目的地への乗り換え案内や気になるイベントの日時を忘れないようにするため、ウェブサイトの画面をスクリーンショットした経験がある人は多いはず。ところが、ニューヨーク州立大学ビンガムトン校(ビンガムトン大学)の研究チームによる複数の実験で、スクリーンショットを撮ることが逆に記憶力を損なう可能性があると示されました。

Digital amnesia: The aftermath of a screenshot | Memory & Cognition | Springer Nature Link

https://link.springer.com/article/10.3758/s13421-026-01921-2

Taking screenshots makes you more likely to forget information - Binghamton News

https://www.binghamton.edu/news/story/6397/digital-amnesia-taking-screenshots-makes-you-more-likely-to-forget-information

Science Weighs in on Whether All Those Photos Are Helping or Hurting Your Memory : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/science-weighs-in-on-whether-all-those-photos-are-helping-or-hurting-your-memory

人々はパーティーや豪華な食事、友人との旅行、ペットのかわいい寝姿といった思い出を記録に残すため、スマートフォンで大量の写真を撮影しています。しかし、撮影した写真をほとんど見返さないという人も多く、これまでの研究では写真を撮影することが実際には記憶の形成を妨げることがわかっています。

「photo-taking impairment effect(写真撮影による記憶障害効果)」として知られるこの現象は、撮影者が後で見返さない素材に対して起こるとのこと。ビンガムトン大学心理学部の博士課程に在籍するソフィア・ファブリツィオ氏は「これらの画像を、記憶を呼び出しやすくするための手がかりとして積極的に見直さない限り、効果は期待できないでしょう」と述べました。

また、別の研究ではウェアラブルカメラを使って写真を自動的に撮影した場合、記憶力は損なわれないことが示されているとのこと。ファブリツィオ氏はこの研究結果について、「写真やスクリーンショットが保存されているから自分で記憶しなくても大丈夫」という認識ではなく、写真やスクリーンショットを撮ること自体に記憶力を損なう何かがあることを示していると説明しています。

今回、ファブリツィオ氏らの研究チームは合計892人の被験者を対象に、画像をスマートフォンで閲覧またはスクリーンショットした際の記憶力や、それに関連するさまざまな側面について調べるために複数の実験を行いました。

被験者は自分のスマートフォンで44枚のアート作品を閲覧し、指示に従ってそのうち半分のスクリーンショットを撮影し、残り半分はただ閲覧のみを行いました。どの画像をスクリーンショットまたは閲覧するのかはランダムで指示され、被験者はセッション後に記憶力テストを受けました。記憶力テストは以下のように、それぞれのアート作品について類似した3つの画像が表示され、その中から自分が閲覧またはスクリーンショットした画像を選ぶというものでした。



実験の結果、スクリーンショットを撮影した画像は閲覧のみをした画像と比較して、一貫して記憶の定着率が低いことがわかりました。さらに研究チームは、写真やスクリーンショットの撮影に伴う記憶力の低下(デジタル健忘症)に関する複数の側面について検証するため、条件や内容を変えて複数の実験を行っています。

2つ目の実験では、記憶力テストの後に「この画像のスクリーンショットを撮影したのか、それとも単に閲覧したのか」を尋ねる質問を追加しました。すると被験者は、スクリーンショットを撮影した画像については「自分がスクリーンショットを撮影したのか、それとも閲覧したのか」自体をよく覚えていないことも判明しました。

さらにいくつかの実験では、「スクリーンショットを撮影することで記憶する分の認知リソースを削減し、別のタスクに割り当てられるようにしているのではないか」という仮説を検証するため、被験者を「すべての画像を閲覧だけするグループ」と「すべての画像をスクリーンショットするグループ」に分けて、画像とは無関係の数学問題や記憶課題を行わせました。

その結果、「すべての画像をスクリーンショットするグループ」が「すべての画像を閲覧だけするグループ」よりも優れた成績を収めたという兆候は、ほとんど見られませんでした。つまり、スクリーンショットが被験者の認知リソースを削減する役に立ったとはいえないというわけです。



また別の実験では、被験者に「記憶力テストの前にスクリーンショットを見直す機会がある」と伝えました。被験者は「30分以内にテストを受けると伝えられるグループ」と「1カ月後にテストを受けると伝えられるグループ」に分けられましたが、実際には全員が10分以内に抜き打ちで、スクリーンショットを見返す機会を与えられずに記憶力テストを受けました。

研究チームはこの実験について、「テスト前にたっぷり時間的余裕があるグループ(1カ月後にテストを受けると伝えられたグループ)は、すぐにテストを受けるグループよりもスクリーンショットを撮影した画像の認知負荷を大きく削減するため、テストの結果が悪くなるだろう」という仮説を立てていたとのこと。

ところが実験の結果、両グループの間にはほとんど結果に差がみられませんでした。被験者らは記憶力テストがいつ行われると思い込んでいたのかにかかわらず、スクリーンショットを撮影した画像を単に閲覧のみをした画像と比較してよく覚えていませんでした。

これらの結果は、「写真やスクリーンショットの撮影によって、記憶に割り当てる認知リソースが削減される」という仮説と反しています。むしろ、「写真やスクリーンショットを撮影するという行為により、人々は無意識にその体験から距離を置くようになって、体験や情報が記憶に残りにくくなる」という仮説を支持するものです。



ファブリツィオ氏は、「今回の研究結果を総合すると、ボタンを押すことで情報や経験に関する記憶が損なわれている可能性が高く、この記憶障害は記憶された情報の範囲を超えて広がっているかもしれません」とコメントしています。

科学メディアのScienceAlertは、「電話番号を覚える必要がなくなったことを惜しむ人は少ないでしょうが、写真を撮り過ぎることで結婚式・誕生日・休暇といった人生の節目となる出来事を記憶する能力が損なわれるとしたら、その損失ははるかに個人的な打撃に感じられるでしょう」と述べました。