福祉医療機構の退職金はいくら?2026年見直しで社会福祉法人の退職手当はどう変わる?
1.福祉医療機構の退職金とは
社会福祉法人のための退職金制度福祉施設を運営する社会福祉法人の約9割が利用している退職金制度が、「社会福祉施設職員等退職手当共済制度」です。社会福祉施設職員等退職手当共済法に基づき、独立行政法人福祉医療機構(WAM)が運営しています。
この制度は、退職手当を設けることにより職員の処遇を向上させ、安心して働ける環境を整備することを目指して創設されました。福祉施設が健全に運営されることで、ひいては福祉サービスの向上につながることも期待されています。
2025年4月時点で、約88万人が本制度に加入しています。制度創設以来、延べ約256万人の被共済職員に退職金が支給されてきました(出典:WAM)。
なお、将来にわたる安定的な運営を続けるために、2026年7月現在、抜本的な見直し議論がおこなわれています(詳しくは「4.給付額の増加を受け、制度の見直しを検討」で後述)。
社会福祉法人のなかには、職員の処遇改善や定着率向上のため、この福祉医療機構の制度に加えて、独自の退職金制度やほかの共済制度など、複数の退職金制度を併用して導入している法人も少なくありません。
退職手当金となる財源は、施設(共済契約者)が負担する掛金と、国・都道府県からの補助金によってまかなわれます。職員の負担はありません。
加入条件本制度には、社会福祉法人が経営する「社会福祉施設等」「特定介護保険施設等」および「申出施設等」で働く職員が加入できます。なお、契約は事業者がおこなうため、職員自身が手続きすることはありません。
本制度を導入している施設の場合、雇用期間に定めのない職員(正職員)は、採用した日から被共済職員として制度に加入できます。また、パートや非常勤職員も一定の要件を満たすと加入対象となります。
2.退職金はいくらもらえる?
退職金の計算方法
退職金の金額は、退職前6ヶ月間の「本俸月額の平均」と「被共済職員期間(勤務年数)」を基本に計算されます。本俸月額とは、各種手当を除いた1ヶ月分の「基本給」のことです。
具体的には、「退職前6ヶ月間の本俸月額の平均に応じて政令で定める額(最低6万2,000円から最高36万円までの20ランク)」に対し、「被共済職員期間および退職理由に応じて法律で定める乗率」を掛け合わせて算定されます。
退職理由によって掛けられる「乗率」が変動するため、同じ勤務年数や本俸月額であっても、自己都合などの退職理由によって最終的な支給額は変わります。
勤務年数別の退職金早見表とシミュレーション福祉医療機構が公表している「普通退職の場合」の退職手当金の支給額の例は以下のとおりです。勤務年数と退職時の本俸月額によって、支給額が大きく変動します。
また、福祉医療機構では「退職手当金計算シミュレーション」を公開しています。自分の勤務年数、本俸月額、退職理由を選択することで退職手当金が算出されます。
>退職手当金計算シミュレーション|福祉医療機構
2025年度の実績では、約8万3,000人の退職者に対して約1,452億円が支給されました。この金額を支給人数で割ると、一人あたり約176万円です(出典:WAM)。この金額は短期間で退職した人から、定年まで長く勤めた人も合わせた平均のため、実際に支給される金額は個人差が大きくなります。
3.退職金を受け取るには
退職金を請求できる人退職手当金を請求できるのは、被共済職員期間が1年以上ある人が対象です。また、退職手当金の請求期限は、退職日の翌日から5年間です。
退職金の請求方法と流れ退職手当金を受け取るための手続きは、施設(共済契約者)と退職者本人が連携して進める必要があります。基本的な流れは以下のとおりです。※施設が代行申請する場合もあります。
手続きの詳細は福祉医療機構のマニュアルをご確認ください。
>退職手当金請求書の提出手続き|福祉医療機構
退職後3年以内に制度に再加入する場合、前の施設での加入期間を引き継ぐ「合算制度」も利用可能です。この制度を利用する場合は、退職時に退職手当金を請求・受給せず、代わりに「合算制度利用申出書」を提出して手続きをおこないます。なお、合算制度を利用できるのは加入期間が1年以上ある人が対象となります。
4.給付額の増加を受け、制度の見直しを検討
退職金制度の抱える課題福祉医療機構の退職金制度は福祉業界を支える重要な仕組みですが、深刻な財政状況の悪化に直面しています。 現在、本制度はその年度の退職手当の財源を同年度の掛金等で賄う「賦課方式」を採用しています。厚生労働省の推計によると、現行の制度を維持した場合、退職手当金の支給額は2040~2041年度ごろにピークを迎え、2025年度の約1.4倍になると見込まれています。
これまで、施設側の急激な負担増を避けるため、支払準備金を取り崩して掛金の引き上げを抑えてきました。しかし同推計によると、支払準備金を2027年度に使い切り、2028年度以降は掛金の大幅な引き上げや、年度による引き上げ幅のばらつきが生じると見込まれています。
今後の見直しこうした課題に対応するため、厚生労働省では2026年4月より「社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方に関する検討会」を立ち上げ、議論を進めています。 2026年秋ごろには、同検討会にて今後の方針が取りまとめられる予定です。
掛金水準や給付条件などの制度内容に抜本的な見直しがおこなわれる可能性が高い一方で、関係団体からは大幅な掛金の引き上げに慎重な検討を求める声も聞かれます。社会福祉法人や職員の将来設計に直結するため、今後の動向が注目されます。
参考
退職手当共済事業 | 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉施設職員等退職手当共済制度の在り方に関する検討会|厚生労働省
