日立の「白物家電」買収したノジマ、「製販一体」プライベートブランドに活路…顧客クレームからヒット商品
[フカヨミ]家電販売サバイバル<下>
割安さ武器
東京都港区にある家電量販2位ノジマの本社30階会議室。
毎週火曜日の午後2時、社長の野島広司(75)を始め役員や営業担当者ら約30人が集まり、「営業改善会議」が開かれる。
「もう少し安くできれば販売台数を増やせる」「機能を絞り込むべきだ」
熱を帯びるのが、自社で開発するプライベートブランド(PB)家電を巡る議論だ。「顧客のクレームが生きるケースが多い」とPB責任者の宮脇将志は話す。「ご飯がおいしく炊けない」「冷蔵庫で野菜が長持ちしない」といった不満を解消することがヒット商品につながる。
2011年にPBに本格参入したノジマは、「エルソニック」ブランドで乾電池や掃除機、液晶テレビなどを展開する。ナショナルブランド(NB)より割安な価格を武器に販売は伸びており、数量シェア(占有率)は電子レンジや炊飯器で5〜10%、比率の高いLEDシーリングライトで30%に上る。
業界関係者を驚かせたのが、4月に発表した日立製作所の白物家電事業の買収だ。約1100億円を投じてブランド力のある日立の家電を取り込み、自社の店舗網を生かして消費者の声を吸い上げることの相乗効果で、PB家電のさらなる強化を狙う。
「日本メーカーが弱くなっているのが寂しい。復活させたい」と野島は語る。「開発と製造、販売が(一体となって)情報をダイレクトに伝えられれば、商品開発力が上がり良い商品を作れる。その中心的な役割を家電量販店は担うことができる」
中韓勢台頭
最大手のヤマダホールディングス(HD)と5位のエディオンが経営統合の理由の一つに挙げたのも、PB家電の強化だ。
「日本メーカーがシェアで圧倒していた頃は、それを売るだけで通用する時代だった」。ヤマダHD会長兼CEO(最高経営責任者)の山田昇(83)は6月の記者会見で言及した。だが今は事情が違う。中国や韓国のメーカーが台頭し、収益性の低下した日本勢は相次いで撤退。シャープや東芝の家電事業は海外企業の傘下に入った。
「顧客のニーズに応えられる商品をPBを通して提案しないと、この業界は衰退していく」と山田は危機感を隠さない。売上高のPB比率が35%と高いエディオンと連合を組むのもそのためだ。エディオン会長CEOの久保允誉(まさたか)(76)も「量のメリットが出れば(生産する)中国メーカーとの交渉力も変わってくる。まだまだPBは上げていける」とにらむ。
小売業界全体を見れば、「製販一体」は今や当たり前のキーワードになっている。製造小売り(SPA)で代表的な衣料品のユニクロ、家具のニトリ、雑貨の無印良品などがそうだ。いずれも中国などの拠点で大量生産するスケールメリットを生かし、割安価格で消費者の支持を集める。
PB家電を巡っては異業種の攻勢も強まる。通信販売大手のジャパネットHDは6月、ツインバード(新潟県)の完全子会社化を目指すと発表。生活用品大手のアイリスオーヤマやディスカウント店のドン・キホーテが手がけるPB家電も存在感を増している。
SMBC日興証券のシニアアナリスト、松尾賢弥は「NBが縮小し、仕入れて売るだけのビジネスは成長が難しい。家電量販もニトリやユニクロのように、製造小売りを目指すのが生存戦略の一つだろう」と指摘する。製販一体で勝ち筋を見いだせるか、各社の取り組みが問われる。(敬称略。中山知香、森谷達也が担当しました)
◆PB家電=主に小売業が自社で企画・開発などを手がける家電。2009年にニトリやドン・キホーテが相次ぎ参入し、ヤマダHDも13年に販売を開始するなど家電量販大手に広がった。機能を絞り込み、ナショナルブランド(NB)より割安な価格で販売されることが多い。
