【特集】摘果リンゴでアートを 「見たこともなくて斬新」 食べる以外の活用法でコンセプトは「摘果リンゴをすてきに」 フラワーデザイナーでリンゴ農家 「生かされるものは最後まで生かす」【長野】
特集です。突然ですがこれ、何だか分かりますか?
果物ですか?
これは摘果リンゴ。
実を大きく育てるために、この時季に間引いて摘み取ったものです。
ほとんどが捨てられてしまうのですが、このリンゴに新たな命を吹き込む農家であり、花の作家が活躍しています。
ガラスの器に生けられた涼しげな花の作品。水面にはひまわりやアジサイが浮かびます。器の底を彩る青い果実は「摘果リンゴ」。
フラワーアレンジメントのほかに生け花やプリザーブドフラワーなどを教えています。
三ッ井きみ子
「当ててみて、どの辺の色がおしゃれに見えるかなって」
先週10日、飯綱町内で開かれたフラワーアレンジメントの講座です。
参加した人が生けているのは…
町内から参加した人
「斬新だよね、こんなのやるなんてね」
町内から参加した人
「(これまでに見たことは?)ないです」
生けられているのは摘果リンゴの実です。捨てられてしまう摘果リンゴを食べる以外の方法で活用しようと、県内でリンゴの売り上げ4位を誇り「日本一のリンゴの町」としてPRする飯綱町が、この講座を開きました。
コンセプトは「摘果リンゴをすてきに」。
参加者は、まだ色づく前の小さなリンゴをアクセントに作品を仕上げていきました。三ッ井さんには、花の作家のほかにもう一つの顔があります。
別の日の朝。
エプロン姿の三ッ井さんが軽トラックに乗り込みました。
向かった先は…リンゴ畑。
三ッ井さんはフラワーデザイナーの傍ら、夫の正一さん(77)と2人で1.5ヘクタールの畑で、リンゴを育てています。
摘果リンゴをすてきにできるのは、リンゴ農家でフラワーデザイナーでもある三ッ井さんならでは。
三ッ井きみ子さん
「以前に東京の先生のところに通っている時に、青森県産の青リンゴが花材として提供された時がありまして、ああこれだったらうちにもあるーって」
今は、リンゴの生育をよくするため摘果の作業の最盛期。
朝から晩まで仕事することが多く、この日も照りつける太陽の下でリンゴを取りました。
軽い身のこなしで脚立に乗り、テキパキと実を落としていく三ッ井さん。足元には、青くて小さなリンゴがたくさん。
三ッ井きみ子さん
「花が咲いて命もらって育ってきて、ちょっと目を向けてもらえる時もあるといいのかなって」
青くて小さいリンゴはこのまま養分になるため、実が朽ちて土に還る時をじっと待つだけ。
ひと昔前は加工用に集めて出荷されることもありましたが、今は人手不足などの理由から日の目を見ることが減ってきています。
三ッ井きみ子さん
「生かされるものは最後まで生かす。お花でも、そんな気持ちで向かっていますかね」
小ぶりな実は、花の作品に取り入れやすいサイズ。
青リンゴが好まれるヨーロッパ風の作品に仕上がるといいます。
さらにこんな魅力も。
三ッ井きみ子さん
「ラ フランスとか他のものも使ってみたけど、すごく傷みが早いです」
三ッ井さんは高校卒業後、長野市の種苗会社に就職し、生け花を習い始めました。結婚を機に飯綱町に移り住み、義理の両親とリンゴを育てました。出産で一度は花から遠ざかりましたが、このままでいいのかなと思ったことをきっかけに、再び花の作品作りの道に。
夫の後押しを受けて、自宅に教室を開きフランスやベルギーで本格的にフラワーアレンジメントなどを学びました。
現在は自宅の農業資材置き場を改築して教室を開き、月に20人くらいの生徒を教えています。
三ッ井きみ子さん
「1人3本ずつ使う予定なので、数を数えながら採っております」
三ッ井さんが作品に使うのは、主に庭にある身近な花です。
三ッ井きみ子さん
「赤と黄色があるのでミックスで使いたいと思います。かわいいですね」
この日、自宅の教室に集まったのは、20年以上の親交がある生徒たちです。
庭で採れたミントやローズマリー、さらに生徒が持ち寄った花も生けていきます。
もちろん摘果リンゴも。
20年以上の親交がある生徒
「何が魅力って、すごく雰囲気があるでしょ、お話の仕方も。そういうのが皆さんを引き付ける」
三ッ井さんの生徒は、大半がシニア世代の主婦。
レッスンの後には、必ずお茶会が開かれ、社交の場として楽しみにしている生徒も少なくありません。
20年以上の親交がある生徒
「(どんなことを話しますか?)旦那の悪口から政治のことまで。幅広いですね」
三ッ井きみ子さん
「何でも使えるよ、どんなものでも利用できるよ、身近なものでもできるんだよって。お花って特別って感じではなく、より身近に手軽に、ほんの一輪でも楽しんでもらえるようになったらいいのかなって」
リンゴを育て、味わい花の作品にも取り入れて楽しむ三ッ井さん。
暑い夏が終わる頃、三ッ井さんの畑では、赤く色づいたリンゴが収穫を迎えます。
