「ゲートウェイ成田」をアピール(共生バンクグループのHPより)

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近づくXデー

 共生バンクグループが運営・販売を行う一般投資家向けの不動産小口化商品の「みんなで大家さん」。1口100万円単位で出資できるうえ、年利7%以上の高利回りをうたい、約4万人からこれまでに総額およそ2000億円もの資金を集めた。中核となる事業は成田空港に近接した広大な土地に大規模ホテルやショッピングモールなどを建設するというもので、一時は有名なテレビ番組でCMが大量に流れ、「独創的かつ斬新な計画」などともて囃された。が、好事魔多しというべきか、2025年7月からは分配金の支払いが滞るという事態に陥り、ついに「業務の許可取り消し」のXデーが近づいているという。

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 みんなで大家さんをめぐっては、2024年6月に出資者への説明が不十分などの理由で行政処分を受けて以降、計画は暗転して行った。すでに出資者からは返還を求める集団提訴が相次いでいて、税金の滞納による国税当局からの差し押さえも確認されている。さらに先日公表された2026年3月期の決算では、「2881億円もの債務超過」が明らかになったばかりだ。

「ゲートウェイ成田」をアピール(共生バンクグループのHPより)

実績は20年近く

 こうした中、大阪府と東京都がそれぞれ、「みんな大家さん」の運営や商品の販売を行っている共生バンクグループの事業許可を取り消す方針を固めたーーとの情報が聞こえてきた。

 具体的な取り消しの話に入る前に、「みんなで大家さん」のたてつけについて簡単に説明しておこう。共生バンクグループの原点は、1998年に大阪府で設立された都市綜研インベストバンクである。以来、不動産投資、開発を中心に多角的な経営を進めてきた。事業は、ホテルや飲食店の経営の他、忍者を題材としたテーマパーク運営、高級バナナの栽培、販売など多岐にわたる。バンクと称するが、一般向けの銀行業務を行っているわけではなく、投資ファンドだと捉えたほうがいいだろう。

「みんなで大家さん」は、国土交通省と金融庁が所管する不動産特定共同事業法(不特法)に基づいて、運営や販売が行われてきた。共生バンクグループの大阪の関連会社「都市綜研インベストファンド株式会社(ファンド社)」が商品の運用を、東京にある「みんなで大家さん販売株式会社」が販売を担当している。大阪府と東京都がそれぞれの会社に許可を出していて、つまり事業は行政のお墨付きを得た上で行われてきたのである。

 グループは2007年から不特法に基づく事業を続けてきており、実に20年近くの実績があった。それがここにきて許可の取り消しとは、いったいどういうことなのか。

踏み込まざるを得ない

 大阪府の関係者は匿名を条件にこう厳しく指摘する。

「府としては、ファンド社に対して2024年に業務停止処分を行うなど色々な局面で改善を求めてきた。これまでも様々な問題があったと承知しているが、2800億円以上の大幅な債務超過となれば、監督する自治体としては一番重い処分である許可の取り消しということにまで踏み込まざるをえない」

 不動産特定共同事業法では、業者が投資家の財産を長期間預かるという性質上、「財務の健全性が担保されていなければならない」として、債務超過の状態をそもそも認めていない。業者は許可を出している自治体の指導を受けるとともに、年に一度事業報告書を提出しなければならないが、その際は監査法人などがチェックした貸借対照表や損益計算書などを添付する必要がある。つまり事業を継続できる状態にあるかを行政側がチェックする仕組みだ。

 ファンド社は、6月末に設定されていた業務報告書の提出期限になっても理由をつけて応じなかった。何度も督促されたあげく7月末にようやく提出に応じたという経緯がある。

現金化の目途はたっていません

 前出とは別の府関係者によると、担当部署である住宅建築局建築指導室では、ファンド社の財務状況について「異常である」おそれがあるとして、報告書の提出前から独自に調査を進めていた。そして、業務報告書が出されると、すぐに処分などの対応に動けるよう準備していたという。

「すでに大幅な債務超過に陥っているということは、ある程度予想されていました。許可の取り消しにすぐに動けるよう、関係機関と様々な検討を重ねていたのは事実です。成田での大規模プロジェクトをはじめとして、あちこちで事業がストップしており、出資者への分配金が支払えない状態になっています。所有する不動産が複数あるとはいえ、それらの売却も滞っていて現金化の目途はたっていません。行政の立場としては、運営会社として不適格と判断するほかないでしょう」

 一方で、東京都の方はどうか。

“もう全部終わり”にしたい

 都は、商品の販売会社である「みんなで大家さん販売株式会社」について、同様に指導や監督を担ってきた。2024年6月には「顧客への説明が不十分」などとして1か月の業務停止を命じている。今回、許可の取り消しという重い判断に至ったのは、「前回の処分以降も同じような違反を繰り返しており、会社のガバナンスなどが改善されていない」「問題が起きた場合に備えるための、適切な検証の体制や対応策が講じられていない」ことなどを理由にしているという。

 東京都作成の内部資料には、取り消しの処分を行う理由として「投資判断に関して特に重要な事項について確認を尽くしていない」「事業の参加者に誤認を与える書面を交付した」「業務運営態勢の改善は期待できない」などといった極めて厳しい文言が並んでいる。

 都のある幹部は、次のように打ち明けた。

「行政側の監督責任を問われることだけは避けたい。事業の詳細をきちんと把握して指導できていたのかいうと、我々としても不備があったと認めざるをえない点もある。ただ、このまま事業の継続を認めているとそれこそ収拾がつかなくなってしまうから、許可取り消しは致し方ない。行政処分の妥当性をめぐって会社側と訴訟もしているが、この問題は許可取り消しを出した時点で“もう全部終わり”にしたいのが本音だ」

責任を取らせるだけのこと

 政府関係者によると、「みんなで大家さん」に関しては、法律を所管する国交省と金融庁でも情報は共有されており、大阪府や東京都を含めて内々の打ち合せもすでに実施されているという。そこでは以下の2点が確認されたという。

・みんなで大家さんに関係する事業許可を速やかに取り消すこと
・出資者の混乱を避けるために最大限の措置をとること

 もっとも、どこの行政機関も責任回避に走るばかりで、「業者が杜撰だったからこうなった。責任を取らせるだけのこと」(政府関係者)というのが実態なのだという。

 では、許可の取り消しは具体的にどのように行われるのか。

 法律では、行政が許認可を取り消す場合、対象者の弁明を聞く「聴聞」という手続きが定められている。これは、相手に出頭を求めて意見を述べる機会を設け、その内容を吟味したうえで最終的に処分内容を判断するというもので、運転免許の取り消し処分の際にも行われている。大阪府や東京都の関係者によると、すでに聴聞を実施することは決まっていて、具体的にいつにするかなどの最終的な調整段階だという。

事業の継続を主張

 共生バンクグループは、業務報告書を出したあとの7月31日、「事業参加者保護及び事業継続に関する基本報告書」と題する30ページに及ぶ文書を出資者宛てに送った。その中で、「当社は、事業参加者に対する償還及び分配の実現を断念することは考えておりません。この責務を果たすためには、個別の対応に終始するのではなく、当社及びグループ全体の事業基盤を維持・再構築し、将来にわたり資金を創出できる体制を回復することが不可欠であると判断しております」などとして、あくまでも再起を目指すことを表明している。

 成田でのプロジェクトについても、「成田空港の更なる機能強化及び国際競争力向上を背景として進められているものであり、当社グループが保有する土地を活用した大規模開発計画です。現在、関係官署との各種手続を進めながら、事業化に向けた準備を引き続き継続しております。厳しい状況下ではありますが、国内外の提携先との協議を進め、事業再建に必要となる資金調達にも取り組んでおります」と、あくまで事業の継続を主張しているのだ。

くつがえる可能性は極めて低い

 しかし、関係者の話を総合すると、こうした主張を聴聞で述べたとしても、「許可取り消しという処分の方針がくつがえる可能性は極めて低い」「聴聞といっても、あくまでも形式的に行うだけ。債務超過であるのだからもはや処分は確定的だ」との声が上がっており、事業許可の取り消しは既定路線のようだ。

 ただ、ここまで重大な問題に至るまで、なぜ業者側を適切に指導できなかったのか――という点は解消されていない。「そもそも、それまで問題を指摘していなかったのに、世間で徐々に騒がれるようになった2年前に慌てて行政処分を出したという印象はぬぐえない。大阪府や東京都はもちろん、国交省や金融庁なども含めて責任を押し付け合っている状態だろう」(不動産関係者)

 いかがわしい投資の類と見る向きもあれば「夢のプロジェクト」と持ち上げる識者もおり、国や自治体、経済界が手を携えるようにして推進されてきた「みんなで大家さん」。共生バンクグループの責任はもちろん免れないだろうが、行政側についても事業許可の取り消しはともかく、現状のような混乱を引き起こした背景も含めて検証が必要であろう。

デイリー新潮編集部