【圓岡 志麻】ラーメン1杯がたったの307kcal…「罪悪感ゼロ」のカップ麺はこうして生まれた

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日本の国民食、ラーメン。おいしいが塩分や脂質が高くなりがちなので、ダイエットや健康を意識している人にとっては、食べる時になんとなく罪悪感を覚えてしまう禁断のメニューだ。

しかし今、罪悪感を覚えなくてもいい、健康に良いとされるラーメンが、コンビニやスーパーで手軽に入手できるようになっている。

発売元はベースフード株式会社。「完全栄養食」と言われる、必要な栄養素をバランスよく配合したパンや麺、スイーツなど、その名も「BASE FOOD」を開発・販売しているスタートアップ企業だ。

同社に、ベースフードを世の中に投じる狙いや目標について取材した。

高まる「完全栄養食」への需要

1食で1日に必要な栄養素の1/3(脂質や炭水化物、ナトリウムなど一部を除く)がバランスよくとれるベースフード。2017年にパスタが初登場以来、パンや麺、スイーツなど商品ラインナップを拡大し、現在は6カテゴリ、22種類が販売されている。

全種類を合わせた累計販売数は3億袋以上(2026年3月時点)で、定期購入者数は100万人以上となっている。

例えば一番人気のベースブレッド「チョコレート」はパン1つで1食に必要な栄養素が摂れて、カロリーは300キロカロリー程度だ。

ベースフードの伸びの背景には、完全栄養食への需要の拡大がある。日本の完全栄養食市場は2016年ごろ生まれた。ベースフード社などのスタートアップ企業がリードしたが、2019年には日清食品が参入。

コロナ禍で世の中の健康意識が高まったことで、市場が一気に拡大した。ベースフードのコンビニでの展開に加え、2022年に日清食品から「完全メシ」が発売されたことを機に、一般の認知度も高まっている。

ただし完全栄養食市場がここまで拡大した理由は、国民の健康意識の向上だけではないだろう。

栄養バランスの良い食事を摂った方がいいというのは、誰が考えてもわかること。しかし、現実問題としては難しい。大半の人は時間的、金銭的な余裕がなく、栄養に関する知識も不足しているためだ。

つまり「難しく考えることなく、手軽に栄養バランスを整えられればいいのに」という思いが、社会の中で潜在的に育ってきていたと言えるだろう。

完全栄養食はそのニーズにぴったりとはまったわけだ。

いきなりAmazonランキング1位に

そのことを示すのが、2017年に商品第1号の「BASE PASTA」が初めて売り出された時のエピソードだ。

当初はベースフード社のサイトや外部の通販サイトなど、ECに限って販売したが、発売開始直後にいきなり、Amazonの売れ筋ランキング食品部門で1位を獲得したという。代表取締役の橋本舜氏は当時のことを次のように振り返る。

「2位は誰もが知っているようなミネラルウォーター。知名度のない当社の商品が1位というのは、普通あり得ないのでとても驚きました。この高い反響は、おそらく物珍しさが理由だったのでしょうが、同時に社会に潜在する問題と『BASE PASTA』という解決策がフィットした例でもあると思います」

当時は社員が5名程度で、量産体制もまだ整っていなかった。また「BASE PASTA」も1袋500円と高価格で、茹でる一手間がかかるなど、商品としてもまだまだ未完成、ランキング1位もスポットで終わったが、可能性を確信させる好スタートとなった。

起業のきっかけは「少子高齢化のイラスト」

このように、社会から待望されていた完全栄養食だが、橋本氏が真っ先に世の中に送り出すことができたのはなぜだったのだろうか。ベースフード社の起業の経緯について聞いた。

「私たちの世代は、教育課程を通じて、『少子高齢化によって1人あたりの社会保障費の負担は増加していく』と絶えず言われ続けてきました。そのため『自分たちで解決しないといけない』と意識している人は多いと思います。

必要な解決策の一つが健康寿命を延ばすこと。国は『健康の三要素』である栄養・睡眠・運動を意識するとともに、定期検診を受けるよう呼びかけていますが、そのうち私が着目したのが栄養です。

一汁三菜は、以前は可能だったかもしれませんが、共働きの家庭が増えている現在の社会環境下では、必ずしも容易なことではありません。世界中の人が主食として、ご飯やパン、麺を食べている。その主食の栄養バランスが良くなれば、問題は解決するのでは、と考えました」

「数人の現役世代が高齢者を支えており、支える人数がどんどん少なくなっていく」といった少子高齢化シナリオを示すイラストは、誰しも一度は見たことがあるのではないだろうか。

仕事観や社会課題への意識が大きく変化し、上記を「自分ごと」として捉え解決しようとする人が、若い世代に増えているということなのだろう。

そして、橋本氏自身の経験から実感した「健康格差」も、起業の動機となった。

東京大学在学時は剣道部に所属し、寮住まいだったため食事の環境にも恵まれ、健康的な生活を送れていた。しかしDeNAに就職すると途端に生活状況が悪化。昼は外食、夜も午後7〜8時まで働き、帰宅後にバランスの良い食事を自炊するなど不可能だった。栄養バランスをとれる環境にある人と、そうでない人の間には、健康格差が生じることに気づいたのだ。

「小学生には給食があって、少なくとも1ヵ月間で学校のある20日、3食のうち1食は栄養が担保されている。大人にも給食のようなものがあれば、健康格差がなくせるのではないかと考えました」

そんな着想から、社会人になって4年半でベースフード社を起業。在籍していたDeNAの風土もあって、新規事業のプロトタイプを作り、改善していくことを当たり前と捉えていた。在社中に現在は一般的となった配車アプリの前身といえるサービスを立ち上げたこともある。経験のない食の分野での起業にも、違和感なく挑戦できたそうだ。

後編記事『コンビニという「甲子園」を勝ち抜いて…完全栄養食「BASE FOOD」が大ヒットした背景』も読む

【つづきを読む】コンビニという「甲子園」を勝ち抜いて…完全栄養食「BASE FOOD」が大ヒットした背景