工事中断の間に総工費は「5兆円→11兆円」…静岡県「リニア着工容認」でわかった「川勝前知事」の重すぎる「負の遺産」
7月11日、リニア中央新幹線・静岡工区の着工に難色を示し続けてきた静岡県の川勝平太前知事(77)が再びリニア新幹線反対の狼煙を上げた。現職の鈴木康友知事(68)が静岡工区の着工を容認してから4日後のことだ。前知事の真意は一体どこにあるのか。
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【写真】早大OBなら誰もが知る学生情報誌「マイルストーン」に記載されていた28年前の「川勝平太教授」の採点表。イケメン教授として人気だった頃の写真も
そもそも超電導技術を使ったリニアモーターカー方式で第二東海道新幹線を整備すべきという考えは、田中角栄元首相の「日本列島改造論」にも登場する長きにわたる日本の夢だった。それが実現に向けてようやく具体的に動き始めたのは1990年、当時の運輸大臣が中央新幹線の整備計画決定に向けて地形や地質調査を行うようJR東海に指示したことだった。2010年、JR東海は東京−名古屋間の開業時期を27年にすると発表し、全国新幹線鉄道整備法に基づき14年10月に着工が認可された。

15年12月には山梨県、16年1月には東京・品川、同年11月には長野県、同年12月には岐阜県でも起工式が行われた。しかし、頑なに着工に反対してきたのが静岡県の川勝前知事だった。全長286キロに及ぶ品川−名古屋間で静岡県を通るのはおよそ11キロだ。
09年の初当選以来、4期にわたり静岡県知事を務めてきた川勝氏は24年4月、新規採用職員に向けた訓示で職業差別発言を行ったことが問題視され辞任に追い込まれた。
以来、久しぶりの持論である。知事として臨んだ最後の会見で今後について尋ねられた際、「仙人になる」と言っていた川勝氏だが、リニア反対派の市民団体が開いた集会に寄せられたメッセージには、リニア建設は「百害あって一利なし」「万死に値するほど誤った決定」などと、仙人どころかまるで怨霊のようにのたまっているのだ。
リニア賛成派だった
5000字近くにも及ぶメッセージを簡単に紹介すると、まず川勝前知事は《そもそも、リニア中央新幹線のプロジェクトは静岡県にはまったく縁のなかったものです》とした上で、《知事になって数年後のこと、突然、静岡県がリニアのルート上に組み込まれました》と経緯を説明し、JR東海の社長が《工事の遅れは、ひとえに静岡県の工事ができないせいだ、と虚言(ウソ)を吐き続けた》と主張している。
地元記者は言う。
「確かに他県の工事が遅れているのは事実です。しかし、着工すらしていない静岡県とは次元の違う話です。工事が遅れている要因は静岡と言ってよく、それを推し進めたのが川勝前知事です。そもそも信念を持ってリニア着工に反対したのであれば、なぜ今頃になって静岡が工事を遅らせたと言われることに憤るのかがわかりません。また、リニアが静岡を通ることを彼が知ったのが《知事になって数年後》というのも事実とは異なります。知事になった翌10年7月に行われた中央新幹線小委員会には、沿線知事の一人として彼も参加していました。そして『中央新幹線に対する静岡県の期待は極めて大きい』とまで発言していました」
そもそもはリニア賛成派だったのである。
「今回、彼はメッセージの中で《当初、総工費は5兆5235億円》だったが《現在は11兆円かかるとされており、当初の2倍です。税金が投入される公共事業では、このような杜撰さは認められません》とも言っていますが、総工費が2倍に膨れ上がったのも、ここまで着工を許さなかった川勝前知事に一因があると言っていいでしょう」(同前)
川勝前知事がそこまでリニア新幹線に反対してきた理由は“水問題”だった。「週刊新潮」(19年7月18日号)では、この水問題を取り上げている。
大井川の水問題
《東京・名古屋を40分で結ぶ中央新幹線のトンネル工事が難航している。技術的に難しいのではない。静岡県の川勝平太知事が、「水問題」を理由にストップをかけているのだ。とっくに始まっているはずの工事が、1メートルも掘り進められないでいる理由は何なのか。JR東海の関係者によると、/「この南アルプストンネル(静岡工区)は、静岡県の山間部を11キロほど横切るだけですが、問題になったのは大井川の水源地を通ることでした。2013年の環境アセスメントでは、毎秒最大2トンの出水が予想され、河川減水の恐れが指摘されたのです。そこで、JR東海は流量を見ながら、掘削で減った分を大井川に戻す方向で静岡県と話し合っていました」/翌年、工事計画は認可され、あとは本工事に取り掛かるだけだった。ところが、“ちゃぶ台返し”が起きる。川勝知事が、「まず、(湧水の)全量を戻すと明言するべきだ」と言い出したのだ》
前出の地元記者は言う。
「そもそも大井川の水を一滴も漏らしてはいけないといった川勝前知事の発言には無理がありました。大井川の水は最上流部の田代ダムで取水され、発電に使われていますが、その水は山梨県の富士川に流されているのです。その量は毎秒4・9トンにもなっており、県が認可したものです。にもかかわらず、なぜそこまで川勝前知事は大井川の水にこだわるのか、県議会で質問もされていました」
18年12月7日、静岡県議会の定例会での桜井勝郎県議の質問だ。
空港新駅の恨み
《最近知事はトンネル工事で発生する湧水を全量戻す件でJR東海を糾弾していますが、関連する地域住民、企業、静岡市も絡んでマスコミに注目され世間の関心を呼んでいます。まさしく劇場型の論争です。これぞ知事の存在感を発揮する最高の舞台です。日ごろからJR東海には空港新駅に対するつれない対応にふんまんやる方ない知事はその怒りをトンネル工事による湧水にぶつけたのであります。水を武器にして関連する世論を味方につけ言いたい放題であります。(中略)知事は、JR東海には命の水と言われている大井川の水を一滴たりとも渡さないと言いながら、あの田代ダムから毎秒4・99トン東京電力の発電用として山梨県側に流れているあの水は我々の命の水――大井川の水ではないのでしょうか》
「この田代ダムの件に川勝前知事は答えずじまいでした。だからなのか、今回のメッセージでは南アルプスの水については触れていますが、大井川については《大勢の作業員が寝泊まりすれば、生活雑排水が大井川上流の西俣川を汚染することは目に見えています》としか出てきません」(地元記者)
ちなみに、桜井県議の言う《空港新駅に対するつれない対応》については、前出の「週刊新潮」でも触れている。
《静岡の県政関係者が言う。/「川勝さんの本音は、閑古鳥が鳴く富士山静岡空港に東海道新幹線の新駅を作って欲しいということ。ここは新幹線が真下を通っており、駅が出来るとエスカレーターで上がれる。しかし、静岡駅と掛川駅の中間にあるため、列車の減速は避けられず全体の運行本数にも負の影響が出ます。JR東海としては、とても飲めない話」》
その怨念がリニア反対に向かったというわけだろうか。川勝前知事はメッセージを次の一文で締めている。
《JR東海は、「さすがサムライ・ジャパン!」と世間から評されたければ、静岡県をルート上に入れた過ちをいさぎよく認める勇気を発揮されたい! 「過ちは改むるに如かず」です》
デイリー新潮編集部
