中央線・総武線沿線のスパイス料理4選|西荻窪・高円寺で香り豊かなエスニックを
鼻腔をくすぐる芳しきスパイスの香り……食欲そそりますよね~!日増しに高まる気温や湿度、いよいよ夏へ向かってまっしぐら。そんな時期こそ、スパイスめしでキめてみませんか?国籍を縦横無尽に飛び越えた様々な味、たくさんご紹介します!今回は、中央線・総武線沿線で見つけた魅惑のスパイスめし4選です。
緻密なスパイス使いと料理の香りで描き出すどこか懐かしい旅の記憶『SPICE飯店』@西荻窪
「スパイスは、食欲をそそる香りが魅力です。旅の記憶も呼び覚ましてくれますね」と話すのは、旅好きの店主・岡本大祐さんだ。
ベースにあるのは、自身が好んで訪れるという台湾をはじめとした中華圏の料理。まず食材の組み合わせを考え、そこに香りを重ねて立体感を出す。必要に応じて南国のスパイスも駆使するが、その仕上がりは刺激的とは真逆。驚くほどやさしい味わいだ。だからこそ、ナチュラルワインや日本酒にも自然に寄り添ってくれる。
例えば「じゃがいもと青パパイヤ炒め」は、散らした青花椒のフレッシュな青さと、一滴加えた木ム ージャンユ姜子油が柑橘のような爽やかさと艶っぽい余韻をふわっと醸し出す。
じゃがいもと青パパイヤ炒め1000円、グラスワイン1000円~

『SPICE飯店』(手前)じゃがいもと青パパイヤ炒め 1000円 (奥)グラスワイン 1000円~ 細切りのじゃがいもはほどよく歯応えが残るように火を入れ、シャキッとしたパパイヤと合わせれば、小気味よい食感を楽しめる。青花椒でピリッとひきしめ、馬告(マーガオ)に似た柑橘系の香りを持つ、木姜油をひとたらし
シンプルなのに、驚くほど奥行きが広がっているのだ。そう、スパイスはごく少量であっても劇的に料理を変化させる。岡本さんはその足しすぎない”引き”の塩梅が飛び抜けて上手い。
旅の記憶を乗せた料理を味わう時間は、どこか異国に来たような懐かしさと心地よさに満ちている。
店主:岡本大祐さん「京都にも店を作りました。旅のついでにぜひ」
【LOVE SPICE】

『SPICE飯店』キーとなるスパイスは、八角、花椒、熟したみかんの皮を乾燥させた陳皮(ちんぴ)という香り高い3種類
キーとなるスパイスは、八角、花椒、熟したみかんの皮を乾燥させた陳皮(ちんぴ)という香り高い3種類。特に生薬としても使われる陳皮は、寝かせるほどに香りがよくなる。
単体では特徴的な香りが際立つが、この3つが交わると複雑さが増し、違う世界が開ける。その配合を調整することで岡本さんは思いがけない表情を作り出す。

『SPICE飯店』奥へと細長い店内。シンプルで素朴な空間がどこか異国を思わせる
[店名]『SPICE飯店』
[住所]東京都杉並区西荻南2-19-5・1階
[電話]03-4400-7785
[営業時間]17時~23時(22時LO)、土・日:15時~22時(21時LO)
[休日]火、不定休
[交通]JR中央線西荻窪駅南口から徒歩約7分
食欲を呼び覚ますエキゾチックな匂いに現地の空気が満ちている『the MANDA』@高円寺
「ここはインド?」。
住宅街にある店は、スパイスの香りが通りにまであふれ出し、インド好きなら思わず心が躍るのだ。店は2026年4月にオープンしたばかりだが、間借りカレーで人気を博した店主とあって、早くも噂を呼んでいる。
「カレーだけでなく、スパイスを使ったつまみやお酒を楽しめる店にしたかった」と店主の増田直生さん。
アヴィアル600円、ラム&コーク800円

『the MANDA』(手前)アヴィアル 600円 (奥)ラム&コーク 800円 南インド・ケララ州の野菜料理。ココナッツ風味のやさしい味わいだ
週替わりのメニューは、洗練された食文化で知られる南インド・チェティナッド地方の料理が中心。かの地はスパイスを贅沢に使うことで有名で、スモーキーなカルパシ、甘く香るシナモンや八角など、独特のスパイスが豊かな香りを織りなす。
本場と聞くと”激辛”を連想しがちだが、実は「現地でも辛い料理ばかりじゃないんです」という言葉通り、伝統的な手法に則って作られたひと皿も辛さは穏やか。
インドで人気のラムや、宮崎がルーツの増田さんらしい芋焼酎など、お酒のセレクトも楽しく、夜な夜なスパイス好きが飲みにやってくる。
店主:増田直生さん「不定期でランチもあります。SNSをチェックして」
【LOVE SPICE】
チェティナッド料理で特徴的な使い方をするのがシナモン。使用するのは樹皮が分厚く、丸まっているいわゆるインドシナモンだ。
「インド産でないとこの香りは出ない」と増田さん。
カレーのベースなどで、樹皮をホールのまま大量に加える。その独特の風味は肉の旨みを引き出し、強く甘い香りはクローブなどとともに、辛さのなかでコクや立体感を与える。

『the MANDA』チェティナッド料理で特徴的な使い方をするのがシナモン

『the MANDA』現地のイメージを少し取り入れつつ、シンプルでモダンなムードの店内。なんとテーブルは自作だ。壁付けの個性的なスピーカーからは、気持ちのいい音楽が鳴り響く
[店名]『the MANDA』
[住所]東京都杉並区高円寺北3-34-2Tダジュール1階
[電話]なし
[営業時間]17時~23時※不定期でランチあり
[休日]水
[交通]JR中央線ほか高円寺駅北口から徒歩約5分
ゴールはあえて作らない好奇心と遊び心から生まれた刀根流料理『SPICENERD(スパイスナード)』@神田
「特に熱烈なカレー好きではなかったんです」と笑うのは店長の刀根武士さん。
気軽な気持ちでスパイスカレーに挑戦し、知るほどに深まるスパイスの沼へと落ちた。そこから持ち前の研究家肌がむくむくと湧き、気づけば店を構えるまでになっていた。さらにスパイスつまみの面白さにも開眼。そこで昼はカレー、夜はスパイス酒場という現在のスタイルに辿り着いたのだ。
「この香りと食材を掛け合わせたらどうなるんだろう」。
そんな好奇心から生まれる刀根さんの料理は、どれも国籍にとらわれない。せいろ蒸しを出す大胆さもあれば、インドの唐揚げ「チキン65」に花椒やバルサミコを合わせて、まるでイタリアンのような佇まいに仕上げてしまうのだから面白い。
海老と季節野菜のせいろ葱塩檸檬醤1200円、エスニックハーブジンソニック900円

『SPICENERD(スパイスナード)』(手前)海老と季節野菜のせいろ葱塩檸檬醤 1200円 (奥)エスニックハーブジンソニック 900円 エビや野菜を、ねぎ塩レモン醤ごと蒸して。レモングラスやバイマックルーなど、ハーブを漬けたジンと一緒に
そのフリーダムな才能は、豊富な自家製スパイス酒が並ぶドリンクメニューにも及んでいる。何が飛び出すかわからない、料理とスパイス酒の楽しい組み合わせをここではカジュアルに楽しみたい。
店長:刀根武士さん「ランチのスパイスカレーもぜひ食べに来てください」
【LOVE SPICE】
巧みな自家調合から生まれたオリジナルマサラは、花椒を加え、丁寧にスパイスを揚げることで深く香ばしい骨格を作り出している。カレーや料理に使う他、ベースや仕上げにも重宝するという。
クローブやネパールのティムールをミックスしたねぎ塩レモン醤は、柑橘の爽やかさと酸味、オイルのコクが絶妙。ソースや調味料で活躍。

『SPICENERD(スパイスナード)』巧みな自家調合から生まれたオリジナルマサラ(左)は、花椒を加え、丁寧にスパイスを揚げることで深く香ばしい骨格を作り出している

『SPICENERD(スパイスナード)』1階はカジュアルな立ち飲み、2階は静かなテーブル席だ
[店名]『SPICENERD(スパイスナード)』
[住所]東京都千代田区鍛冶町2-11-17・1階
[電話]03-6271-7551
[営業時間]12時~15時、17時半~23時、土・日:12時~23時
[休日]火
[交通]JR山手線ほか神田駅東口から徒歩2分
ドイツで出会った野菜たっぷりケバブを日本で再現!『SATO KEBAB』@水道橋
この店では、ケバブは脂の旨みがガツンと来るエネルギッシュな食べ物、というイメージを爽快に裏切られる。店主の佐藤悠一さんが店を作ったのは、まさにそれが理由だ。
「ドイツで食べたケバブがすごくやさしい味で、その感動を日本にも紹介したいと思ったんです」という。
日本で食べるケバブとの違いは、まずは、驚くほど野菜がたっぷり入っていること。そして、池尻大橋の人気ベーカリー『トロパン トウキョウ』に特注する、歯切れの良い特製パンの存在だ。
サトウケバブプレミアム980円

『SATO KEBAB』サトウケバブ プレミアム 980円 初めてなら「これを食べて欲しい」という力作。パンはトルコの代表的なパンを『トロパン』に特注。外は香ばしく、中はモチモチ
主役の肉は、試作を重ねて理想の味に辿り着いたというジューシーな鶏肉。クミンをはじめとする王道のスパイスが香るが、乾燥ディルを使って食べやすさを追求するなど、細部まで工夫が宿る。さらに、中東のスパイス・スマックを隠し味にした手作りソースがまた、鮮やかなおいしさを際立たせる。
佐藤さんの想いが詰まった一品は、これまでのイメージを軽やかに飛び越えた、まったく新しいケバブのおいしさに出合わせてくれる。
店主:佐藤悠一さん「テイクアウトもできるので公園でのランチにもどうぞ」
【LOVE SPICE】
オリジナルのホットソースに使われているのが、中東や地中海地域ではポピュラーなスパイス、スマック。ウルシ科の赤い実を乾燥させたものだ。レモンのようなすっきりとした酸味とフルーティーな香りがあり、ゆかりのような風味がある。
この独特の味わいを生かすことで、ただ辛いだけでなく、旨みを引き立て、後味をきりっと引き締める複雑なソースに仕上げている。

『SATO KEBAB』オリジナルのホットソースに使われているのが、中東や地中海地域ではポピュラーなスパイス、スマック

『SATO KEBAB』1階には小さなカウンターがあるが、下は落ち着いたテーブル席になっている
[店名]『SATO KEBAB』
[住所]東京都千代田区神田三崎町2-11-12ENZINSuidobashi Bldg1階・地下1階
[電話]070-9078-8781
[営業時間]11時半~21時、土・日・祝は~18時LO※プロ野球の土曜デイゲーム開催日は22時半まで営業予定
[休日]不定休
[交通]JR中央・総武線水道橋駅東口から徒歩約3分
撮影/貝塚隆、取材/岡本ジュン
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
※画像ギャラリーでは、各店がこだわって使うスパイスの画像をご覧いただけます
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『おとなの週末』2026年10月号

