【朝香 豊】山本太郎代表引退へ…内部で「けじめ」すら付けられなかった「れいわ新選組」の行く末
代表引退の前に法定速度69キロオーバー
7月9日に、れいわ新選組が記者会見を開き、山本太郎代表が退任し、政界からも完全に引退するとの発表があった。山本代表の辞任に伴う新代表の選出は、7月17日告示、31日に投開票の代表選挙によって行い、党名も変更すると発表した。記者会見では、記者たちから鋭い質問が投げかけられることはなく、山本太郎代表にとってもれいわ新選組にとっても打撃になるようなものにはならず、うまく幕引きすることに成功したということだろう。
というのは、すでにれいわ新選組は、山本太郎代表のスピード違反事件をきっかけに末期的な様相を呈していたからだ。
このスピード違反は、「レンタカーとして借りたアルファードの性能が良すぎて、スピードの出しすぎに気が付かなかったことによる不注意にすぎない」という話になっていたが、果たして不注意で法定速度を69キロメートルもオーバーするものなのか。今回は事故を起こしたものではないにせよ、この状況で事故を起こしたり、事故に巻き込まれるようなことが起これば、多くの人の命を奪いかねない極めて危険な行動だったのは、今さら説明する必要もないだろう。
しかも実際には、今回の件には法定速度を大幅に超えていただけではない、様々な悪質性が浮かび上がってくる。
事の顛末
デイリー新潮によれば、山本太郎代表は2025年10月8日に熊本県八代市、翌日の10月9日には佐賀県鳥栖市で講演会があった。この九州での出張の際に、山本代表の私設秘書を当時勤めていたB氏が、熊本県内の業者からレンタカーを借りていた。この時にB氏はレンタカー業者に自分の運転免許証を提示したが、山本代表の免許証は提示していなかった。レンタカーを借りる際に、運転する者全員の免許証が必要になるのは当然であり、免許証の提示のなかった山本代表にはレンタカーを運転する資格があったはずがない。
だが山本代表は八代市での講演会が終わった後に、スタッフ2名を連れて大分県に向かってサーフィンを楽しみ、その後に鳥栖に移動していて、この移動に際してこのレンタカーを利用していたのである。これはレンタカーの不正利用ではないのか。そして10月9日に東九州自動車道で法定時速80キロのところで、149キロでレンタカーを走らせて、オービスによって撮影された。山本代表には責任ある社会人としての行動を取る意識がなかったと見るべきものではないのか。
このことがあって約1ヶ月後の11月4日に、B氏の携帯電話に熊本県のレンタカー業者から電話が入った。大分県警から、10月9日午後2時半頃の東九州自動車道の別府インター付近を走行していた時の件で、『運転手に事情を聴きたいことがある』と伝えられたというのである。
B氏はLINEを通じて山本代表に「10/9(木)の14:30分頃の大分県の高速内での事でレンタカー会社から電話があり、内容は『警察の方が連絡をして欲しいと言われた』との伝言を受けたので、ご連絡しましたとの事でした。なにか思い当たることはありますでしょうか? まだ警察には連絡しておりません。恐らくはこの日は大分から佐賀に移動している時間帯かと思います」との報告を行った。
これに対して山本代表は、「心当たりなし、です」と返信している。そしてこのLINEのやりとりを行った翌日にB氏が山本代表に会うと、山本代表は「昨日の件は放置でいいから。とりあえずステイで」と語っている。要するに、警察に連絡するなという指示を行ったのだ。
そしてその1週間後にB氏が山本代表に会うと、山本代表はB氏に「オービスを検知する機械があるだろう。あれネットで調べて、党費で買えるようだったら買っておくよう頼んでおいて。ダメだったら自分で買うから。地方用と東京用とで2セット」とも伝えている。党の代表たる者が、スピード違反から逃れるための“脱法グッズ”を手に入れようとしていること自体に、政治に関わる者としての責任感のなさが如実に表れているが、それをできれば私費ではなく党費で購入したいと考えているところに、さらなる倫理観のなさが示されているではないか。
この話をB氏の作り話ではないかと思う人もいるかもしれないが、こうしたやり取りを行ったことを示す証拠は残っている。B氏は山本代表の意向を受けて、れいわ新選組の会計責任者のA氏に対して「お疲れ様です。代表よりAさんに確認して欲しいとの事で、下記の物を購入を検討しており、党としての経費で買えるかの確認をして欲しいとの事でしたが、いかがでしょうか? ドラレコとのセンサーになります」とのメッセージを、コムテック製のオービス探知機のリンクを添付して送っている。
これに対してA氏は「ドラレコ? ねずみ取り(取り締まり)のレーダーでしょ?」と、B氏がドラレコとオービスを取り間違えていることをやんわりと指摘した返信を行っている。これに対してB氏は「あ、誤字でした。ねずみとりのレーダーです。」と返し、これに対してA氏は「党の支出としては、ちょっと気になりますが、買っておきます。明日到着予定。」と返信している。その後もA氏とB氏のやり取りは続くが、このあたりで止めておこう。
このやり取りから、山本代表がB氏にオービス探知機の購入を、できれば党の費用を使って購入したいと伝えていたことは間違いないのだ。
呼出状
ところで、警察から連絡を求めてきているのに放置していれば、警察側から新たな動きが起こるのは当たり前である。12月25日になると、B氏の実家に大分県警から「呼出状」のハガキが届いた。B氏が、ハガキが届いたことを山本代表に伝えたかどうかは、新潮の報道ではわからないが、当然ながら伝えたと考える方が自然な流れだ。
そしてそのことが影響したのか、それまで頻繁に行ってきた山本代表のXへの投稿が、翌日の12月26日からパタッと止まった。スピード違反との関係があるかないかについて決めつけることはできないが、山本代表の突然の行動の変化は、この問題が山本代表の心理に大きく影響している可能性を示唆するものだ。
12月25日に大分県警から「呼出状」のハガキが届いたB氏は、大分県警に対して即座の行動は取らず、年をまたいだ1月16日になってようやく、大分県警の窓口に電話をかけた。B氏はれいわ新選組での仕事を続けるかどうかで迷っていたが、1月末で退任することを決めて、踏ん切りが付いたようだ。
B氏の個人的な感触としては、山本代表はB氏が山本代表の身代わりとなって警察に出頭することを願っていたが、B氏がその姿勢を見せないことに内心では不愉快さを抱いたのではないかと感じている。というのは、党から突然不当な労働条件の変更を強いられたからだ。これに納得がいかないB氏は、れいわ新選組での仕事を辞める決意を固めたのである。
B氏はそれでも運転していたのは山本代表だということを警察には伝えなかったが、警察は山本代表だと気付いていたようだと話す。というのは、レンタカー業者から「れいわ新選組」の名前で領収書をもらっていることを警察は押さえていて、オービスの画像に「サングラスをかけている人が写っているよ」とも伝えられていたからだ。その風貌から山本代表だと警察は推測していたのだろう。こうした状況から、B氏はA氏を介して山本代表が警察に出頭したほうがいいと伝えた。
ちなみに山本代表は1月8日からスリランカにサーフィンをしに出かけていたようだ。1月9日深夜に読売新聞が「高市首相が通常国会冒頭で解散を検討」と報道してから政界の空気が大きく変わったが、この段階でも山本代表は沈黙を続けていた。1月14日に高市首相が通常国会の冒頭で解散する意向だと広く伝えられるとようやく、「物価高と倒産のさなか、国民生活を無視して解散をやらかすバカどもを日本から叩き出そう。消費税は廃止だ」との投稿がなされたが、その後も再び山本代表は沈黙に入った。
スリランカにいてサーフィンを楽しんでいても、合間に日本の状況をチェックして投稿を継続することはできただろう。だが山本代表はなぜかこの点で圧倒的に消極的な姿勢を示していた。ここには公党の代表としての振る舞いは感じられないが、政治の第一線で動いていこうとすると、このスピード違反事件が大きく足を引っ張ることになることが気になっていたのではないかと推測される。なお、山本代表が公に姿を現したのは、1月18日になってからである。
さて、1月21日に山本代表は突然、多発性骨髄腫の一歩手前だと告白し、参議院議員を辞職すると記者会見を開いた。しかしこれは普通に考えると、タイミング的には実に不可解である。
多発性骨髄腫の一歩手前ということは、まだ症状は出ていない段階ということではないか。衆議院が解散に向かって進んでいるのは今や明らかだった。良くも悪くも山本代表の個人的な魅力によって引っ張られてきたれいわ新選組が、山本代表の精力的な行動抜きに、間近に迫った総選挙で多くの支持を集めようとしても、大きな困難に直面するのは明らかだった。だから普通に考えれば、政界から一旦身を引くとしても、衆議院選挙が終わるまでは選挙戦の活動を存分に行い、選挙が終わるまで先延ばしするのが常識的な判断だろう。
だが、そういう動きにならなかったのは、このスピード違反問題が表沙汰になることを考慮した上でのダメージ・コントロールとして持ち出したものではないかという疑いが、極めて濃厚なのだ。ちなみにこの記者会見の翌日の1月22日に、山本代表はようやく大分県警に出頭している。そして4月20日に道交法違反の罪で罰金9万円の略式命令を受け、90日間の免許停止処置となった。
党内に修正能力なし
ところで、れいわ新選組は2月16日の役員会で新体制が組まれたが、この時に山本代表が速度違反を犯した件とその後の経緯について、役員会のメンバーはみんな知っていたのだろうか。ここまで倫理的に問題行動を山本代表が起こしていることをメンバーがみな知っていながら、山本代表の続投が決まっていたとするなら、この政党には倫理観のかけらもないことは明らかだ。一部の役員にしか知らされていなかったから、山本代表がそのまま代表として残ったのだとしても、党のガバナンスがまともに働いていないことになる。
れいわ新選組が山本代表に対する処分を発表したのは7月3日のことだが、この対応も一連の流れからすれば、極めて遅い対応だと言わざるをえない。しかもその対応が、党代表からの解任ではなく、幹事長による厳重注意にとどまったというのでは、事態の重大性・悪質性を全く考慮に入れていないと言われても、仕方ないだろう。
こうした中で7月7日に、豊中市議会議員である山田さほ氏が、れいわ新選組から離党した。山田氏は山本代表のスピード違反事件を離党理由としては挙げていないが、組織のあり方やガバナンスにおいて、私の政治信条とどうしても折り合いをつけることができない、重大な課題に直面するようになったのだとしている。その上で具体的に3点を示した。
その1つ目は、地方議員や政策委員を含む51名の構成員の賛同のもと、執行部に対して「組織内セクシュアル・ハラスメント防止・対応体制の構築に向けた要望書」を提出したが、党からの回答には具体的な対応の「期日」すら明示されず、先延ばしの状態が続いているとのことだ。注目すべきは「組織内」と書かれているところである。
つまり、れいわ新選組の内部でハラスメント問題が発生しているが、これに真剣に対処しようとする姿勢が、党の側にはないというのである。れいわ新選組は党の綱領に「不条理の最前に立つ」ことが示されているが、党内の不条理は放置されているというのが、山田氏の主張だ。
山田氏はまた、これまで現場の声を形にするため、他にも意見書を提出してきたが、それらに対する回答や具体的な対応がことごとく行われない状況が続いてきたとも語っている。さらに、社会情勢や経済環境が激しく変化する中、党の基本政策の更新が2022年を最後に行われていないことも、公党としての責任を果たしていないのではないかとも指摘する。
まだ暴き切れていない実態
ここから浮かび上がるのは、れいわ新選組には自分たちの身の回りの問題すらも真剣に解決しようとする意欲が欠如しているという実態だ。党内を変える力もないのに、世の中を変える力があるのだろうか。
れいわ新選組には、実際には国会議員の秘書としての業務を行っていないのに、党職員を名義だけ公設秘書扱いにして、秘書給与として支払われた公費を当職員の給与に充ててきたという疑惑も浮上している。櫛渕万里副幹事長に至っては、この秘書問題でさらなる疑惑も報じられているが、ここで詳述するのは避けておく。
いずれにせよ、ここでスピード違反問題やこの秘書給与の疑惑追及から逃れるためには、山本代表の退任発表、指導部の刷新、党名変更をセットにした記者会見を一度開くのが最もよいのではないか。こうすれば、公的に説明した大義名分を得られ、今後の追及から逃れられるようになるということを計算したのではないかと思う。そしてこの流れを見れば、大石晃子共同代表が山本代表とともにれいわ新選組を去ると発表した理由も見えてくるのではないか。
記者会見に惑わされず、私たちはれいわ新選組の黒い実態を理解すべきである。新代表がこの黒い実態を暴き出して新体制に移行することになるのかどうか、注目していくことが求められている。
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