マリー・アントワネットは日本の漆器を愛用?…断頭台の露と消えても守られた名品、輪島塗の老舗が再現
能登半島地震で被災した輪島塗の老舗「輪島屋善仁(ぜんに)」(石川県輪島市)が、フランス王妃マリー・アントワネット(1755〜93年)愛用の漆器を再現した。
金粉で山河や建物の精細な模様を施した「蒔絵(まきえ)」の小箱で、同社の中室耕二郎社長(53)は「歴史上有名な王妃にも愛された日本の漆の技術を知ってもらえたら」と話す。
アントワネットは日本の漆器を収集し、住まいのベルサイユ宮殿に飾ったことで知られている。横浜美術館(横浜市)の長谷川珠緒主任学芸員は「アントワネットは手元に置いて鑑賞できる小物を好んだようだ。漆器に繊細な草花などを施す蒔絵も彼女の感性に合ったのだろう」と分析する。
フランス革命のさなかに断頭台で処刑されたアントワネットだが、ダイヤや真珠などの宝飾品とともに、愛用の漆器も安全な場所に移していた。その一部がフランスや英国に現存する。
同社が再現したのはベルサイユ宮殿美術館が所蔵する「楼閣山水蒔絵(ろうかくさんすいまきえ) 扇面形(せんめんがた) 脚付飾箱(あしつきかざりばこ)」。江戸時代の京都などで作られた作品が欧州に渡ったとみられる。
1813年創業の同社では、椀(わん)皿などの輪島塗の製造販売と並行し、職人の技術力向上を目指した名品の再現に挑んでいる。これまで日本の博物館にある国宝などを再現してきたが、「日本の漆文化を世界に発信するためにも、海外で大切にされてきた名品から学ぼう」(中室社長)との思いからアントワネットの愛用品に注目したという。
同社は2024年元日の地震で店舗や工房に甚大な被害が出たが、店の展示スペースを作業場に替えるなどして経営を続ける。今回の再現は、約1年半かけて行われた。蒔絵師2人は川沿いの急峻(きゅうしゅん)な山に立つ建物などの模様を手がけた。うち一人は地震後に入社した20歳代の若手で、中室社長は「日本が誇る漆芸技術の継承にもつながる」と手応えを語る。

横浜美術館で開催中の「マリー・アントワネット・スタイル」展(読売新聞社など主催)では、今回の小箱とは異なるものの、アントワネット旧蔵と伝わる「香箪笥(こうだんす)」など貴重な漆器が展示されている。同社が再現した小箱は、館内ショップで展示販売されている。
