日本が持つソフトパワー 【 私の雑記帳 】
「日本やアジアには寛容の精神があります」と語るのは外交官で駐中国大使を務められた宮本雄二さん(1946年7月生まれ、現日本アジア共同体文化協力機構理事長)。
1969年に外務省に入省以来、欧亜局ソヴィエト連邦課首席事務官、情報調査局企画課長、イギリス国際戦略研究所研究員、米アトランタ日本国総領事など幅広い領域を担当してきた経歴を持つ。
長い外務省生活で印象に残っているのは、心理学者でもあった河合隼雄さん(1928―2007、元京都大学教授)が21世紀入りした頃、スイスで行った講演だという。河合さんはその時、日本を含むアジアが、寛容の精神、文化風土を持っていると、ヨーロッパ文明と比較して説いた。
英語のToleranceには〝我慢〟、〝耐える〟などの意味も含まれる。現実の世界で、力で相手を屈服させようとする動きが強まる中、ただ単にこちらが忍耐、我慢するだけではなく、どうあるべきかを相手に説き、解決への道筋を見出すという真摯な努力が要求される。
河合隼雄さんの講演後には、欧米の外交官や、世界中の多くの人たちが長蛇の列をなし、河合さんと意見を交えたという。
現実の世界は実に厳しい。毎日砲弾が飛び交い、さらにはドローンでの攻撃など、ロボットやAI(人工知能)を駆使しての戦争が始まりつつある。そうした中で、日本のソフトパワーを活用しての課題解決づくりが注目される。
日本の〝寛容の精神〟
寛容の精神に加えて、謙譲の精神も注目される徳目の1つ。中国は今、自己主張が強い面が大きいが、「例えばミャンマー(旧ビルマ)などは社会全体に染み渡っていますね」と宮本さんは語る。
日本が連携できる国々は沢山ある。宮本さんが若い頃、国連(国際連合)関係の仕事をしていた時、さまざまなセミナーでグループディスカッションをしていると、「日本の立場をいつもサポートしてくれるのはアフリカ諸国でしたね」と述懐する。
なぜ、アフリカ諸国は日本のことを支持してくれるのか?
「日本は何かを提案する時に、相手のことも考えて過度な要求をしないでしょう。日本が誇りを持っていいのは、戦後80年の日本の国づくり、そして、いろいろと試行錯誤して辿り着いた今日の時点で、日本は世界に誇る素晴らしい社会をつくり上げているんですよ。これだけ公平で、安全な社会はないんですよ」
ODA(政府開発援助)について宮本さんが続ける。
「一時期、ODAを短期的な日本の利益に結び付けようとする意見もありましたが、30年間、40年間、日本はもう何の紐付けもせず、相手国がいかにして自分で発展する力を身に付けるかとか、ODAの原則に従ってやってきたんです」
宮本さんがミャンマー駐在時、エジプト大使がやって来て、「エジプトのことを考えて援助してくれた国は日本だけ」と言ったという。
日本のソフトパワー─。「それは日本国民がつくり上げたものなんです。もっと日本は自信を持っていい」という宮本さんだ。

