「腹膜播種で痛み」が生じる3つの理由は?日常でできるケアも医師が解説!
痛みを抱えながら自宅で過ごす際には、鎮痛薬の適切な使用や姿勢の工夫が助けになります。日常でできるケアを紹介します。
※この記事はメディカルドックにて『「腹膜播種」になると腹部に「どんな痛み」が現れるかご存じですか?医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
福田 滉仁(医師)
京都府立医科大学医学部医学科卒業。初期研修修了後、総合病院で呼吸器領域を中心に内科診療に従事し、呼吸器専門医および総合内科専門医を取得。さらに、胸部悪性腫瘍をはじめとする多様ながんの診療経験を積み、がん薬物療法専門医資格も取得している。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、日本呼吸器気管支鏡学会気管支鏡専門医。
腹膜播種の痛みとは

痛みは、腹膜播種によって引き起こされる主な症状です。痛みの性質や強さは、病状や進行度によって異なります。まずは、なぜ痛みが生じるのか、その仕組みと特徴を解説します。
腹膜播種で痛みが生じる理由
腹膜播種は、がん細胞が腹腔内に播種し(散らばり)、腹膜で増殖する状態を指します。腹膜にできた、がん細胞のかたまり(播種巣)が腹膜の炎症や腹水などの原因となり、痛みを引き起こします。
腹水による圧迫
がん細胞から産生される物質によって血管やリンパ管から水分が外に漏れ出すことで、腹腔内に水(腹水)が溜まります。その結果お腹が張って内臓が圧迫され、お腹のハリや腹痛を引き起こします。
腸閉塞(イレウス)
播種した病変が腸を圧迫したり、腸の動きを妨げたりして、食べ物や便が詰まることがあります。腹痛だけではなく、吐き気や嘔吐、発熱、食欲不振などをきたすことがあります。
臓器への浸潤
がんが進行し、播種巣が内臓や筋肉、神経にまで広がること(浸潤)で、痛みを感じることがあります。また、がんによって尿の排泄に必要な尿管や、胆汁の排泄に必要な胆道が狭くなった場合、腹痛だけでなく、発熱や黄疸などさまざまな症状をきたすことがあります。
腹膜播種の痛みの程度
痛みの種類は、発生している場所によって異なります。痛みの種類はチクチクするような軽い痛みや、ズキズキとうずくような鈍い痛み、お腹のハリによる痛み、締めつけられるような強い痛みなどさまざまです。
また、同じ部位の播種であっても痛みの強さには個人差があります。ときには動くことが難しいほどの痛みを感じることもあります。痛みを我慢せず、医師や看護師に相談し、適切な対応をとることが重要です。
腹膜播種で痛みが強い場合の自宅での過ごし方

がん自体の治療と並行して、痛みそのものを取り除くための対症療法を積極的に行います。治療を受けながらご自宅で過ごす際に、少しでも痛みを和らげるための工夫があります。主治医や看護師に相談しながら取り入れてください。
主治医に適切な鎮痛薬を処方してもらう
痛みをコントロールするうえで、鎮痛薬を正しく使用することが大切です。毎日定時に鎮痛薬を飲むことで痛みのコントロールが得られやすくなります。また、それでも急に痛みが出てきた場合に備え、頓服薬が処方されることがあります。痛みを我慢せず、頓服薬を適切に使うことが大切です。
痛みが続く場合は、鎮痛薬の量や種類を増やすこともできるため、我慢せず正直に医師に伝え、処方を調整してもらいましょう。
痛みが生じている部分を温める
腹膜播種による痛みが、温めることで改善するかどうかは十分にはわかっていません。ただし一般的に、保温や冷却などによって痛みが改善する可能性はあると考えられています。具体的には、温めたタオルをお腹に当てる、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かるなどの方法があります。温めることが逆効果になる可能性もあるため、試す前には主治医や看護師に確認してください。
痛みが起きにくい姿勢をとる
痛みの原因となっている部分への圧迫を避けることで、楽に過ごせる場合があります。クッションや座布団、抱き枕などを上手に使い、身体のいろいろな部分を支えて、ご自身が楽だと感じる姿勢を見つけてみてください。
また、腹水でお腹のハリがある場合は、仰向け以外の姿勢が楽な場合もあります。無理のない範囲で、少しずつ体勢を変えながら、痛みが和らぐ姿勢を探してみてください。
腹膜播種についてよくある質問
ここまで腹膜播種を紹介しました。ここでは「腹膜播種」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
腹膜播種の痛みが辛い場合は強い鎮痛薬を処方してもらえますか?
はい、痛みが強い場合はモルヒネなどの強オピオイドを処方します。ただし、痛みの強さに応じて、段階的に鎮痛薬を調整していくことが大切です。痛みを我慢せず、つらい状況を正直に主治医に伝えてください。
腹膜播種の痛みを医師に伝える場合のポイントを教えてください。
痛みを効果的に管理してもらうためには、以下のポイントを整理して、できるだけ具体的に伝えることが大切です。医師は痛みの状態に応じて、追加の治療を検討します。
痛みの強さ、痛む部位、痛むタイミング、痛みが悪くなるきっかけ
痛みが原因で、生活のどのような活動が制限されているか
腹膜播種の痛みを我慢できないときはどうすればよいですか?
痛みが強いときは処方されている頓服の鎮静薬を使用してみてください。
ただし、それでも痛みが収まらない場合や、急にこれまでにない激しい痛みが生じた場合は、ためらわずに病院やクリニック、訪問看護ステーションなど、事前に確認しておいた緊急連絡先に電話してください。
まとめ

腹膜播種に伴う痛みはとてもつらい症状ですが、原因に応じた治療法や対処法が存在します。痛みを一人で我慢せず、ご自身の痛みの状態を主治医や看護師に詳しく伝え、相談しながら、適切な治療を行うことが大切です。
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関連する症状
腹痛
腹部膨満感
腹水
便秘
吐き気・嘔吐
食欲不振
発熱
腸閉塞(イレウス)
参考文献
腹膜播種診療ガイドライン 2021年版
国立がん研究センター中央病院大腸がんの腹膜播種とは
がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン2020

