散らばる農地をどう繋ぐ? 「集積」と「集約」で挑む農地改革【徳島】
農家の高齢化や担い手不足が進む中、限られた担い手で農地をどう守るかが課題となっています。
その解決策の一つとして注目されているのが、農地の「集積」と「集約」です。
農業の効率化に向けた、先進的な取り組みを取材しました。
阿南市那賀川町、稲作が盛んな地域です。
農業を営む大嶽ひとみさんに案内してもらったのは、自身が管理している田んぼの一つです。
(清流ファーム・大嶽 ひとみ さん)
「植えるのが遅かったので、稲が青いところが私が作っている田んぼ」
「結構いろいろなところに散らばっているように見えますね」
(清流ファーム・大嶽 ひとみ さん)
「ほぼ点在している」
稲が青く見えるところが、大嶽さんの田んぼです。
見えている範囲だけでも、ほかの田んぼを挟んで8か所に点在しています。
田植えや稲刈りのたびに農業機械を移動し、水の管理もそれぞれの田んぼで行っています。
(記者)
「大変ですか?」
(清流ファーム・大嶽 ひとみ さん)
「水を入れるにしても、圃場が離れているので時間がすごくかかる。用水から水を入れるのに」
この地区では、水路を手作業でせき止めながら、田んぼ一枚一枚に水を入れていきます。
離れた田んぼを何度も見て回る必要があり、管理が行き届かなければ雑草が生える原因にもなります。
さらに・・・。
(記者)
「道路が狭いですけど…」
(清流ファーム・大嶽 ひとみ さん)
「大きい機械が入らなくて田植え機も幅ぎりぎりでした、軽トラも通るのがやっとっていう感じ」
「できれば集約化して、大区画化したいという希望はあります」
こうした効率の悪い農作業を解消するため、現在、国によって進められているのが、農地の「集積」と「集約」です。
農地の「集積」とは、耕せなくなった土地を農業を続けていく意欲のある担い手に集める取り組み。
耕作放棄地の増加を防ぐ狙いもあります。
一方、農地の「集約」は、1人の担い手が耕す農地を、交換などによってできるだけ隣り合うようにまとめることです。
担い手が減る中、ただ農地を引き継ぐだけではなく、効率よく耕せる形に変えていくことが求められています。
では、農地がまとまると、どれほど違うのでしょうか。
大嶽さんが案内してくれたもう一つの田んぼがあるのが、阿南市那賀川町の芳崎地区です。
区画が整えられた、大きな四角い田んぼが広がっています。
(記者)
「ここが大嶽さんの田んぼですか?」
(清流ファーム・大嶽 ひとみ さん)
「はい、そうです」
(記者)
「広いですね」
(清流ファーム・大嶽 ひとみ さん)
「ここが、一番広いところです」
(記者)
「これだけ広いと耕しやすかったりは?」
(清流ファーム・大嶽 ひとみ さん)
「断然耕しやすい」
以前はこの地区でも、離れた田んぼを行き来しながら作業していた大嶽さん。
しかし、農地の借り受けと圃場整備を進めた結果、管理する農地は大きく2か所にまとまりました。
田んぼ1枚あたりの広さは、最大でおよそ12倍に。
大型の農業機械も使えるようになり、作業効率も飛躍的にアップしました。
(清流ファーム・大嶽 ひとみ さん)
「機械が大型化できたので、1枚当たりの刈り取りの時間も短縮できたし、田んぼが1枚になることで効率よくなっています」
「またいで、またいでしなくてもいいし、収入面でいうと、よかったと思います」
「ごはん食べていけるだけ、生活できているんで」
農道はすれ違いができるほど広く整備されたほか、水位センサーによる自動給水システムが導入され、水の管理の負担も軽減されています。
(清流ファーム・大嶽 ひとみ さん)
「圃場整備できているところに関しては、続けてやっていけそうな気持はある」
芳崎地区では2018年度、国の制度を活用した圃場整備に着手しました。
「80%の集約化」と「20%以上の収益向上」を条件に、所有者の負担なしで整備できる制度です。
こちらは、整備前の地図です。
約50ヘクタールの農地を3つの農業法人と、74戸の個人農家が耕していました。
その農地を農業法人など、6つの経営体へ「集積」。
併せて農地を担い手ごとにできるだけ近くにまとめる「集約」も進め、1戸あたりの平均経営規模を0.65ヘクタールから8.2ヘクタールとする計画です。
その結果、整備後には、1枚あたりの面積が大きく増えました。
(農林水産部生産基盤課・若山健一 課長)
「担い手に農地を集積・集約して持続的に農業をしてもらうということが一番の目的」
一方で、農地の集約を進めていく上では大きな課題もあります。
(農林水産部生産基盤課・若山健一 課長)
「農地を持っている方の調整が、一番の課題だと思っています」
「貸してもらうということで、そこの同意をとるのが難しい、先祖代々守ってきている土地というのもあると思う」
芳崎地区で、この難しい調整役を担ったのが、土地改良区の仁木光さんです。
(芳崎土地改良区・仁木光 理事長)
「組合員さんがみんな高齢化してしまって、農業が出来なくなった。そういうことでこの事業をやらなくちゃと」
先祖代々受け継いできた土地をどうするのか。
所有者によって、思いはそれぞれです。
仁木さんは「貸す側」「借りる側」双方の声に耳を傾けながら、丁寧な対話を重ねてきました。
(芳崎土地改良区・仁木光 理事長)
「一番苦労したのは換地事業、あっちにある田んぼをこっちに持ってくるとか」
(記者)
「(この光景を)どう思いますか?」
(芳崎土地改良区・仁木光 理事長)
「よくやったなと思います」
「担い手さんにも十分活用してもらって、経営の強化につなげてほしいと思う」
誰がどの農地を持ち、どんな思いを抱いているのか。
地域を良く知る人物が間に入ったからこそ、話し合いは前へ進みました。
担い手が減少する中で日本の農地を次世代へつなぐ「集積」と「集約」。
その成功のカギは、地域が一体となって将来を描き、合意を積み重ねていくことにあります。
