女性が「付き合いたくない」と瞬時に判断…海外研究が暴いた「モテない男性」が飼っている"意外なペット"
※本稿は、越智啓太『恋愛の科学 交際戦略編』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。

■ペットが一緒に写ったプロフ写真の効果
人々はプロフィール(プロフ)写真からその人物のさまざまな特徴を読み取ろうとします。セルフィー(自撮り)かポートレート(他撮り)かで違いが生じるなら、もっと影響があるものもあるでしょう。そのひとつは、SNSなどに載せている写真に一緒に写っているものの影響です。
ここでは、その中でも比較的よくあるペットの問題について検討してみましょう。つまり、プロフ写真に一緒にイヌが写っている場合とネコが写っている場合はどちらがモテるか、どちらが好印象か、それはなぜかという問題です。
これも、おそらく人々の印象に意識的というよりは無意識的に影響を及ぼす周辺ルートの要因であるといえるでしょう。
■Tinderの2400件のプロフデータを分析
ところで、マッチングアプリのプロフ写真にペットはどの程度登場しているのでしょうか。この問題は、デュルンベルガーとシュプリンガーが検討しています(※1)。
彼らはオーストリアのウィーンと東京で、マッチングアプリのTinderにアップされているプロフ写真を分析しました(Tinderには最大9枚のプロフ写真を掲載できます)。
そして、プロフィール写真にどのくらい動物が写っているのか、どんな動物なのか、誰がより動物を載せやすいのかについて検討しました。
合計2400件のプロフィールを構造化されたチェックリストで観察・コード化して分析したところ、動物を写した写真があるプロフィールは全体の約16%程度で、その内訳は下記のようになりました。

■イヌとネコ、どちらを飼うほうがモテるか
では、マッチングアプリにイヌと一緒の写真を載せたりプロフィールに「イヌを飼っている」と書くのと、ネコと一緒の写真を載せたり「ネコを飼っている」というのでは、どちらがモテるのでしょう。
この点を直接検討したのは、グレイらのグループです(※2)。彼らは、マッチングアプリMatch.comにペット関係についての情報を記載した独身の人々に、ランダムに調査協力依頼を送ってアンケートに回答してもらいました。
分析対象になった参加者は1210人でした。各質問に対して「イエス」と肯定的な回答をした人の割合を下記に示します。

一般に女性のほうが男性よりもペット情報に敏感だということや、ペットがある程度相手の魅力を増加させること、飼っているペットによって相手のパーソナリティを推測する傾向があることなどがわかりましたが、それ以上に重要なのはイヌとネコの違いです。
イヌ好きの人との恋愛については、男女ともほとんどの人がうまくいくと答えているのに対して、ネコ好きの人とうまくいくと答えている人は大幅に少なくなりました。これはネコ好きの人よりもイヌ好きの人のほうがモテることを意味しています。
とくに女性にこの傾向が顕著であったことから「ネコ好きの男性」は、この条件の中ではもっともモテないということになりました。
■ネコ飼い男性にはあまりに厳しい実験結果
ネコと一緒の写真は本当にダメなのでしょうか。この点を研究したのは、コーガンとヴォルシェです(※3)。彼女らは2人の人物A(20歳)とB(21歳)に協力をお願いして、次のようにプロフ用の各2枚の写真を撮りました。
1枚は単独で、もう1枚はネコと一緒に写っているものです。これらの写真について、マッチングアプリでこの人物が現れた場合、右スワイプ(候補として残す)するか左スワイプする(候補から外す)かについて回答してもらいました。

この判断はカジュアルな交際条件 (短期的配偶方略)と長期間の交際を求める条件(長期的配方略)で行いました。ただ右か左かでなく、5段階評定をしてもらいました(1=ムリ、2=かもね、3=たぶん、4=いいよ、5=ぜひぜひ)。
■ネコによって女性的で神経質だと評価された
さらに、これら人物の印象とパーソナリティの推定も行ってもらいました。実験はウェブ上で行われ、人物Aの評定には708人、人物Bの評定には680人の18歳から24歳の女性が参加しました。実験の結果を下記に示します。

予想どおり、ネコを飼うことによって右スワイプされる可能性が減少することがわかりました。 これは短期的なカジュアルな交際の場合でも、長期的な交際を望む場合でも同様の結果になりました。
では、なぜネコはダメなのでしょうか。コーガンらがこれらの写真についてのパーソナリティ評定について分析してみたところ、ネコと一緒に写真を撮ることによって、外向性が低く、神経質傾向が高く評定されることがわかりました。
また、性役割尺度で測定した女性性が高くなり、男性性が低くなることもわかりました。これは、ネコのイメージが男性に影響し、男性がより女性的で神経質だと評価された可能性が高いからだと考えられました。
同様の結果はミッチェルとエリスによっても得られています(※4)。この実験では男性の動画が評定対象になりましたが、彼がイヌ好きであると明示されている場合、より男性的であり、ネコ好きであると明示されている場合、より女性的であると認知されることが示されています。
■イヌは男性の「甲斐性」を表す
これらの研究は、ネコ好きよりもイヌ好きが女性にモテるのは、ネコ好きは「女々しい」からだという結論ですが、本当にそうでしょうか。最近の研究では少し違った考えが出てきています。
それは、ネコがどちらかというと自由気ままに勝手に生きているのに対して、イヌは飼い主にしっかりとケアされて生きているというイメージと関連しています。

ここから、イヌ好きである、あるいはイヌを飼っているということは、「ある程度の資源を投資して生き物をケアする能力や意欲がある」ということをアピールする手段に(おそらく無意識的ですが)なっているのではないかという考えです。
いままで挙げた研究の「らしさ」というのは、どちらかといえば短期的配偶方略と関係しているものですが、このケア能力のアピールというのはむしろ長期的配偶方略と関係しています。
■イヌで「真剣交際」をアピールできる
もしイヌを飼うことが長期的配偶方略的に魅力を高めるものだとすれば、ワンナイトラブ的な出会いなどの短期的配偶方略をとる場合には、イヌを飼っていることを主張するのはあまり意味がありません。

長期的なケアの能力や資源などは関係ないからです。一方で結婚や長期交際などを考える場合、イヌを飼っていることをアピールすることは、むしろ重要になります。
とすると、マッチングアプリにおけるイヌの写真は、カジュアルな一時的な出会いを求める場合よりも、真剣な交際を望む場合のほうが多くなるのではないか、と考えられます。
そこで、ジンクらのグループは、カナダのマッチングアプリを利用して調査を行いました(※5)。このアプリには、マッチングした相手とどのような関係を築きたいかについてチェックする項目がありました。
これをもとに、短期的な関係を目的にしている男女と長期的な関係を目的にしている男女をピックアップしました。
■女性は「イヌ」の写真で男性を品定め
しかし、残念なことに(そしてこれは心理学的にも十分予測できることなのですが)、短期的な関係を望んでいる女性はほとんどいなかったので、収集できたのは短期的/長期的な関係を求めている男性と長期的な関係を求めている女性だけで、それぞれ225人でした(対象はカナダ全土でなく、ある特定の州に居住する者だけでした)。
彼らは、これらのプロフ写真に子どもが写っているか、イヌが写っているか、その他のペットが写っているかを調べました。結果を下記に示します。

まず、男性のプロフ写真を見てみると、短期的配偶方略者に比べて長期的配側方略者のほうが、イヌが多く写っていることがわかりました。その他のペット(ネコも含めて)は長期と短期では差がありませんでした。
次に男性と女性の長期的配方略者を比較してみました。女性は、ペットよりも子どもと一緒に写真を撮ることが多いことがわかりました。
これらの結果は、女性がマッチングアプリで男性を品定めする場合、イヌの写真があるかどうかで彼らの真意(一時的につきあうだけの関係か、真剣に交際したいと思っているのか)がある程度推測できるかもしれないということを示しています。
(※1)Dürnberger, C., & Springer, S.(2022). Wanna See My Dog Pic? A Comparative Observational Study of the Presentation of Animals on Online Dating Profiles in Vienna and Tokyo. Animals, 12(3), 230.
(※2)Gray, P. B., Volsche, S. L., Garcia, J. R., & Fisher, H. E.(2015). The roles of pet dogs and cats in human courtship and dating. Anthrozoös, 28(4), 673-683.
(※3)Kogan, L., & Volsche, S.(2020). Not the cat’s meow? The impact of posing with cats on female perceptions of male dateability. Animals, 10(6), 1007.
(※4)Mitchell, R. W., & Ellis, A. L.(2013). Cat person, dog person, gay, or heterosexual: The effect of labels on a man’s perceived masculinity, femininity, and likability. Society & Animals, 21(1), 1-16.
(※5)Zinck, M. J., Weir, L. K., & Fisher, M. L.(2022). Dependents as signals of mate value: Long-term mating strategy predicts displays on online dating profiles for men. Evolutionary Psychological Science, 8(2), 174-188
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越智 啓太(おち・けいた)
犯罪心理学者・法政大学文学部心理学科教授
1965年、神奈川県横浜市生まれ。92年、学習院大学大学院人文科学研究科心理学専攻修了。警視庁科学捜査研究所研究員、東京家政大学文学部助教授(当時)、法政大学文学部准教授を経て2008年より現職。著書に『美人の正体』『犯罪捜査の心理学』、『法と心理学の事典』(共著)ほか多数。
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(犯罪心理学者・法政大学文学部心理学科教授 越智 啓太)
