記事のポイント
消費者の信頼向上と配送体制の改善を背景に、TikTok Shopでは寝具やプール、サウナなど、大型かつ高単価商品の売上が伸びている。
購入検討に時間を要する商品では、使用イメージを伝えるクリエイターコンテンツが購買決定に大きな役割を果たしている。
一方、高額商品のサンプリングや提携クリエイターの選定、配送期限、客単価の低さなど、ブランドが投資を拡大するうえでの課題も残る。


消費者がTikTok Shop上で、より高額で検討度の高い購入をすることの抵抗感がなくなるにつれ、ブランド各社は大型で高単価の商品をどのように陳列し、マーケティングし、配送するかを再考している。

掛け布団やLEDフェイスマスク、さらには地上設置型プールといった商品を、TikTok Shopを通じて購入する消費者が増えている。物流の強化と、プラットフォームの信頼性に対する消費者の信頼の高まりに後押しされたこの変化は、ソーシャルコマースにおける大きな進化を示している。

複数のホームウエアブランドがTikTok Shop上で成長していることは、このチャネルが、ファッション、ビューティー、ウェルネスと結びつくことの多かった衝動買い向けのプラットフォーム以上の存在になりつつあることを示している。

とはいえ、大手ブランドがプラットフォームに参入するなかで、物流面には改善の余地が残っている。

商品を発見する場から、購入を完結させる場へ



D2Cの睡眠ブランドであるメロウスリープ(Mellow Sleep)は、ブランドを立ち上げてからわずか数カ月後の2025年秋、TikTok Shopに出店した。

同ブランドは、小売価格50ドル(約7500円)のベストセラー「クラウドアライン(CloudAlign)」ピローや、85ドル(約1万2750円)から販売する「マシュメロウ(MarshMellow)」掛け布団といった商品を扱っている。

創業者のチャド・ケラー氏は「我々は『TikTokブランド』になることをめざしてはじめたわけではない」と述べた。ケラー氏は当初、TikTok Shopを「本物のクリエイターコンテンツとコミュニティの信頼を通じて消費者ブランドを築く機会」と捉えていた。

ケラー氏は、パクサン(Pacsun)やスキムス(Skims)といった大手ブランドのTikTok Shopへの参入が、マーケットプレイスの信頼性向上に寄与していると語った。

同社によると、出店からおよそ1年で、メロウスリープはオーガニックなクリエイターから5万件を超えるレビューを獲得し、5つ星の顧客レビューも2万件以上を集めたという。

同ブランドの「クラウドアライン」ピローと「マシュメロウ」掛け布団は、出店以来、それぞれのTikTok Shopカテゴリーでトップの座を維持している。

「クリエイターが信じ、消費者が好意的に反応してくれる優れた商品があれば、チャンネルは自然と運営されていくものだ」とケラー氏は述べた。

ケラー氏は、同ブランドの熱心なTikTokクリエイターのひとりを例に挙げた。このクリエイターは過去10カ月間で、月間8万ドル(約1200万円)のGMV(流通取引総額)を生み出していた状態から、月間150万ドル(約2億2500万円)にまで成長したという。

メロウスリープがTikTok Shopに出店して以降、かさばる商品や高単価の商品を扱うブランドが成功しやすくなる改善があった、とケラー氏は語る。

たとえば、プラットフォームはメロウスリープのようなアーリーアダプターのブランドに対し、より直接的な担当者のサポートを提供しているという。これはメタ(Meta)では得ることが難しくなっていたものだ。

さらにケラー氏は、Fulfilled by TikTok(FBT)はまだ黎明期にあるため、TikTokが物流を改善していくなかで、その体験は依然としてやや不安定だと付け加えた。

国内の注文を2営業日以内に発送することを求めるTikTokの配送期限は、かさばる商品を出荷する小規模ブランドにとって、必ずしも現実的ではないと同氏は述べた。そのため、同社は依然として一部の注文を自社で、ほかの注文をFBTを通じて、顧客の所在地に応じて処理している。

「私はまた、とくにブランドがFBTをより深く活用していくなかで、TikTok Shop内の手数料がより合理化されることも望んでいる。だが、TikTokはブランドと協力し、実際にフィードバックを取り入れて物事を変えていく姿勢があるようだ」とケラー氏は述べた。

配送改善が大型・高単価商品の追い風に



TikTok上のマルチブランドセラー兼フルフィルメントパートナーであるスプリーテイル(Spreetail)も、この1年でTikTok Shopの売上を大きく伸ばしてきた。同社は、アウトドア家具や芝生・園芸用品といったホームカテゴリーを専門とするブランドと協業している。

スプリーテイルの最高マーケティング責任者(CMO)であるアミット・ドデジャ氏は、この成長の一因を、消費者がTikTok Shopの立ち上げ以降、単なる発見のためのチャネルとしてではなく、TikTok Shopを通じて購入することに抵抗を感じなくなってきたことにあるとした。

「マーケットプレイスが時間をかけて成熟してきたことを踏まえ、消費者はTikTok Shopをはるかに信頼できるものだと感じている。初期の頃は、常に多少の懐疑心があるものだ」と同氏は述べた。

ドデジャ氏によると、スプリーテイルが協業するブランドのなかで、地上設置型プールやスパの売上は前年比125%成長しており、これはほかのマーケットプレイスの5倍の成長を示しているという。プールはおおよそ150ドル(約2万2500円)から、サウナは約2000ドル(約30万円)から販売されている。

「アウトドア家具や芝生・園芸用品といった、かさばり配送負荷の高いほかのカテゴリーも、3桁の前年比成長を記録している」とドデジャ氏は述べた。その伸びはそれぞれ275%、およそ150%だという。

「我々の価格帯は、おそらくTikTok Shopの平均的な価格帯の4〜5倍高いが、それでも引き続き好調だ」とドデジャ氏は付け加えた。

ドデジャ氏は、スプリーテイルがプラットフォーム上で成長するのを後押ししているもうひとつの要素として、ユーザーが購入を決める際に、クリエイターコンテンツがかつてないほど大きな役割を果たしていることを挙げた。

「TikTokの視覚的な性質は、実際、多くの消費者がこれらの商品がどのようなものかを理解するのにおおいに役立っている」と同氏は述べた。それはとくに、家具やインテリア雑貨、サウナやプールといった裏庭向けの商品など、より入念なリサーチを必要とするカテゴリーに当てはまる。

ドデジャ氏によると、スプリーテイルは物流分野での経験があるため、現在TikTok Shop上で自社の注文を処理しているという。

「この1年で我々が目にした最大の変化は、配送スピードだ」とドデジャ氏は述べた。2026年の初め、同社はTikTokと協力して配送期限を5日から2日へと短縮した。

「我々にとって次のパズルのピースは、事業を大規模に展開し、TikTok上で複数のブランドを管理できるようになることだ」とドデジャ氏は述べた。

高額商品ほど問われる提携先の見極め



そのためにスプリーテイルは、適切なクリエイターとより深い関係を築き、効果的なコンテンツブリーフを提供し、TikTok Shopを価値あるマーケットプレイスにするための適切なコミッション率とサンプリング戦略を見極めることに注力している。

実際、TikTokのユーザーがプラットフォーム上で実際に購入を完結させることをいとわなくなっているという証拠は、ますます増えている。

フルサービスのAmazon代理店であるエンビジョン・ホライズンズ(Envision Horizons)は最近、1030人あまりを対象とした調査を委託し、そのうち51%がTikTok Shopでラグジュアリー商品(100ドル〈約1万5000円〉以上の商品と定義)を購入したことがあると回答したことを明らかにした。

エンビジョン・ホライズンズの創業者兼CEOであるローラ・マイヤー氏は、TikTok Shopに出店すべきかどうかについて、2026年はクライアントからより多くの質問を受けるようになったと述べた。

「非常に安価な商品を扱っている場合でも、非常に高価な商品を扱っている場合でも、プロダクトシーディング(商品を無償提供して発信を促す手法)は非常に難しい」と同氏は述べた。

マイヤー氏によると、たとえば500ドル(約7万5000円)のLED美顔器を販売するブランドは、「そのパートナーやクリエイターが実際にその商品について投稿してくれるかどうかを見極めるうえで、非常に慎重に選ばなければならない」という。

同氏は、アフィリエイトのネットワークを構築することは、ベンチャーキャピタルがスタートアップへの投資にアプローチするやり方に似ていると述べた。つまり、つまり、彼らのポートフォリオ(この場合はアフィリエイト)のうち、5〜10%だけが「ヒット商品」を生み出す可能性があるという意味だ。

したがって、より高額な商品を販売するブランドは、提携先を選ぶ際に一層注意を払う必要がある、とマイヤー氏は助言する。

エンビジョン・ホライズンズは、特定のカテゴリーでブランドが好むクリエイターに関する過去のデータを保有している。同氏はまた、そのクリエイターが過去にどのようなタイプのブランドと組んできたか、また繰り返し組んでいるパートナーがいるかといった要素を確認するよう、ブランドに助言している。

だが、ブランドがTikTok Shopにさらに投資する前に、その多くは依然としてプラットフォームからのさらなる売上を求めている。メロウスリープにとって、TikTok Shopは依然として全体の売上のごく一部を占めるにすぎない。

同ブランドのD2CのWebサイトと比較すると、TikTok Shopでは通常、人々はピローを1つだけ購入するのに対し、D2Cの顧客は一度に複数の商品を注文する、とケラー氏は述べた。

「それは、TikTok Shopが依然として主に発見のためのマーケットプレイスであることを物語っている。それは、特定の商品を買うためにわざわざ訪れるAmazonとは異なる」と同氏は述べた。

なお、エグゼクティブエディターのアンナ・ヘンゼルが取材に協力した。

[原文:TikTok Shop is increasingly attracting brands selling high-ticket items]

Gabriela Barkho(翻訳、編集:藏西隆介)