食事をあまり摂らずビールを飲み熱中症に その症状を防ぐためには

3年前の夏、埼玉県さいたま市。車の中古部品を扱う会社で働く彩さんは、仕事の傍ら、車のカスタムやパーツレビューを発信するインフルエンサーとしても活動していた。
そんな彼女の会社で暑気払いとして社員6人でビアガーデンへ行くことに。彩さんはもっぱら飲む専門で、食事にはあまり手をつけなかった。
3時間ほどで会は終了。帰宅途中、彩さんは強い倦怠感に襲われる。さらに視界がぼやけ、激しい頭痛もする。午後4時、帰宅後、症状はさらに悪化。めまいに加えて頭痛はどんどんひどくなり、強烈な吐き気にも見舞われた。
何か変なものでも食べたのかと考えたが、彩さんはビアガーデンではほとんど食事を摂っていなかった。前日の夕食が原因かとも考えたが、同じものを食べた母は至って元気。もう一つ思い当たったのが、1日以上かけて飲んでいたペットボトルのジュース。腐っていたのではとも疑ったが、この体調不良の原因は、実はまったく別のものだったのだ。
彩さんと同じ原因でとんでもない症状を引き起こした男性がいた。高校野球の夏の地方大会を観戦しに朝から球場に足を運んでいたこの男性は、ビール片手に2試合を観戦し、計4杯のビールを飲んでいた。
すると突然、めまい、頭痛、吐き気という、彩さんとまったく同じ症状に襲われる。症状は帰宅後もおさまらず男性は病院へ。医師は原因はビールだと説明し、おそらく熱中症だろうとの見解を示した。

実はアルコールは熱中症のリスクを高める飲み物で、その大きな理由が利尿作用。熱中症に詳しい谷口英喜医師によると、ある研究結果では、ビールを1リットル飲むと尿として1.1リットル以上出てしまうという報告があるという。つまり飲めば飲むほど、逆に体の水分を奪ってしまって、熱中症のリスクが高まるという。
熱中症は、暑さによって体内部の温度が上昇し、脳や臓器がダメージを受けることで頭痛や吐き気、めまいなどを引き起こす症状。この体温上昇を防いでいるのが汗だが、アルコールの利尿作用によって体の水分が失われると汗が出にくくなる。さらにアルコールには全身の血管を広げる作用があり、臓器の血流に水分が使われてしまう。そして脱水が進むと、汗にまわせる水分量が減ってしまい、ますます汗をかきにくくなる。こうした結果、体温が上昇し熱中症のリスクが高まっていく。
元高校球児で体力には自信があった男性。試合に夢中で、炎天下のなかで、ビールをがぶ飲みし、自身としては水分補給をしているつもりだったが、利尿作用によって水分が失われた結果、熱中症を発症してしまったのだ。
一方で、真夏の屋外のビアガーデンで大量のアルコールを飲み、何度もトイレに行っていた彩さんも熱中症になっていたのだ。
彩さんは翌日も体が動かせないほどの不調が続き、後に重い体を押して出社すると、周りの社員たちはたくさん飲んでいたのに誰も熱中症になっていなかった。その理由は食事。彩さん以外のメンバーは、飲んでいる最中もしっかり食事を摂っていた。

水分は飲み物だけでなく食事にも含まれており、ご飯には約30〜60%の水分が含まれているほか、汗で失われるミネラルなどの栄養素も食事から補給できるため、食事を摂ること自体が熱中症の予防になるという。
谷口医師は飲んでいる最中もできるだけ食事を摂って、食事からの水分やミネラルを補給すること、ビールを飲んでいる時も同じ量くらいの水を摂りながら飲むことが大事だと話す。その上で、無理をしない飲み方でアルコールを楽しんでほしいと呼びかける。
