ブラジルに逆転負けを喫した日本代表。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/JMPA代表撮影)

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 森保一監督が率いる日本代表がベスト32で敗退した理由は、決して一つではない。そもそも、ブラジルに勝てるような実力はなかった。勝ったのはチュニジアだけだったという厳しい現実もある。あらゆるものが足りなかった。

 しかし端的に言えば、クロス攻撃の攻勢に対処することができなかった適応力の低さ、高さやパワーの欠如などが挙げられる。カルロ・アンチェロッティ監督が率いるブラジルがクロスを多く入れ始めると、日本は対応に四苦八苦。ラインを下げるしかなく、人海戦術で守り抜こうとしたが失敗した。

「負けたら終わり」

 そうした切迫したトーナメントでは、強度を最大限に上げた攻撃が展開されるが、それに対してなす術がなかった。言い換えれば、そのガチンコ勝負をクリアできなかったら、上位に勝ち進むことなどできない(そもそも、もっとボールを持つことができなかったら、高いレベルで勝ち筋は見えないのだが)。

 たとえば、他のラウンド32でポルトガルとクロアチアが激突した試合でも一進一退のなか、クロアチアは右サイドバックからのクロスに左サイドバックのペリシッチが飛び込んで先制している。しかしポルトガルも同点にした後、後半に入ってラファエル・レオンのアーリークロスをファーサイドに入ったゴンサロ・ラモスがヘディングで合わせて逆転弾を放り込んだ。
 
 真ん中を切り崩すのは簡単ではないだけに、クロス攻撃はカギを握っている。

 そして終盤、リードされたクロアチアがクロス攻撃でポルトガルを“爆撃”。後半アディショナルタイム12分、左サイドからのクロスにゴール前で折り返したボールをグバルディオルが押し込み、同点劇に沸いている。結局、これはVAR介入のオフサイドで取り消されが、紙一重の判定だった。クロアチアの猛烈なクロス攻撃は実らずも、迫力があり...。

 終盤になるにつれ、リードされた側はほぼ力任せのクロス攻撃がヒートアップする。それを守る側が完全に防ぐのは難しい。だからこそ、攻撃のカードを残すことでプレッシャーをかける必要がある。また、クロスに合わせる選手だけでなく、クロスを送る選手にどれだけタイトに寄せられるか。それでも怒涛の波には覚悟がいるが...。

 日本は親善試合で強豪にも勝利を収めたが、決死のクロス攻撃を受けることはなかった。日本人が考えるよりも、親善試合の勝負はその域を出ないからだ。W杯のブラジルからは洗礼を浴びることになった。

 日本は選手たちが引き続き、異国で修羅場を重ねる必要があるだろう。また、指揮官が一つのシステムややり方ではなく、相手の勢いを軽減させる手立てを準備できなければならない。さもなければ、似た敗北を繰り返すことになるだろう。

文●小宮良之

【著者プロフィール】こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』、『FUTBOL TEATRO ラ・リーガ劇場』(いずれも東邦出版)など多数の書籍を出版。2018年3月に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューを果たし、2020年12月には新作『氷上のフェニックス』が上梓された。

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