健康を付加したデスクや個室型ワークブースなど 創業80年を迎えたオカムラの需要創造型“場”づくり
「オフィス家具メーカー」から「人を起点に場づくりを担う社会インフラ企業」へ─。1945年創業のオフィス家具大手・オカムラが創業80年の節目を迎えた中で、脱・家具メーカーの姿勢を打ち出している。
オカムラと言えば、オフィスチェアやデスクといったオフィス家具を中心に、事務所だけでなく、教育や医療、研究、商業施設、物流センターなど様々な領域でBtoB向けの事業を展開。メーカーとして「場」や「環境」づくりに携わることで社会インフラを支えてきた。
「あらゆる環境づくりを手掛ける唯一の会社として、最も信頼あるブランドを構築したいという思いも込めてリブランディングを始めた」と語るのは社長の中村雅行氏。日本のオフィス用家具市場は約9000億円。飽和市場のように思えるが、実はここ数年、市場は年間で5%程度の成長を続けている。
オフィス用家具市場では、確かにデスクやスチールキャビネット(金属製収納家具)は、ほとんどの企業に広く行き渡っている。しかも、デザインや素材、そして価格ぐらいしか差別化の要素はない。加えてコロナ禍を経て、オフィス環境は大きく変化した。企業の業種や規模によって差はあるものの、原則出社の働き方からリモートワークを絡ませたハイブリッドな働き方が広がり、出社率の低下やフリーアドレス化が浸透した。
これに伴って1人1台の固定デスクを前提としたオフィス環境ではなくなってきており、その結果、オフィス用家具の需要も大きな伸びは期待できなくなっている。それでも近年市場が拡大したのはオフィス環境を変える動きが出てきたからだ。
1人1台のデスクを前提としたオフィス環境から個人のデスクを最小限にしつつも、大型デスクを設置して複数人が集まるようになったり、フリーアドレス用の座席やオンライン会議用の個室などを増やし、利用状況をセンサーや予約システムで可視化して運用するといった新しいオフィス環境への変革に向けたニーズが生まれた。
実際、オカムラでもチームで使うテーブルやソファ席といった可動性の高いルースファニチュア(床や建物に固定せず自由に動かせる家具全般)やリラックスしながら働けるラウンジ家具など、コミュニケーションや気分転換をしやすくするためのアイテムへのシフトが進んでいるという。そのため、「向こう3年、経済が壊れなければ年間5%の成長を続けるだろう」と中村氏は見通しを語る。
その中でポイントになってくるのが「買い替え需要をいかに生み出すか」(同)だ。そこで中村氏が象徴的な自社の事例として示すのが上下昇降デスク「スイフト ネックス」。従来のデスクに昇降用のモーターを組み合わせ、体格や作業によって姿勢を変えたり、立ったり座ったりを繰り返すことによって健康維持にも寄与するデスクだ。オフィス用家具に「健康」という付加価値を付け加えた形だ。
そもそもオフィス用家具業界はオカムラ(2026年3月期売上高3290億円)を筆頭に、コクヨ(25年12月期同3598億円)、内田洋行(25年7月期同3370億円)、イトーキ(25年12月期同1536億円)のトップ4社による寡占化が進む。上下昇降デスクは他社も投入しており、競争は熾烈だ。
飛行機や自動車を開発した歴史
その中でオカムラの特長は「新商品を投入し続けるものづくりの力」(幹部)だ。1945年に同社を立ち上げた創業者の吉原謙二郎氏は「協同の工業」を掲げ、技術者らが資金や技術、労働力を提供し合うなど、チームワークを重視してきた。

