なぜ財務省エースは『異例左遷』で飛ばされたのか…「高市応援団のドン」奈良県医師会長と決裂した「8年前の事件」

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財務省主計局次長から東京税関長に異例の転出をした一松旬氏が、奈良県副知事時代の2018年に、高市早苗総理の支援団体「高市早苗議員を内閣総理大臣にする奈良の会」の会長・安東範明氏(奈良県医師会会長)と、奈良県内に限り診療報酬を一律で引き下げる「地域別診療報酬」の導入を巡り、対立関係にあったことが『週刊現代』の取材でわかった。

奈良県に出向した際、「高市応援団のドン」と衝突

8月7日に、将来の財務次官候補とも言われる一松氏を東京税関長に転出させる異例の人事が発表された。朝日新聞は、官邸幹部が「(一松氏は)政権に協力的でなかったから」と事実上の〝左遷〟を認めたことをいち早く報じ、波紋が広がった。

官僚人事を一元管理する内閣人事局が’14年に発足後、第2次安倍政権では官僚人事への介入がたびたび取り沙汰された。しかし、「最強官庁」といわれる財務省では官邸の意向が色濃く反映されることはなかったという。政府関係者はこう語る。

「一松氏は財政再建論者として知られ、高市政権が推進する責任ある積極財政の方向性と齟齬があったのは事実です」

しかし、筆者が取材を続けると、異例の左遷人事の裏には、より根深い〝怨念〟が渦巻いていたことがわかった。高市事務所の関係者が明かす。

「一松氏は’15年から高市総理の地元である奈良県に出向し、’17~’18年に副知事を務めていた。その際、〝高市応援団のドン〟である安東氏との間に、根深い確執を抱えたのです。地元では、安東氏との遺恨こそが一松氏が飛ばされた理由の一つとされ、〝安東案件〟とも噂されています」

一体どういうことか。話は’18年3月に遡る。奈良県は、当時の荒井正吾知事のもと、国民健康保険の財政運営が市町村単位から都道府県単位に移されることへの対応に迫られていた。

そこで医療費が目標金額を上回った場合、県内の診療報酬を一律に引き下げる「地域別診療報酬」の導入を検討すると独自に発表。奈良県だけ「1点=10円」の診療報酬を引き下げるという案だ。

要するに、医師側の「取り分」を減らし、医療費を抑制するというスキームで、財務省が導入を推奨する政策でもある。この議論をリードしたのが、副知事の一松氏だった。

高市総理と奈良県医師会長の蜜月

これに対して断固反対の決議をするなど、激しく反発したのが、奈良県医師会だ。診療報酬を減らされれば、収入が減り、病院経営にとって死活問題だからだ。

「その反対運動の急先鋒が、当時、奈良県医師会の副会長や近畿医師会副委員長を務めていた安東氏でした」(同前)

結局、同年6月に一松氏は退任。12月に荒井知事と奈良県医師会が政策協定を締結し、「医療費に特異な増加が生じない限り、奈良県では地域別診療報酬を下げない」ことで決着した。

安東氏はこの副会長時代に、高市総理と関係を深めたことを産経新聞の取材に明かしている。高市総理と共鳴した安東氏は、’21年に奈良県医師会長となり、その後、’23年に設立された団体「高市早苗議員を内閣総理大臣にする奈良の会」(以下、奈良の会)の会長に就任した。

「安東氏は今年2月には日本医師会の松本吉郎会長とともに総理官邸を訪れ、高市総理と面会するなど蜜月関係は続いています。奈良の会の後継組織である『高市早苗総理大臣を熱烈に応援する奈良の会』や『高市早苗関西圏連絡協議会』の会長に就任しています」(同前)

果たして、異例の左遷人事の背景に、〝高市応援団のドン〟の意向が働いたのか。安東氏に見解を尋ねると、奈良県医師会を通して回答があり、一松氏が議論をリードしていた地域別診療報酬に激しく反発したことは「事実です」と認めた一方で、今回の人事への関与などについては「キッパリ否定いたします」と答えた。

ただ、安東氏が会長の「奈良の会」を巡り、別の重大疑惑も浮上している--。

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かわの・よしのぶ/'91年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、『サンデー毎日』『週刊文春』の記者を経てフリーに。主に政治を取材している

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