【A4studio】異色のチェーン「椿屋珈琲」が過去最高の売上高を更新…コーヒー1杯「1000円超え」なのに人気を集める「独自の立ち位置」

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異色のコーヒーチェーン「椿屋珈琲」

グループで52店舗(2026年7月現在)構えている「椿屋珈琲」は、異色の存在のコーヒーチェーンだ。

重厚なアンティーク調の内装に、ロイヤルコペンハーゲンのカップ&ソーサー。クラシカルな制服に身を包んだスタッフが注文を取り、サイフォンで一杯ずつ抽出したコーヒーを席まで運ぶ。

ブレンドコーヒーは1杯1000円以上。効率化を進める多くの外食チェーンとは対照的に、内装にも接客にもコストをかけているように見える。

こうした店づくりから、Xでは《利益が出るとは思えない》といった声が上がっていた。さらに、運営会社の東和フードサービスが、パチンコ店などのアミューズメント事業を展開する企業グループと関係があることから、ネット上には《パチンコ屋の道楽でやっているとしか思えない》といった投稿もあり、話題を集めた。

ところが、実際の数字は、そうしたイメージとは異なる。

東和フードサービスは2026年4月期に過去最高の売上高を更新。椿屋珈琲グループの売上高も60億9900万円と前期を上回った。近年も新規出店やリニューアルを重ねており、少なくとも「採算を度外視した店」という見方だけでは、その実態を説明できない。

物価高で節約志向が強まるなか、なぜ価格帯の高い椿屋が選ばれるのか。外食ビジネスアナリストの三輪大輔氏に聞いた。(以下「」内は三輪氏のコメント)

“禁煙化”で喫茶店の競争軸が変わった

三輪氏はまず、現在の喫茶店・コーヒーチェーン業界では「二極化」が進んでいると指摘する。

コーヒー豆の価格上昇などで中小の喫茶店は厳しい状況に置かれる一方、大手には店舗数を増やしている企業もあります。資本力や店舗開発力の差が、以前より表れやすくなっているのです」

ただし、大手と中小の差は規模だけではない。何を武器にするかも異なってきているようだ。

小規模店には、豆や焙煎、抽出方法などの専門性を高める店が多い。一方、広い店舗を確保できる大手は、飲食物だけでなく、店内での過ごし方まで含めて価値をつくろうとしている。

二極化に至る転機の一つが喫茶店の禁煙化だったという。

「乱暴な言い方をすれば、以前はコーヒーを出して、たばこを吸える場所を提供するだけで成立する店もありました。しかし禁煙化によって、その価値が使えなくなった。コーヒー豆の価格も上がるなかで『では、何で選ばれるのか?』となり、大手では『店内でどう過ごせるか?』が重要になったのです」

「スターバックス コーヒー」は“サードプレイス(第三の居場所)”を掲げ、「コメダ珈琲店」は仲間や家族と長く過ごせる空間を打ち出している。「コナズ珈琲」のように、滞在時間を細かく制限せず、ゆっくり利用してもらうことを前面に出すチェーンもある。

もっとも、長く滞在してもらえば回転率は下がる。居心地が悪い店に客は来ないが、過ごしやすさを追求するほど席が空かないというジレンマを抱えることになるのだ。

「スタバがわかりやすい例でしょう。居心地を良くした結果、勉強や仕事で長時間利用する人が増え、店によっては座れなくなっています。過ごしやすさと回転率をどう両立するかは、各社にとって難しい課題なのです」

椿屋は「気軽に使えるホテルラウンジ」

この問題に対し、椿屋珈琲は別の方法でバランスを取っていると三輪氏はみる。

まずは、比較的大きな店舗を都心の主要駅周辺に構えていること。そして、1000円以上という価格設定そのものだ。

「スタバなどを何軒か回っても席が見つからない。それなら最初から、座れる可能性の高い椿屋へ行こうと考える人はいます。新宿や上野などの店舗は規模も大きいので、『行けばだいたい座れる』という安心感があるのです」

安い店を探して歩き回るより、最初から椿屋を選ぶ。そのほうが時間を無駄にしないという意味では、価格が高くても「タイムパフォーマンス」が良いと感じる人もいるのだろう。

さらに価格の高さは、客層にも作用する。

「若い人にとっては、コーヒー1杯に1000円以上を出すのは簡単ではありません。一方、ある程度年齢が上がると『1000円ちょっとでゆっくり話せるなら、それほど高くない』と考える層が一定数いるわけです。価格が利用客をある程度選び、席にも余裕があることで、落ち着いて過ごせる環境が保たれている面もあるでしょう」

こうした特徴を踏まえ、三輪氏は椿屋の立ち位置を「都心で気軽に利用できるホテルラウンジ」と表現する。

ホテルラウンジほど価格や敷居は高くないものの、一般的なカフェに比べて席に余裕があり、落ち着いて会話をしやすい。いわば両者の中間に位置する存在というわけだ。

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