長期金利、「利上げ観測」「財政悪化」で近く節目の3%に?…IT大手の「巨額社債」発行で米欧でも上昇
日米欧で長期金利が上昇傾向にある。
中央銀行の利上げや財政悪化への警戒感に加え、米IT大手による巨額投資をまかなうための社債発行が増え、国債の需要が低下しているとの見方がある。長期金利の上昇は、住宅ローンや企業の借入金の負担を増やし、景気の下押しにもつながりかねない。(榎田翔太、ワシントン 坂本幸信)
30年ぶり水準
東京債券市場で、長期金利の代表的な指標となる新発10年物国債の流通利回りは18日に一時、2・945%まで上昇した。19日も終値で前日比0・040%低い2・895%となり、約30年ぶりの高水準が連日続いている。長期金利は、国債が売られて価格が下がれば、上昇する関係にある。市場には今後も売りが進み、近く節目の3%に達するとの見方もある。
日本の長期金利の上昇理由は主に二つある。一つは日本銀行の利上げ観測だ。市場ではこれまで、日銀の利上げが後手に回り、物価上昇が進むことへの警戒感から長期金利が上昇基調にあった。現在は、日銀が9月の金融政策決定会合で利上げを決定しても、その後も短い期間で利上げを続けるのではないかとの見方が出ている。政策金利の上昇を見据え、投資家は先手を打って国債を手放す方向に動いている。
明治安田総合研究所の小玉祐一氏は「7月の決定会合で日銀の植田和男総裁が今後の利上げに前向きな『タカ派』発言をしたことや、日米通貨当局が円買いの協調介入を行ったことで利上げ観測が高まった」と分析する。
もう一つは財政悪化への懸念だ。食料品を対象とする消費税減税の実施方針に加え、2027年度予算は概算要求で要求額の上限が撤廃され、予算規模が膨らむとの警戒が広がる。投資家は債券の償還を前提に取引しており、国の財政に対する不信感が国債の売りを呼んでいる状況だ。
各国で連動
長期金利は、米国のイラン攻撃を機に上昇基調となり、海外も高水準で推移している。米国では18日、10年債利回りが一時4・74%台と1年7か月ぶりの高さとなった。30年債の利回りも足元で約19年ぶりの高水準を記録。中東の戦闘長期化で、米国債増発の観測が広がったことが一因だ。
データセンター建設などに巨費を投じるIT大手の資金調達に、投資家が流れているとの見方もある。ロイター通信によると、グーグル親会社アルファベットなど「ハイパースケーラー」と呼ばれる巨大企業の26年の社債発行額は既に約2200億ドル(約35兆円)と25年通年の2倍以上となった。急拡大する社債市場に資金が向かい、国債の需要が減っている可能性がある。
ただ、米財務省は19日、10年以上の国債の買い戻し額の上限を2倍以上に拡大すると発表した。長期金利の高まりに対応したとみられる。30年債の利回りは発表前の水準より一時、0・09%程度低い5・18%台まで低下した。
欧州でも原油高に伴う物価上昇の懸念に、防衛費増額や政府債務拡大といった各国の財政不安が重なる。10年債の利回りはフランスで19日に4・1%台と18年ぶり、ドイツは3・2%台後半と15年ぶりの高水準をつけた。英国も5%台で高止まりする。
各国の長期金利は連動する傾向にある。投資家は、より有利な市場にお金を回すため、代わりに国債が売られた市場の金利も上がるからだ。このため、海外の金利上昇は日本の金利上昇につながりやすい。
金利上昇は預金者にはプラスだが、借り入れる側にはマイナスに働く。SMBC日興証券の丸山凜途氏は、日本の長期金利が3%を超える可能性は「十分に考えられる」とした上で、「今後も債券売りと円売りが同時に進めば、輸入物価の上昇と利払い負担の増加で家計や中小企業が影響を受けかねない」と指摘する。
