義憤か私情か(森山裕前幹事長)/(C)日刊ゲンダイ

写真拡大

 自己愛を昇華できない高市早苗首相(65)に対する世論の批判が日に日に高まる中、自民党内の不満分子も増殖している。「この夏の政局のキーマンじゃないか」(野党関係者)と言われているのが、石破政権を支えた森山裕前幹事長(81)だ。高市首相の言動によって戦後最悪と言われるほど冷え込んだ日中関係の裏側を明かし、「反高市」の急先鋒に躍り出ている。

【もっと読む】高市外交は「二重苦」の真っただ中…チャイナリスクとトランプ関税問題で削がれる日本の国益

  ◇  ◇  ◇

 高市首相とは水と油の自民議員は少なくないが、森山氏もそのひとりだ。高市首相は「ワタクシの悲願」とまで言った消費税減税をほったらかしてきたにもかかわらず、内閣支持率が急落した途端に強行。反対する小渕優子元経産相(52)は、税制調査会の非公式幹部会合である「インナー」のメンバーを辞任した。その際、相談を受けたとされるのが財政規律派の森山氏で、幹事長時代は参院選直前に「何としても消費税を守り抜く」と断言し、自民惨敗の要因をつくったこともあった。森山氏は週刊文春の取材に事前に報告があったことは認め、「財源なき減税案は勘弁して下さいって感じですね」と明かしていた。

■X投稿以来、日中関係は習近平直轄に

 森山氏がさらに踏み込んだのが日中関係だ。ノンフィクション作家の森功氏が週刊ポスト(8月14日・21日号)に寄せた「森山裕前自民党幹事長が明かす対中外交の大失態」と題する記事で、高市首相の非常識なX投稿が習近平国家主席の虎の尾を踏んだと指摘。台湾有事をめぐり、高市首相が日本の「存立危機事態になりうる」と国会答弁した1週間前、韓国・慶州APEC首脳会議で顔を合わせた時にはすでに風雲急を告げていたという。

「実際には日中問題はもっと根が深く、ほかにも懸案事項がたくさん積み残っています。台湾有事発言の前に総理が自ら投稿した1枚の写真などは、その最たるものでしょう。外交上、極めて無礼だと中国側を怒らせてしまいました」

 こう話す森山氏の説明によると、高市首相は国際儀礼を無視し、相手国の了承を得ずに習近平と笑顔で向き合う写真をXに投稿。「高市総理は、相手国の知らないあいだに個人的に写真を流してしまった。これ以来、日中関係問題が習主席の直轄になり、他の幹部もここへ簡単に口出しできなくなったのです」という。確かに高市首相は〈控室で中国の習近平国家主席と挨拶を交わしました〉と書き込んでくだんの写真をアップした一方、約2時間後に行われた日中首脳会談に関して内閣広報室が公開した写真では、習近平は仏頂面で高市首相と握手している。

 非を認めない高市首相は、中国をやり込めようと存立危機事態に言及したのか。だとしたら浅知恵に過ぎる。中国の撤回要求に応じず、日中間の経済交流を目的とする民間団体「日本国際貿易促進協会」の会長としても雪解けに腐心した河野洋平元衆院議長は鬼籍に入った。日中友好議連会長の森山氏がイラ立つわけである。

「森山氏の一連の発言は意趣返しの側面はあるのでしょうが、義侠心に突き動かされたとも言い切れない。計算が透けて見える。森山氏は二階俊博元幹事長から日中議連会長を引き継ぎましたが、中国側から実力者と認められず、微妙な立ち位置のまま日中関係悪化に直面した。突破口を開けないことから、対中外交に汗をかいた小渕恵三元首相の次女の優子氏を次期会長候補に祭り上げようとしたものの、固辞されて中ぶらりんに。私的感情で総理揺さぶりに乗り出したともっぱらです」(自民中堅)

 とまれ、あの首に一刻も早く鈴をつけるしかない。

  ◇  ◇  ◇

 高市首相の暴走、独善ぶりについては、関連記事【もっと読む】【さらに読む】などでも詳しく報じている。