左膝にテーピングを巻きながらプレーを続けている久保。(C)Getty Images

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 サンティアゴ・ベルナベウのピッチに立つタケ・クボ(久保建英)の表情は真剣で集中し切っているが、どこか居心地の悪さを拭い去れていない印象だった。

 それでもマタラッツォ監督の信頼は絶対だ。先発で起用できる状態になれば迷わずピッチへ送り出す。「タケとその他10人」と言っても過言ではない。コンディション作りがチームメイトより遅れていようと関係ない。カンテラーノの台頭は「夏用の自転車」のように一時的なものだ。本格的な戦いが始まり、結果が求められる局面になれば、指揮官は常にこの日本人に命運を託す。

 一方で、最近のタケのパフォーマンスに失望の色を隠せないレアル・ソシエダのファンは少なくない。「かつての姿にはもう戻らないのではないか」と落胆し、ラ・リーガ屈指の局面打開力を誇ったウインガーが、足元でボールを受けては仕掛けられず、裏のスペースへのパスを要求しない選手へと変貌してしまった現実を受け入れられずにいる。

 とはいえ、コンディションと自信を欠いた状態で、静止した位置から、しかもゴールから遠いところでボールを受けて守備網を崩すのは至難の業だ。

 本コラムでは以前から警鐘を鳴らし続けてきた。タケはあまりにも守られてこなかった。長きにわたりルールすれすれの激しいマークに晒され、ボールに届かない相手DFは執拗に彼の足を狙った。

 その代償は予測できたはずだ。ついに肉体が悲鳴を上げ、怪我の連鎖に苛まれるようになった。直近だけで3度。しかもその3度目は最悪のタイミングで訪れた。評価を高めてビッグクラブへのステップアップ移籍を果たすまたとない機会だった北中米ワールドカップだ。

 グループリーグ初戦のオランダ戦、ドゥムフリースから受けた悪質なタックルによる負傷で、大会の残りを棒に振ることになった。上々のコンディションで臨み、誰よりもモチベーションを高めていただけに、タケ本人にとっても日本代表にとってもこれ以上ない不運だった。

 タケを責める理由などどこにもない。責任があるのは、激しいファウルを繰り返した選手たちと、それを野放しにした審判団だけだ。もしエムバペやメッシ、クリスティアーノ・ロナウドが同じ扱いを受けていたらどうなっていただろうか。不当な扱いに対しても、タケは決して過剰にアピールせず、不満顔も見せなかった。
 
 いまタケの左膝には痛々しいテーピングが巻かれ、本来のキレを取り戻すにはまだ時間を要する。ソシエダにとって開幕戦となったベティス戦でもパフォーマンス自体は決して悪くはなかったが、決定機を演出するまでには至らなかった。序盤に見せた質の高いプレーは復調の兆しを感じさせたものの、ギアをもう一段上げるスピードが足りず、見せ場を作れないまま58分に期待の若手マルシャルとの交代を告げられた。