熊本地震の裏で政治資金パーティを開いた政治家は他にもいた…福岡県議会「腐臭に満ちた伏魔殿」を暴く
「結局は保身が最優先なのか」
「地震当夜にパーティを開いた県議団会長が辞任しましたが、問題の本質は、ああいう人材が次々出てくる土壌にある。市議、県議、国会議員まで同じ穴のムジナばかり。福岡政界という伏魔殿は、もう自らの襟を正せないところまで来ています」(福岡の政界関係者)
最大震度7の地震が熊本県を襲ったまさにその日の夜、自民党福岡県議団会長(当時)の松尾統章(とうしょう)県議(53)が北九州市でビアパーティを開催。反省するどころか「やってよかった」という発言まで飛び出し、結局、県議団会長を辞任したことは周知の通りだ。
議長ポストの根回し名目での金銭要求、高額すぎる海外視察と問題が続出するなかでの不祥事に批判が殺到したのだが--実は地震当夜に政治資金パーティを開いていた政治家は松尾氏だけではなかった。同日午後6時過ぎ、福岡市内にあるホテルニューオータニ博多の4階広間で開かれたのは「おにき誠政経フォーラム」。登壇したのは福岡2区選出で自民党所属の衆院議員・鬼木誠氏(53)だ。
「乾杯!」
400人弱の来客の前で、そう高らかに乾杯の音頭を取ったのは現役の福岡市議。地震で、開会前にシャンデリアの装飾品の一部が落下するほど揺れたというが、構わず会は開かれた。
「会費は2万円で現職の国会議員の他、県議や市議が大勢いました。鬼木氏の選対本部長を務める県議がどんな挨拶をするのか注目していましたが、挨拶はなし。ある県議は『話をすると議長ポストを巡る金銭授受疑惑について謝罪をしないといけなくなるから』と明かし、代わりに市議に乾杯の音頭を取らせたそうです。押し付けるような立ち回りを見て、結局は保身が最優先なのかと思いました」
福岡政界の闇の深さを思い知らされたのが、鬼木氏と同じ福岡2区を基盤とする中道改革連合の前衆院議員・稲富修二氏(55)の行動だ。イオンモールの爆発、交通網の寸断や断水に停電と被害が続々と明らかになった後の8月1日に福岡市内のKKRホテル博多で政経セミナーを開催していたのだ。稲富氏は現在浪人中だが、これまで当選4回を重ねた中堅。FRIDAYが入手したチラシには、「午後1時開始、会費1万円」と記されている。
「稲富氏は’24年の衆院選の候補者アンケートで、政治資金パーティを『制度として禁止すべき』と回答しています。その彼が、自らパーティを開催。さらに言えば中止や延期を検討する時間はあったはず」(別の政界関係者)
ドンの長男が後継ぎに
鬼木氏に政治資金パーティ開催の理由を質(ただ)すと「地震発生が開催の1時間半前であり、参加者への連絡が行き届くのは困難な状況であった」と回答。稲富氏は「被災地の状況や福岡での開催への影響なども踏まえ、予定通り開催することとしました」と答え、「余興はなく、飲み物もお茶1本であり、被災地への支援物資や募金の呼びかけを行った」と続けた。
地元テレビ局の記者は、「もはや福岡では自民党を批判する立場の野党にも期待できない」と嘆く。与野党の相互監視作用が機能していないからだという。
「自民党だけが″県議会のドン″こと藏内勇夫氏(72)の人脈に入っていたわけではない。海外視察は中道系や他会派の議員にも声がかかり、一緒に視察に行った野党議員もいる。みんな同じ輪の中にいるため、抑制が利かなくなっている」
その輪から飛び出し、金銭授受の実態を告発した吉松源昭県議(58)が提出した、藏内氏に対する議長職の辞職勧告決議案は採決中止に。藏内氏は議長職を辞任する意向だというが、その時期は「しかるべき時」とし、不透明だ。
「藏内氏は全国都道府県議会議長会の会長でもあり、本人は任期を全うしたいはず。ただ、さすがに来春に控える県議選には出ないという話が浮上している。藏内氏のいる筑後市は一人区。いま彼が辞めたら補欠選挙をしなければならない。藏内政治への審判選挙になりかねず、自民党としても避けたいでしょう」(同前)
その藏内氏の後継として、早くも噂されているのが長男の謙氏だ。
「彼は自民党の林芳正総務大臣(65)の秘書を務めた後、’16年の衆院福岡6区補選に出馬しています。当時、県連会長だった藏内氏は長男を県連推薦で国政へ送り込もうとした。ところが鳩山邦夫元総務相の次男である鳩山二郎氏(47)に大敗。後継者として名前は出ていますが、地元では『あの長男では務まらないだろう』という見方が強い」(前出・政界関係者)
FRIDAYは藏内氏に一連の問題を受けての進退を問うたが、回答はなかった。
ある福岡市議はこう嘆いた。
「ドンが去ったとしても、新たなドンが現れる。福岡は本当に変われるのか……」
『FRIDAY』2026年9月4日号より
取材・文:甚野博則(ノンフィクションライター)
