【全文公開】被害総額60億円!″闇バイト″を生んだ稀代の犯罪組織「ルフィグループ」の女たち

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女性は20名弱

’22年から’23年にかけて発生した、「ルフィグループ」による広域強盗事件。発生から4年以上が経過した今も、彼らが生み出した「闇バイト」を使った詐欺や強盗は後を絶たない。

ルフィグループの前身とされる渡邉優樹(38・以下、年齢は逮捕時の数字で表記。被告・受刑者表記は略とする)をトップとした特殊詐欺組織には、最大で約200人の構成員がいたとされ、そこには女詐欺師もいた。

ルフィグループの最高幹部の一人である小島智信(45)は、東京拘置所の面会室で筆者にこう断言した。

「女のほうが詐欺に向いています。詐欺電話をかける対象は高齢者の男性が多く、若い女が相手だと気を許しやすいからです。私たちのグループでは、月の売り上げ(詐欺の収益)が1000万円を切るかけ子(被害者に電話をかける役割)はほぼいない。詐欺にかかりそうな″当たり″を引くと、あえて″女かけ子″に電話を代わることも珍しくなかった」

そして、こう続けた。

「組織にいた″女かけ子″ら女性たちのほぼ全員に彼氏がいた。幹部はカネにモノをいわせ、フィリピン人の女を愛人や恋人にする。しかし、末端の男たちはカネもないし英語も話せないので、組織内の女にアプローチをする。女性というだけでチヤホヤされていました」

ルフィグループに所属した女性は20名弱。「ルフィの女たち」はどのような経緯で詐欺師となり、巨額のカネを詐取してきたのか--。筆者が6月24日に上梓した新刊『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』(講談社)の内容をもとに、彼女たちの半生を辿る。

美大生に名家の令嬢、風俗嬢など、女かけ子たちの″前職″は様々だ。リゾートバイトの募集だと思って応募した者もいれば、ホストの売掛金(つけ払い)が支払えず、わずか50万円で組織に売り飛ばされた者もいる。共通しているのは、いずれも遊ぶカネ欲しさや借金が原因で闇バイトに参加した、ということだ。

ルフィグループで女性のかけ子は重宝された。小島が言うように、高齢者相手の電話に有効だったというのがひとつ。ボスである渡邉が色を好む性格だったのがふたつ目の理由だ。事件の舞台となったフィリピンで複数の愛人を作っていた渡邉は、それだけでは飽き足らず、女性のかけ子を専門にリクルートする「ハーレム計画」を立案。計画は頓挫することになるのだが、渡邉はその過程で巧みに組織の女性たちを使いこなした。

幹部をかばう駒

例えば、’19年11月に一連の特殊詐欺事件における窃盗容疑で逮捕された柴田千晶(29)も、渡邉の愛人だった。彼女は計7度にわたり、日本国内で詐取した現金--総額約3億円をスーツケースに詰めてフィリピンに運んでいる。危険な仕事を請け負った背景にはボスへの恋愛感情があった。

筆者は組織の中で約6億円を詐取し、「伝説のかけ子」を自称した山田李沙(26)への取材を重ねてきた。風俗嬢からかけ子に転身した山田もまた、渡邉や幹部らに心酔していた。山田は面会に訪れた筆者に対し「幹部を庇いたい気持ちもあった」と打ち明けている。山田が綴った400枚以上の手紙の中には、こんな一文があった。

〈幹部たちに大変可愛がってもらい、数字をあげることでたくさん褒めてもらった。人生でそんな経験をしたことがなかったので本当に嬉しかった。渡邉さんのことは日本一のボスと思っていました〉

第三者の視点からみれば、幹部たちにとって山田が使い捨ての駒であることは明らかだった。それでも彼女は、幹部を″仲間″と捉えていた。

承認欲求を利用し、幹部らは山田に敵対組織へのスパイ活動まで命じている。実際、山田は渡邉の組織と敵対していた『JPドラゴン』(フィリピンを拠点とする日本人犯罪組織)に潜入し、幹部と肉体関係を結ぶ。彼女は寝物語で情報を引き出し、組織に還元したという。山田は心酔する″ボス″のため、懸命に働き続けた。

二人の美人詐欺師

組織の女性たちの中でも、その容姿からとりわけ注目を集めた者が二人いる。″ルフィの一味の美女″という立ち位置から、ネット上で人気漫画『ワンピース』の「ナミ」になぞらえられた寺島春奈(27)。そして、有名美大に進みミスコンに出場するなど、華々しい生活を送っていた熊井ひとみ(25)である。

長野県出身の寺島は、祖父と父が教師の教育一家に育ったという。私立の名門高校に進むも中退。都内のキャバクラなどで働いた後、渡邉の組織に加入した。「ST箱」と呼ばれるチームに配属されるやすぐに特別扱いを受け、「姫」の愛称で親しまれた。詐欺の″売り上げ″も大きく、周囲からは羨ましがられる存在であったという。

熊井は高知県議の祖父を持ち、地元の東京・三鷹では名家と評判の家庭で育った。2浪の末、多摩美術大学に進むも中退。闇バイトのリクルーター経由で、かけ子としてフィリピンへ渡った。

山田と同じく組織内で指折りの売り上げを立てていたことも彼女の強みだった。多くのかけ子が「1ヵ月に1件案件が取れればいい」という認識の中で、熊井は月に複数の案件を成立させ、「5000万円クラスの詐欺も成功させていた」(小島)という。そして、やはり美人ゆえに厚遇された。熊井は、「A箱」というチームで後に箱長(各箱のリーダー)となる藤田海里(24)と恋仲になり、現地で妊娠。日本へ強制送還された後、拘置所で子供を出産している。

グループ内の女性の間で複雑な感情が交錯したであろうことは、山田の発言からも読み取れる。

「熊井は常に″女″を出して周りからチヤホヤされていた。何かあるとすぐ泣いて、男を頼った。彼女がかけ子を続けられたのは、A箱が緩かったからです。カネがある箱長にうまく取り入ったようにも映りました」

組織内では続々とカップルが生まれ、各々が肉体関係を重ねた現実がある。男女の肉欲が入り乱れる様子を、山田は「詐欺グループの恋愛リアリティショーのようだった」と皮肉った。そのうえで、「熊井、寺島よりも私のほうが数字をあげたし、組織の男と多くセックスをしていますから」と、どこか誇らしげに筆者に明かす場面もあった。だが、小島は「唯一、彼氏ができなかったのが山田」と明かしたのだった。

山田は特殊詐欺事件の窃盗などの罪状で起訴され、懲役4年2ヵ月の実刑判決を受けた。現在も服役中で、来年秋に出所予定だ。「ルフィの女たち」の中には、すでに「檻の中」から出て社会復帰している者もいる。列島を震撼させた女詐欺師たちは、その大半が来年には刑期を終える見込みである。

『FRIDAY』2026年7月17・24日合併号より

取材・文:栗田シメイ(ノンフィクションライター)