徴だけでなく、指先の運動制御や手の協調性といった点についても分析可能だったとのこと。

以下の画像は、(a)(b)(d)(e)が対照群の被験者が描いた図形で、(c)(f)がパーキンソン病患者が描いた図形です。パーキンソン病患者の図形を見ると、スマートペンの細かい制御に苦労していることがうかがえます。



研究チームが開発したマルチモーダル深層学習フレームワークは、描かれた図形およびスマートペンが収集したデータをSNAKEと呼ばれる最適化アルゴリズムを用いて処理し、さまざまなAIモデルの評価を考慮して重み付けを行うというものでした。

NewHandPDのデータでフレームワークを評価したところ、それぞれの図形がパーキンソン病患者によって描かれたものなのか、それとも健康な人によって描かれたものなのかを高精度で識別できることが判明。具体的には、らせん型の図形では97.74%、角張った蛇行型の図形では98.95%という精度を発揮したと報告されています。

今回の研究で使用されたデータセットは、わずか66人の被験者しか含まれていないため、大規模集団におけるパーキンソン病の臨床的多様性を正確に反映しているとはいえません。それでも、今回の結果はパーキンソン病の検出において有望なフレームワークの可能性を示しており、将来的にはパーキンソン病の診断を容易にするのに役立つかもしれないとのことです。

研究チームは、「この研究は全体として、神経疾患の早期かつアクセスしやすいスクリーニングにおけるAIの役割の拡大を示しており、予防医療と精密医療への移行を後押しするものです。提案されたフレームワークは最終的に、非侵襲的で低コストかつ遠隔地からアクセス可能な、神経学的スクリーニングおよび臨床意思決定支援に貢献する可能性があります」と述べました。