「どれだけ待たせれば気がすむんだ!」病院で怒鳴る高齢男性を黙らせた“小学生の一言”。「ドラマのワンシーンみたいでした」
今回取材に応じてくれたのは、比較的大きな病院の事務スタッフ。長時間待たされた老人が激昂したというのですが、その後思いもよらぬ展開があったそうです。
◆病院スタッフも頭を抱えるリアルな「人間模様」
「こちらも慣れてきたとはいえ、正直、気が抜けない場面は多いですね。当然、患者さんの中には深刻な症状の人もいれば、そうでない人もいます。とくにうちの病院はかかりつけ医からの紹介で来院する人も多く、そういう意味で言えば重篤な患者さんも多く自然とシリアスなムードになります」
そんな日々の中で角田さんが久々に「感動した」と振り返るエピソードが、このたび取材で明らかになりました。
◆静まりかえった待合室に響いた老人の怒号
時刻はもうすぐ正午になろうかという頃のことだったといいます。朝一番から訪れた患者たちも診察を終えて帰路につき始め、広い待合室のベンチも次第にまばらになってきたタイミングでした。
そのとき、一番先頭のベンチに座っていた老夫婦が、何やら小声で言い争っている様子だったそうです。どうやら夫が診察待ちで、妻が付き添っているようでした。はっきりとは聞き取れなかったものの、「一番に来たのになぜまだ呼ばれんのだ」と、自分の順番がいつまでも回ってこないことに苛立っている様子でした。妻が必死になだめようとしているのも見えたといいます。
そして、次の瞬間「どれだけ待たせれば気がすむんだ!」と、周囲にいた人たちが一斉に顔を上げるほどの大声が待合室に響き渡ったといいます。妻が夫の服を引っ張って止めようとするものの、怒りに火がついた夫は担当医の診察室へと向かおうとしていたそうです。
「あの時は私もかなり驚きましたね。高齢者だとお見受けしたのですが、その声量はかなり大きなもので、1階フロアに響き渡っていました。待合室の患者さんはかなり減りつつありましたが、皆一斉に会話を止めその老人の方に視線を向けていました」
◆幼い男児が放った言葉で我に帰った老人
あまりの怒号に一瞬静まり返った待合室でしたが、そのとき思わぬ「助っ人」が現れました。
その激昂した老人男性が立ち上がろうとしたまさにそのタイミングで、一人の幼い男児が駆け寄ってきたのです。幼稚園児ほどにも見えたその男の子は、老人の顔をまっすぐ見上げながら、こう言ったといいます。
「おじいちゃん、大きな声出したらだめだよ。静かに待ってください!」
無邪気な、それでいて真剣な表情で放たれた一言でした。すぐに母親らしき女性が現れ「こっちへきなさい。帰るわよ」と、男児の手を引っ張り連れ戻そうとしたそうです。しかし意外にも、怒り心頭だったはずのその老人は突然の言葉でふと我に返ったようで、男児のほうへ視線を落とし、一瞬ため息をついてから、やがて再びゆっくりとベンチへ腰を下ろしたそうです。
◆まるでドラマのような光景がそこにはあった
小さな男の子が必死に話しかけている光景を周囲の人々が見守る中、どこからともなく手を叩く音が聞こえてきたと言います。やがて、さきほどまで張り付いていた緊張が一気にほぐれ、老人も少し気まずい表情をしながら落ち着きを取り戻したそうです。
「まるでドラマのワンシーンのようでした。看護師さんも受付スタッフさんもみんな男の子に暖かい拍手を送っていましたね。同時に、我に返った老人にもあの拍手は向いていたと思います。私もこの病院に来て長くたちますが、あんな光景を見たのは初めてでした」
子どもの純粋さは、大人の怒りや意地をあっさりと超えてしまうことがあるようです。「あの光景は今でも忘れられないですね」と、角田さんは穏やかな笑みを浮かべながら語ってくれました。
病院という緊張感のある場所だからこそ、その無邪気な一言がより深く心に刺さったのかもしれません。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
