カメラに興味津々で近づきたくて、母から逃れようとしているチロ(写真提供:しろぼしマーサさん)

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2026年上半期(1月〜6月)に公開した記事の中から、特に反響の大きかった人気記事をお届けします。(公開日:2026年3月27日)**********ライター・しろぼしマーサさんは、企業向けの業界新聞社で記者として38年間勤務しながら家族の看護・介護を務めてきました。その辛い時期、心の支えになったのが大相撲観戦だったと言います。家族を見送った今、70代一人暮らしの日々を綴ります。

【写真】嬉しくてシッポを振りまくった犬

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ひとり暮らしの危機でペットが飼えない

息子さんの家族と一緒に暮らしている70代の知人から、「あなたは1人で寂しいでしょうから、飼っている猫に子供が生まれたらあげましょうか?」と言われたが、断った。 

私は、ペットに責任が持てないので、飼えないと思っている。私が孤独死したら、ペットが餓死してしまうという不安のほかにも理由がある。 

自分のドジによるものも含めて、ひとり暮らしの危機をいろいろ経験しているからだ。過去の急な入院以外に、昨年は部屋の戸が開かなくなり、部屋から出られず、窓から出た。先日は、宅配便で缶詰の詰め合わせを贈ってくれた人がいて、喜んで運ぼうとして膝を痛め、廊下に座り込んだまま30分間、動けなかった。 

また、少人数だが貿易会社と業界新聞社で合わせて40年近く働いてきたが、独身女性の年金は少なく、そこから介護保険料や税金を引かれるので、ペットの食費や病気になった時の医療費を払うのが難しいのだ。 

そして、都内に住んでいた頃、飼っていた「マツ」という犬と「チロ」という猫を思い出すと、その思い出だけで十分だと思ってしまうのである。 

マツは、茶色の毛並みの雑種で、大型犬より少し小さめだった。耳がピンと立たず、少し折れていた。私が5歳の時から13年間、玄関の横の犬小屋で暮らしていた。マツが家に来た当時、大相撲に『松登』(最高位は大関)という力士がいて、父がファンだったので「マツ」という名前をつけた。チロは黒い縞のトラ猫で、私が13歳の時から9年間、家にいた。 

2匹の共通点は、どんな人間も大好きということだった。 

雪が積もった庭に雪男の足跡が!

私が中学生の時、都内にしては大雪が降った。 

朝、窓を開けると、庭に積もった雪に楕円形の足跡のような穴が5個あった。 

私は、「雪男が出た!」と叫んだ。両親が来て庭を見て、「何だあれ!?」と驚いた。 

その時だった。雪男の足跡だと思った楕円形の穴から、チロが高くジャンプして飛び出した。そして離れた雪に着地し、体重によりドスンと雪の中に沈んで穴を開けた。チロはまた、高くジャンプして、次の穴を開け、それを繰り返した。柔らかな雪にドスンと落ちるのが心地よいのか、庭は楕円形の穴だらけ。両親は爆笑した。 

私は、外に出て、マツの小屋の前の雪をスコップでどけて、「マツ、だいじょうぶ?」と聞くと、マツは身体を丸めて、尻尾に鼻先を突っ込むような形になっていた。そして、上目使いで私を見た。その目は「寒いんだから、ほっておいてくださいよ」と、訴えているようだった。猫は暖かいところが好きで、犬は雪を喜ぶと思っていたが、逆だった。 
 

犬に吠えて、どんな人間にも吠えないマツ 

私が小学生の頃、家に泥棒が入った。当時は、凶悪な強盗もいたが、子供のモノは盗まず、家族に危害を加えず、気づかれたら逃げる泥棒が多かった気がする。 

父が午前3時頃に目が覚めて箪笥の方を見ると、男が立っていた。「おまえ、何をしているんだ!」と怒鳴ると、男は逃げ去った。 

警察に電話し、パトカーが来た。中年の刑事さんが両親に、「鍵を開けるためのガラスの切り取り方とか手口が同じなので、最近連続している泥棒事件と犯人は同じですね」と話していた。当時の玄関は、ガラスの格子引戸が多かった。 

近所の人たちが来て、隣の奥さんが、「マツがいるから、うちも安心だと思っていたのに、泥棒に吠えなかったのね」と言った。マツの小屋は、泥棒が侵入した玄関の傍だ。 

父は「マツは、犬に吠えて、人間には吠えないんです」と、説明していた。 

刑事さんはしゃがんで、マツの頭に手をおいて、「たくさんの家が被害にあっているプロの泥棒が入ったんだよ。あんたはプロの番犬になり、自分の家とご近所を守りなさいよ」と、説教をした。マツは頭をなぜられたと思い、嬉しくてシッポを振りまくっていた。
 

 空き巣の捜査のじゃまをしたチロ

私が高校生の時の日曜日、家に戻ると、母が、「うちの前のアパートの1階の部屋に空き巣が入ったから、警察が来ている。マツは吠えないから、役に立たなかった」と言った。 

外に出て、私の家の車庫に立つと、空き巣の被害にあった1人暮らしの若いAさんと中年の刑事さんが、アパートの外で私に背中を向けて話し込んでいた。狭い道なので、Aさんの部屋のドアが開いていたので、部屋の中がよく見えた。 

鑑識官がしゃがんで、刷毛で粉をつけ、指紋をとろうとしていて、チロが刷毛にじゃれついていた。棒の先に丸いフワフワがついていて、猫が大好きなカタチと動きをしている。 

鑑識官は「だめだよ」と言い、肘でチロの体を押すが、チロは前足で必死にじゃれようとしている。鑑識官が「コラ!」と言って立ち上がると、チロは、「ニャー」と鳴き、刷毛に向かってジャンプ。鑑識官は、「飼い主さん!この猫、なんとかしてくださいよ!」と叫んだ。 

Aさんは、「お向かいの猫で、よく遊びに来るんです。僕が帰った時、鍵をかけたはずのドアが開いていて、猫がいた。猫がドアを開けたのかと思いましたよ」と、鑑識官に話した。 

鑑識官が、チロのお尻を押して、玄関の外に出そうとすると、チロはジャンプして外の地面に着地。刑事さんが大声を出した。「ああっ!犯人の足跡の上に!猫の足跡が!」。 

私は飼い主として叱られると思い、車庫の脇の塀に身を隠して、見ることした。 

刑事さんは腕組みをして、「この猫は空き巣と一緒に部屋に入ったようだな。ということは、空き巣の顔をしっかり見ている」と、厳しい口調でAさんに言った。 

チロは刑事さんとAさんの間に座りこんで、刑事さんの顔を見上げていた。 

刑事さんはチロの前にしゃがんで、「空き巣の人相はどうだった?」と、問いかけた。 

チロは刑事さんを見つめ、「ウニャア」と鳴き、話したそうだった。