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愛知の離島・篠島といえば、天然しらすで知られる漁業の島。しかし今、新しい養殖に挑戦しています。島を救うかもしれないという技術とは。

【写真を見る】「魚がとれない…」 立ち上がった漁師の妻 たった1人でクルマエビ養殖を 大手ゼネコンが協力し全国初の大アサリ養殖も 愛知・篠島

三河湾の離島・篠島。人口約1400人、働く人の実に8割が漁業に携わり、中でも盛んなのがしらす漁。名産の生しらすは島の代名詞でもあります。

漁師が新しいしらす漁船を購入した際には、島全体がお祝いムードに包まれます。しらす漁ができない冬には、トラフグと並んで養殖カキが島の漁業を支えます。

カキの養殖小屋は夏の今は静まりかえっていますが、その一角に大きなビニールハウスが。中では1人の女性が汗だくで作業をしていました。

(板谷美晴さん)
Q.ここで何を養殖している?
クルマエビを養殖している場所です」

Q.篠島でクルマエビ養殖は盛ん?
「私、一軒だけです」

「海に魚がいない、夫が漁に出られない…」黒潮大蛇行で島の漁業に危機

島で初めてというクルマエビの養殖に挑戦しているのは、板谷美晴さん。1人で始めた理由は、ある危機感だと言います。

(板谷美晴さん)
「海に魚がいない、夫が漁に出られない。危機感を感じた」

(夫・板谷成郎さん)
「それまで漁に出られない状態にならなかった。初めて経験して、周りの島民は他所で働きだした。島からも出ていき始めた。これはヤバいぞという気になった。これが続いたら…その前にどうにかしようと考えたと思う」

危機感を覚えたのは、10年近く前に東海地方沿岸で起きた黒潮の大蛇行。水温の大きな変化で水揚げが大幅に減ったのです。

島の人口はこの9年で2割近く減っており、本土への高校進学を機に島へ戻らない若者も増えています。

愛知県初の“クルマエビ養殖”に1人で取り組み… ふるさと納税返礼品にも

篠島のため、海に左右されない漁業も必要と考えた板谷さん。そんなとき知ったのが「陸上だけで完結できる」クルマエビ養殖でした。養殖が盛んな九州まで出かけてノウハウを教えてもらい、2025年から始めたばかりです。

(板谷美晴さん)
「例年のように忙しく漁に出られていたら、始めていなかったと思う」

この日の作業は、水を抜いて今年の稚エビを育成する環境作り。魚と違って砂に潜る習性のあるクルマエビの養殖の場合、プールの底に砂地を作らなければなりません。気温37℃のハウスの中で重労働です。

(板谷美晴さん)「お!いました!いました!」
(スタッフ)「クルマエビは砂の中にいるんですね」

クルマエビ養殖は、愛知県でも初の試み。2025年、南知多町のふるさと納税返礼品として全国に出荷されました。

(板谷美晴さん)
「私の育てたクルマエビがいろんな土地に行って、篠島の名前も一緒に知ってもらえたら」

天然より殻が柔らかい養殖もの 料理人も太鼓判「頭から食べられる、うまい」

島の漁業に危機感を覚え始まったクルマエビ養殖は、着実に前進しています。エビフライで有名な、「まるは食堂」の料理人に聞くと。

(まるは食堂 料理人 相川良平さん)
「養殖の方が天然に比べて殻が柔らかい。焼いた時にバリバリ食べやすい。ミソが1番うまいですからね、頭から食べてもらえればうまいですよ」

板谷さんが養殖する「おとめのクルマエビ」は、殻が柔らかく串焼きで頭から丸ごと食べられるため、うまみを最大限に味わえるとのこと。

(まるは食堂 料理人 相川良平さん)
「おいしいです!あまい!殻のまま食べられますね、それが養殖のいいところ。天然はもっと殻が硬く感じます。篠島の名物になるんじゃないですか?新しくブランドとして売っていけば… 愛知県としてもクルマエビは県魚だから、クルマエビで愛知県が盛り上がれば1番いいと思います」

まだ板谷さん1人だけの挑戦ですが、軌道に乗れば地元漁業の新たな柱になるかもしれません。

若手漁師は「大アサリ」の養殖に挑戦

そして、島内では別の取り組みも。

(板谷美晴さん)
Q.連れてきてもらった場所は何ですか?
「大アサリの養殖試験場です。若い子たちが頑張ってくれています」

やってきたのは海沿いの大きな倉庫。中では、若手の漁師たちが作業をしています。

(篠島漁業協同組合 青年部 部長 石橋諒さん)
「大アサリの養殖試験。ゆくゆくはそれを養殖業にできたらなと」

漁協の青年部が取り組んでいるのは、「大アサリの養殖試験」。作っていたのは、養殖の漁礁に使う専用のコンクリートです。通常のコンクリートではなく、島で大量に出るカキ殻を砕いて混ぜることで、海藻の胞子が着生しやすくなるといいます。

これを海にいくつも沈めると周りに海藻が育ち、そこへ大アサリの稚貝をまくと大きく育つ期待が。

「しらす漁一本じゃダメ」純篠島産のブランドを

これに取り組む若手漁師の間にも、2025年まで続いた黒潮大蛇行で抱いた「危機感」が。

(篠島漁業協同組合 青年部 部長 石橋諒さん)
「若い漁師たちが段々やっていけなくなって、島から出て行くとか人口流出が起こって、このまましらす漁一本じゃダメだなと。他にも何かできる生業があったらなと。減っていく資源を増やして、なおかつブランド化したい。純篠島産のブランドをつくりたかった」

クルマエビと同じく、海の環境に左右されない漁業を現役の漁師も模索しています。

(篠島漁業協同組合 青年部 部長 石橋諒さん)
「どこかから稚貝を手に入れるのではなく、篠島で稚貝を手に入れてそれを育てて放流したり、ゆくゆくは販売できたりとか」

大手ゼネコンと共同研究 “国産アサリ”増やす画期的な養殖技術「実現したら日本初」

大手ゼネコン大林組と共同で漁協が進めている、このプロジェクト。

画期的なのは、ネットに砂利を入れた土嚢のようなモノ。砂利にはアサリの養分となる特別な成分が付着していて、これを海中に沈めておくと自然に中で天然の稚貝が育つというのです。

実際、すでに稚貝が生まれていました。

(篠島漁業協同組合 青年部 部長 石橋諒さん)
「これが大アサリの稚貝。稚貝回収袋の中で徐々に大きくなる」

それが今年の春、初めて成果が見えたというこの養殖試験。国産アサリが減り続けている中、画期的な成果でもあるのです。

(篠島漁業協同組合 青年部 部長 石橋諒さん)
「画期的だと思います。実現したら日本初だと思います」

海に寄り添って生きる離島の取り組み。そこには、AIやハイテクとは無縁の人間の懸命な営みがあります。